七話:戦闘準備
それからの数日は大変楽しい時間でした。
今までのフラストレーションを発散するかのようにいろんな能力を使いまくった。
たとえば漫画に出ていたあんな能力とか、小説に出てきたこんな能力とかそれこそいろいろ試しまくった。
本当に、本当に楽しい時間でした。
非日常の異能力をこんなにも自由に使えるとは思わなかった。
ただ、これも一週間しかないお試し期間だからこその楽しさ。一週間後までには能力を五つに限定しないといけない。
いや、一つは『箱庭』と決まっているのだから実質四つか。
…残念だ…。
それはさておき。
この数日間、能力をがんがん使ってみたところ、結構いろんなことがわかった。
まず、某ハンター漫画ではないが、条件付けをすると能力の『強さ』が目に見えてアップする。
たとえば、割と最初の段階で『手のひらから火を出す』という能力を使ってみた。
この能力、手のひらから一メートル範囲くらいに火が噴出した。
それでだ。その能力の発動条件に『手のひらに特殊な模様を書く』という条件を付けてみた。
そうした場合、範囲が一気に10メートルくらいに広がった。しかも火力を調整できるようにもなった。
俺が考えるにこれは条件を設定することで使用者が明確にその能力を使うということがイメージできるからではないのだろうか。
人間っていうのは何とも厄介なもので、突然ぽんと渡されたものはそうそう自分勝手に使えないものだ。
だからこそ条件付けをして『自分の力で手に入れた』と思わなければいけないのだろう。
ゲームなどで、そういう条件が付いている魔法などのほうが得てして強い魔法だ、という先入観が植え付けられているのかもしれない。
ま、最近は最初っから最強な主人公も結構いるはいるのだが。
能力の強弱に関してはもう一つ気付いたことがある。
んー、何と言えばいいのか。『単一の能力のほうが強い』ということである。
ある小説の中に出てきた黒魔法を使っているうちに気付いたのだが。
その小説の中に竜を倒す魔法というのが出てくる。
それを使ってみたのだが、まぁ名前にたがわず大変強い呪文でした。
んで、ちょっと気になったので、その竜を倒す魔法だけにしてみた。
つまり、『黒魔術』という能力から『竜を倒す魔法』だけを能力にしたのである。
するとさらに強い呪文となったのである。
これはどうしてこうなったのかはイマイチわからない。
可能性としては、単体の魔法にしたほうが強いに決まっている。という考えが俺にあった、という説。
一回の仕様MP量が決まっていて、単体にすることで使える量が変わってくる、という説。
この二つが考えられる。
ちなみにムラクモに聞いてみたところ。
『不可。その問いに答えることができません。』
ときた。
何故かと聞くと。
『回答。その問いに関する答えを持ち得ていません。』
という答えが返ってきた。
だからこの疑問は終了。もしも他のゲーム参加者と話ができるチャンスがあったら聞いてみるのもいいかもしれない。
それでだ。
俺の能力が決まった。
『箱庭』『身体能力上昇』『略奪』
二つは空けておいて、今のところこの三つだ。
『箱庭』は、以前説明した通りの能力である。
ちなみに俺はこの能力に条件を付けた。少しだけめんどくさいのだが、呪文のようなものを言わなければいけない。
その呪文は特に決めてはいないのだが、『十秒以上』で、『作り出す箱庭をイメージした』文でなければいけない。
この条件を付けたのは、ある状況になった時のことを予想してのことなのだが…まぁそうそう起こるようなことではないだろう。
ただの保険のだ。
そして、次の『身体能力上昇』。
言わずもがな、ただ単純に自分の速さ、強度、精神力その他の引き上げを目的とした単純明快な能力である。
使ってみたところ、自分のやる気、怒りなどの感情の高ぶりに合わせて身体能力が上昇する。
これは恒常的に自分にかかっている状態にした。
ただ、難点がいくつかある。
まず一つに感情によって能力の上下が決まる。ということだ。
やる気。
これは全体の能力が平均的に上がる。
喜び。
やる気よりも能力の上昇が高い。特に速さなどの分野の上昇率が高い。
哀しみ。
これは哀しみの種類にもよる。が、基本的に能力値は軒並み下がる。
リラックスモード。
強度、精神力、回復力などの値が上がる。
怒り。
速さ、力などの攻撃力系の値は跳ねあがるが、精神力、自身の強度などの守備力系の値は驚くほど下がる。体力は上がる。
などなど。
気分に左右されるが、それでも俺は最初っからこの能力は絶対に入れようと決めていた。
だって、怒り、とか、負けられない、とかの気持ちで打ち勝つキャラってかっこいいじゃん。
それを自分で言ったら色々とだいなしのような気もするけど。
そして最後の能力。『略奪』
これが俺の能力のキモだ。
この能力がどんな能力なのかはまぁ、予想はつくと思う。字面通りで間違えはない。相手のものを『略奪』する能力だ。
かなり悩んだ結果、この能力を選んだ。使い勝手がよく、それでいてだんだんと強くなる能力。そんな能力が俺は欲しかった。
そして、この能力はそんな俺の欲しかったものをかねそろえるものだ。
略奪するものに制限はない。それだけは今言っておこう。
ちなみにこの能力、かなり条件をつけている。
『略奪するものを直接目にする』、『自分の名前を相手に聞かせる』。そして『相手に触った状態』で『「悪いな」という言葉を相手に聞かせる』
他にもいくつか条件は付けているが、この四つが『略奪』が発動する最低条件である。この最低条件を満たし、他の条件もクリアしていくにつれて、さらに深く略奪できるようにしている。その条件数は割と多い。
能力はあと二つ使えるがそこは空席としておこうと思う。
いくつか候補はあるのだが、選びきれなかったのだ。
さて、あの日から明日で一週間。準備は万全、覚悟も決まった。
五年越しの夢が、いま叶う。
だから、今日はさっさと寝ることにします。
まだ始まってすらいません。