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箱庭の遊び方  作者: 麦頭
第一章
6/15

五話:参加証

誤字脱字の指摘、感想を首を長くして待っております。

目をあけると空が見えた。

右を見ると背の高い草が視界を遮る。斜面で寝ているらしく、下を見ると河が見えた。


左を見ると須藤が俺の腕を枕にして寝ていた。


…なんだこのシチュエーション。


まぁとにかく。


俺は河原であおむけに寝ているらしい。


空は少し明るんできている。四時になった時点でまだ周りは真っ暗だったのだから時間がたったことを感じさせた。

携帯を須藤を起こさないように取り出して確認する。


…五時三十分を回ったところだ。


少なくとも一時間くらいはこの体制のままだったのだろう。須藤を腕枕している手の痺れからもそれは予想できた。

…なんでこんな状態なのかは解らないが。


しっかし気持ちよさそうに寝ているもんである。こう、寝てる顔は可愛いと言えなくもないような気がしないでもない。


…どっちだよ。


自分で自分に突っ込みを入れる。それ以上須藤を見ていたり、そのことを考えていたりするとなんだかまずい気がした。

何故かはわからない。わからないんだよ。そういうことにしてくれ。


右手で須藤の頭を支えながらゆっくりと腕を引き抜く。


「…うぅん…」


須藤から声が漏れる。


やばい。本気でかわいいかもしれない。


いや、小さいときは結構一緒に寝たりしたもんだが高校に入ってからは、そんなことも一切なくなっていた。

いつのまにか、こんなにも女らしくなってるとは気付かなかった。普段一緒にいることが多いからかもしれないが、いままでこいつに女を感じたことはない。それは断言してもいい。

こいつとの記憶は稽古の時に本気で殴りあった記憶とか、よくわかんない喧嘩を須藤が吹っ掛けられて、そのまま何故か俺が巻き込まれたとかそんな色気も何もないものばかりだった。


でもよく考えろ。

こいつは美形だ。それは認める。

そして高校二年生。親父が酒に酔ったときに言っていた。この時期の女の子の成長は早いと。驚くほどの速さで女の子から、魅力的な女になることは珍しくないと。

確かにこう改めて近くで見てみたら、昔はなかった色気みたいなものを感じられる。少し丸みを帯びてきている体つき。きめ細かい肌。普段木刀を振り回しているからか豆のできている、でも、男に比べると細くて小さな手。そして、みずみずしい唇。その唇が開き。


「…黒峰ぇ…。可愛いなぁ…お前…」


寝言を言った。


どくんと。


心臓が跳ねた。


やばい。


普段全く意識してないからか、こんなにも心を揺さぶられることになるとは思わなかった。


――――唇に触れたい。それも手ではなく、俺の唇で。


そんな考えが思考の大半を占めていく。自分の心臓の音がうるさい。


無意識のうちに顔が須藤に近づいていく。あぁ、睫毛長いんだな、こいつ。もう少し。もう少しで触れる。


須藤の唇が少しだけ開いて、その動きがなまめかしく感じて。







ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ。








歯ぎしりしやがった。














なんか、一気にいろんなものが抜け落ちた。あれだか激しかった心拍数も一気に落ち着く。

そして残ったのは、恥ずかしさだけだった。





悶えましたとも。俺は何を血迷っているんだと。幼馴染だぞ、師匠の娘だぞ、『番長』なんてあだ名のやつだぞ、と。





恥ずかしさが抜けるまで転がり回る。そのうち草についていた朝露と朝の肌寒さのおかげで頭が冷えてきた。


大きくため息をつき、体を起こす。

なんとなく須藤のほうは見れない。見たら何かが俺の中で終わってしまうような気がしたからだ。


手に持っていた携帯をズボンのポケットにしまう。


と、なにかがすでに入っていた。

取り出す。


携帯電話くらいの大きさの黒い箱が出てきた。


…なんだこれ。


俺はこんなものを持っていたような覚えがない。今日の

そして思いだす。

さっき見た、そして体験した夢のような出来事。




地獄に迷い込んだような世界。


現実世界にいたらすぐさま病院に叩き込まれそうなマッドなサイエンティスト(風)な男。


そしてその男が最後に見せた、どこかから物理法則を無視して取り出したとしか思えない巨大な銃。


そしてその中に出てきた勝利条件。彼はこう言った。『勝利条件はモノリスを奪うこと』と。







つまり、この携帯電話みたいな四角い箱が、そのモノリスなんじゃないか?








映画で見たモノリスというものは巨大なものであった。しかしその形、よくわからない材質でできているとしか思えない不思議な光沢を放つ黒い外観。それを考えるとこれはモノリスといっても何ら問題はない気がする。

つまりは、俺が非日常に踏み込んだ証なんじゃないか?


体の芯の辺りが熱くなってくる。待ち望んだものが、すぐそこに来ているのだ。これで興奮しないわけがない。このゲーム、参加させてもらおう。もちろん優勝してやる。






白衣の男の言葉を思い出す。


優勝条件は『この世界を書き換える力』

上等。俺の好きなように書き換えさせてもらう。



勝利条件は『モノリスを奪うこと』

シンプルでいい。大変わかりやすい。







あとは。


…。


…あとは?


あれ?わかってるのはそれだけ?


確かあいつは『妄想が現実となる』って言ってたけど、それは結局どういうことだ?

うっわ超絶説明不足!わけわからん!ふざけんな!


おもわず頭を抱えて思いつく限りの言葉で白衣の男を頭の中で罵倒してみたが、当たり前だが何も起こらない。


なんだか先行きは不安である。思わずため息が漏れるが、ここで考えていてもらちが明かない。


「それは大変ぎょうこうですね~。うへへへへへへへ」


とりあえずなんか幸せそうな顔でにやけている須藤の頭をはたいて起こすことを心に決めた。

「あたっ」

「帰るぞ須藤」

「なに!?めくるめく私の夢のような世界はどこ!!?」

「わかってるじゃん。それは夢だ」

「なんてこった!!起きなければよかった!!!」

「いいから、露でぬれて服がびしょびしょだ。風邪引くから早く帰るぞ」

「あーあ。犬の黒峰がすっごくかわいかったのになぁ…」

「…いや、それはどういうことだ」

「そのまんま。黒峰が犬になって。んで、私になついて一生懸命私の顔を舐めてきたんだよ。可愛かったなぁ…」

「…帰るぞ」

「ん?でも何でそんな夢見たんだろ?」

「…。」

「あ、まてよー。夢の中の黒峰はもっと従順だったぞ!!」

「知るか!!」

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