ブラックカード
雨が足先からしみて来た。
花は、黒い花柄のチャイナドレスに身を包んでいたが、それは、上下が分かれているものだ。
膝上までの短いスカートが、功を評した。
靴も黒で、バレエシューズの形だったが、龍の刺繍入りだ。
黒澤に買ってもらった一式だが、靴が布素材だったのが玉にきずだ。
黒澤が花に、大きな番傘をさしかけてくれていたが、時々花の肩が濡れていた。
土産物屋に着く頃には、花が歩くたびに靴がぐちょぐちょ言っていた。
「花、靴を買うたらいい」
黒澤が言った。
階段を上り、手前の店を通り抜け、洋品店の中に入った。
刺繍入りのジャンバーの横に、靴が並んでいた。
コンバースや革靴のそばに、女もののハイヒールがあった。
「少し、大きいじゃけ」
花は、ハイヒールを脱いだ。
皆伐が、「これはどうじゃけ?」と、花に見せた靴は、ハイヒールだがバンドが付いていた。
「一万円になります」と、店員が言った。
黒澤が、「キャッシュで」と言い、ブラックカードを見せた。
すると、店員が、「かしこまりました」と言い、靴をそのまま渡した。
値段だけ引きちぎり、黒澤は花に靴を履かせた。
土産物売り場で、神戸プリンを見ていると、「京都の方ですか?」と、聞かれた。
花が見ると、五十代くらいの男がいた。
男は、Gパンに革ジャンだったが、愛想よく、「神戸プリン、美味しいですよ」と言った。
「何でじゃろ?」と、花が言うと、男は、笑顔で、「今の言葉です」と言った。
そして男はすかさず、花に名刺を渡し、「今度、新作が出ます」と言う。
ーゲームクリエイター吉田和樹。
「ファイナルファンタジーって、知ってます?その新作が、まあ・・・」
そこで、皆伐が割り込んで来た。
「吉田さん、今日はまた何の用事で?」
そこで吉田は言った。
「滅相もない!」
皆伐は吹き出しそうになったが、「仕事ならまた後日」と言った。
吉田は笑顔を作り、「そういうことならまた」と言い、花にも、「是非、また会いましょう」と言った。
そこで、「パパ」と、少し離れたところから女が呼んだ。
皆伐が、「娘さんですか?」と聞くと、吉田は、「いや~」と、照れたように笑った。
花は、神戸プリンの箱を手に取り、「ホテルで食べよう」と言い、ちょうど来た谷田に渡した。
止む気配のない神戸の空の下、花は写真を撮った。
谷田が花に傘を渡し、「ホテルまでこれでお行き」と言った。
黒澤と谷田がそれぞれ傘を差し先に行く。
皆伐が、「マジかよ」と、ずぶぬれになっている。
花が、「一緒に入ろう」と言うと、皆伐が、「やっぱり、良かったじゃけ」と言った。




