幼馴染と仲良くさせようとする婚約者との婚約破棄騒動
よくある幼馴染絡みの婚約破棄騒動です。すぐに終わります。軽い気持ちで読んで頂けると幸いです。
「ミリー、彼女は私の幼馴染のシャナだ。仲良くして欲しい。」
ミリー・ジーナス伯爵令嬢の婚約者、ゼバスタ・ドラノーク伯爵令息は彼の幼馴染であるシャナ・リクノー伯爵令嬢を紹介した。
「初めまして、リクノー令嬢。」
「…こちらこそ初めまして、ジーナス令嬢。」
お互いに自己紹介をすると、ゼバスタは満足そうに笑った。
「シャナの事、これからよろしく頼んだよミリー!」
「はい?」
ゼバスタの言葉に何か思う事があり反応したが、ゼバスタは気が付かなかったようだ。ゼバスタとミリーは家同士が決めた婚約相手で数日前に顔合わせをした。ミリーはまだゼバスタに対して愛情も信頼も持てていないが、ゼバスタの印象は悪くなかったのでこの婚約を好意的に受け入れていた。けれどシャナを紹介され、今後悩まされる事になると知っていたら何が何でもこの婚約を拒否していたとミリーは思う事になった。
◆◇◆
「もう、遅いわよゼバスタ!」
「ごめんな、シャナ。」
「…。」
ゼバスタと会う約束をすると、必ずシャナが同席してきた。シャナはゼバスタにばかり話しかけてミリーを見ない。ゼバスタはシャナと話終えるとミリーに話を振ってくるのでミリーが返すがシャナはすぐに口を挟んできた。どう考えてもシャナはミリーを快く想っていないとミリーは感じていた。
「ミリー、君からもっとシャナに寄り添ってくれないか?」
ゼバスタに相談したが、ゼバスタはそう言うだけで何もしてくれなかった。ミリーは不満に思いながらも頷きシャナに自分から話しかけるようにしてみた。しかし、
「へぇ、だから何です?」
学園での出来事、最近流行りのカフェの話をしてもシャナは素っ気ない返事をしてミリーと会話を続けようとはしなかった。流石にそんな態度を取られてはミリーも我慢できなかった。
「ゼバスタ、やっぱり私はリクノー令嬢とお付き合いは出来ません。今後は私と令嬢を会わせないようにして下さい。」
ミリーははっきりとゼバスタに断言した。しかしゼバスタは嫌がった。
「ミリー、そんな酷い事を言わないでくれ。シャナは人付き合いが苦手なだけで悪い子じゃないんだよ。」
「ゼバスタは何も言ってくれないけど、私がリクノー令嬢に冷たい態度を取られているのを見てますよね? それに人付き合いが苦手なら尚更私と会わせるべきでは無いのではありませんか?」
ゼバスタがシャナに注意しない事も指摘しながらミリーが反論する。しかしゼバスタは首を振った。
「ミリーは僕の婚約者だろう? 僕と一緒にいる以上幼馴染のシャナとは関わりを持つ事になるよ。だから2人には絶対に仲良くして欲しい。」
「…それなら、どうすれば仲良くなれるのかゼバスタが提案をして下さい。」
「えっ?」
ミリーがそう言うと、ゼバスタは目を丸くして固まってしまった。
「ゼバスタが何かを思いつくまで私はリクノー令嬢とは会えません。良い案が浮かびましたら教えて下さい、それでは失礼します。」
「ちょっと、ミリー!?」
ゼバスタが慌てたように声をかけてくるがミリーは無視して踵を返した。ゼバスタが良い方法を思いつくまでシャナとは会わないと伝えたので、暫くは平穏に過ごせると思っていた。しかし次の日、ゼバスタに呼ばれて指定の場所に向かうとシャナが居た。
「…ゼバスタの案は何ですか?」
「あはは、ほらミリー早くこっちに来てくれ。」
ミリーとシャナを会わせた以上、何か案がある筈だと思ったミリーはゼバスタに確認したがゼバスタは笑うだけで何も言わない。ゼバスタは何も思いついていないのにミリーとシャナを会わせたのだ。
「もう、ゼバスタったら!」
「仕方ないだろう、シャナ。」
2人の会話が弾む中、ミリーは何も言わずに苛立っていた。
「ねぇ、ミリーもそう思うだろう?」
「…何がですか?」
ゼバスタがミリーに話を振ってくるのは何時もの事だったが、苛立って話を聞いていなかったミリーは素直に言葉にした。
「えっ、ミリー聞いてなかったかい?」
「ええっ!? ジーナス令嬢ゼバスタの話聞いてなかったのですか。失礼ですよ!!」
今までシャナからミリーに話しかけた事なんて無かった。態とらしく嫌味を含ませてシャナはミリーに話しかけてきた。
「…すみません、少しぼーっとしてました。」
「何ですかそれ!? ゼバスタの話を真剣に聞いてなかったって事ですよね? 貴女は婚約者としての自覚があるんですか?」
「それは…。」
そこまで言われる程の事なのかと思いつつゼバスタの方を見ると、彼は困ったように笑うだけで何も言おうとしなかった。
「ジーナス令嬢、ゼバスタは私の大切な幼馴染です! 貴女みたいな彼の言葉を真剣に聞かないような令嬢に彼を任せられません!」
「……。」
「何も言い返せないからって黙らないで下さいよ! 貴方みたいな人は、ゼバスタの婚約者に相応しくありません!!」
シャナはミリーを睨みつけながら威張るように声を上げてきた。ミリーは再びゼバスタを見るが彼は何も言わない。むしろ、何処か楽しんでいるようにミリーは感じてしまった。その瞬間、ミリーの中で何かがプチンッと切れた。
「ゼバスタはどう思うのですか? リクノー令嬢の言う通り、私は婚約者に相応しくないと思いますか?」
怒りを表に出さないように気をつけながらミリーがゼバスタに言うと、ゼバスタは困ったように笑った。
「えっ、いや、その…。」
「…成程。否定しないと言う事は、ゼバスタも私が婚約者である事に不満があるという事ですね。分かりました。では婚約解消するように父にお願いしてみます。」
ミリーがそう言うとゼバスタは驚き、シャナは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「えっ、いや、ちょっと待ってくれ!!」
「ゼバスタもドラノーク伯爵に言って下さいね。早速今から家に帰ってお願いしてきます。」
「だ、駄目だっ! 待ってくれ!!」
「え、ゼバスタ?」
焦ってミリーを引き留めようとするゼバスタ。そのゼバスタを戸惑ったように見るシャナを見て、ミリーはゼバスタに言う。
「私が婚約者である事が不満なんでしょう? 何も言わなかった事がその証明です。何が駄目なのでしょうか?」
「な、なんと言ってこの婚約を解消させるつもりなんだ!? う、上手くいく訳ないだろう!?」
「でも、相談してみれば解消出来るかもしれないじゃないですか。私はゼバスタの幼馴染であるリクノー令嬢に婚約者に相応しくないと言われ、ゼバスタも同意したとありのままに話します。ゼバスタは私の気に入らない所をドラノーク伯爵に話して下さい。」
「え、いや、そんな…。」
「それとも、何か良い案があるのですか?」
何故かゼバスタはミリーとの婚約を解消したくない様子だ。そんなゼバスタの態度に苛立ったシャナは声を上げた。
「もうっ、それで良いじゃないゼバスタ!」
「何を言っているんだシャナ! ミリーの言葉で僕達が本当に婚約を解消したらシャナにも責任があるんだぞっ!? リクノー伯爵家に迷惑をかけるつもりなのか!!」
「…えっ、あ、そ、そんなつもりはっ!」
ゼバスタの言葉にシャナは顔を青褪めさせた。他家の婚約に口を挟み、それが原因で破綻したとなれば当然その原因の家に責任は課させれる。
「…ミ、ミリー。こんな事で婚約解消したいだなんて言わないでくれ。ほら、この話は終わりにしよう!」
「“こんな事で”…つまり解消するには理由が薄いという事ですね。では、ゼバスタは私が嫌がっているのにリクノー令嬢を同席させて2人で仲良くしていた事。リクノー令嬢に私が冷たくされて相談しても何もしてくれなかった事。婚約者である私を一切庇わず、むしろリクノー令嬢の味方をした事を全て話しましょう! これなら婚約解消出来ると思いませんか!」
両手を叩いて名案だと言わんばかりにミリーが笑顔で言う。言葉だけを聞けば、ゼバスタはシャナに気があり浮気をしているとしか思えない。ゼバスタとシャナは顔を青褪めさせた。
「ま、待ってくれミリー!! 頼むからそれはやめてくれっ!!」
「何故ですか?」
「そ、そんな言い方をされたら私とゼバスタが悪いみたいじゃないですか!?」
「え、違うんですか? どこが違うか言ってみて下さいよ。」
ミリーは冷たい声でシャナに言うと、シャナはビクッとして固まってしまった。
「ミ、ミリー、す、すまなかった! 君を傷つけようと思ったんじゃない。君にシャナとの事を相談された時、何も思いつかなかっただけなんだ!」
「…それならどうして私とリクノー令嬢を会わせたんです? 思いつくまで会わせないで欲しいとお願いしましたよね?」
「そ、それは…。」
「…それに、リクノー令嬢に色々と言われた時に私を庇ってくれなかったのは何故ですか?」
「…いや、そのぉ。」
理由を言おうとしないゼバスタに、ミリーは睨み返した。
「何も出来ない頼りない男なんて私から願い下げです、さようなら。」
「ま、待ってくれ! 僕は別れたくないっ!!」
「ね、ねぇジーナス令嬢っ、私の名前を出さないで貰えないかしら? わ、私は婚約解消に賛成だから、ね!」
「な、おいっ! 何を言うんだシャナ!!」
背を向けて帰ろうとしたミリーだったが、2人の身勝手な主張に呆れて振り返った。
「ゼバスタ、私は貴方と別れたいです。理由は何であれ、貴方は私の頼みを聞いてくれなかった。そんな貴方の頼みを聞く義理なんて私にはありません。そしてリクノー令嬢、何故私が貴女の我儘を聞かなくてはならないのですか? …まぁ、どうしてもというなら貴女の名前を出さないで婚約解消する良い案を出して下さい。」
「…えっ!? そ、それは…。」
「ゼバスタと相談しても良いですよ。役に立つとは思えませんけどね。」
辛辣なミリーの言葉にショックを受けたように呆然とするゼバスタと、そんなゼバスタの肩を揺すってどうしようと慌てるシャナを見ると今度こそミリーは背を向けて帰り出した。
◆◇◆
後日、ミリーとゼバスタの婚約はゼバスタの有責で無事に解消された。家同士で決めていたとはいえそこまで重要ではなかったらしい。そしてリクノー伯爵家にも今回の責任として慰謝料が請求された。ミリーの予想通りではあったがシャナはゼバスタの事が好きだったらしい。だからミリーが気に入らなくて嫌がらせをしてきたそうだ。ゼバスタはシャナの事は幼馴染としか思っていないがシャナの好意には気付いていたらしく、嫉妬されて気分が良かったそうだ。そして婚約者になったミリーとシャナが、ゼバスタを取り合うような関係になったら嬉しいと思っていたらしい。
「最低だわ、あり得ない。」
婚約解消の為の話し合いの場で、シャナとの浮気を疑われたゼバスタは洗いざらい白状した。その内容の酷さにミリーは吐き気がした。婚約解消の場にシャナはいなかったが、この話は彼女の耳にも届く事になるだろう。その後2人がどうなるのかはミリーの知った事ではない。まぁ、ミリーは2人の事が大嫌いなので不幸になって欲しいとは思っているのであった。
王道な展開の婚約破棄を書きたくて唐突に書きました 笑 王道な物語は分かっていても面白いなと思います。作者が書いても話が面白いかは自信はありませんが 笑
ここまで読んで下さりありがとうございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです(*^^*)




