第7話 アホしかいない?※レティア視点※
※レティア視点※
(この世界アホしかいない?)
盛大にぶっ飛ばされた従者Aが床につっぷしてぴくぴくしている。散乱するお茶とお菓子、そして倒れたテーブルを前にぶるぶると震えるクレーネと、それを守るように構えるクレーネの従者B~Dを見ながら私は思う。
クレーネにお茶会に呼ばれたそうそう、湯だったお茶をかけられそうになったので、問答無用で従者Aを吹っ飛ばして、叩きのめし現在に至る。
この世界には聖女は何人かいて、その力で階級のようなものが決まる。
で、聖女は女の子の集まりで、当然のごとくそめんどくさい女の上下関係が発生している。リネアが来る前はカミラが牛耳っていたので、リネアは虐めの対象だ。今回私を呼んだのも陰湿ないじめをする聖女の一人クレーネだった。
暴力とかまじか最低ー。
人間のすることじゃないわー。
と、思いながら、私は伸びて倒れてるクレーネの従者をおもいっきり殴り飛ばした。
他人の暴力は許さない。だが自分の暴力は正義の鉄拳なので許される。それが私のポリシーであり大賢者レティアのアイデンティティ。他人に厳しく、自分に甘い。
屑だという自覚はあるが治す気はない。むしろ誇らしく思っている。
従者Bがクレーネの命令で私に殴り掛かってきたので、颯爽(当社比)でかわし脇腹に容赦なくパンチを打ち込むと、従者Bは沸かしたお湯が入ったカップが置かれたトローリーワゴンに激突して、お茶を顔に浴びていた。従者Bがめっちゃ悲鳴をあげる。
本来ならその声を聞きつけた神官が駆け付けてきそうなものではあるが、ご丁寧にこの部屋は防音ばっちりの対策がとられているので声は漏れない。
リネアが悲鳴をあげても助けがこないようにしてあるのだ。悪質極まりない。
記憶からしても、こいつらマジでリネアを暴行していた連中。屑中の屑。
つ・ま・り
容赦不要♡私の中でぼこしていい相手なのである。
カミラとアンヘルを惨めたらしく断罪するための前座にすらならないが、まぁ気分は晴れるので憂さ晴らしにボコそうと思う。
熱湯がかかって、もがいてる従者とそれにかけよるもう一人の従者。
従者の数は4人。全員屈強な男だ。
「な、何をしたのかわかっているの!!」
と、震えながらいうクレーネ。
その声にもう一人の屈強な従者Cが襲い掛かってくる。
(これだけ実力差を見せつけてるのにアホなの?)
まぁ、見かけひ弱な少女でしかないので、倒せると錯覚してるのだろうが、全身身体強化の魔法を施してる私に敵う訳がない。
そのまま従者cのパンチを躱し、右顎からのアッパーを叩きこんだ。
「ぐはぁっ!!」
盛大に吹っ飛ぶ男。
天井に叩きつけられ、床に落下した。
どべちゃと人間がたてたらだめな変な音をたてる。
ちょっと力加減をミスったらしい。この身体の魔力操作になれていないのだから仕方ない。
うん。たぶん。
「な、なにを……」
血を流している従者をみてがくがくと震えるクレーネを横目で見ながら私は笑う。
「何って貴方達がやったことと同じ事でしょう? 大きなやけどを負わせて、表面だけ魔法で治す。そうするとあら不思議。痛みだけはそのままに、傷はバレないのでリアナは誰にも言うことができない。これって一種の拷問じゃない?」
私は力加減を間違えて、酷い事になっている従者Cに回復魔法を施した。従者Cの怪我が一瞬で治る。
「なっ!!」
驚きの声をあげる一同。
この世界では聖女と言われる人たちもこのレベルの傷を治せる人物はいないらしいのでそりゃ驚くだろう。まぁ、私が元いた世界でもこのレベルで治癒魔法が使えるのは私くらいだったが。
この身体だと一回の魔法で一人を治すのがやっとだが、本来の身体なら複数人同時回復も可能だ。
治った従者Cはあたふたとし、他の従者も驚いたのか私と距離をとった。
が、そんなこと関係ないといわんばかりに、壁際で怯えてるクレーネと従者Dのそばにつかつかと歩いていく。
「な、なにするつもり!?」
「もちろん貴方達が私にしてくれたことと同じ事をしてあげるつもりだけど?」
相手を煽るように小首をかしげて可愛く言う。
「そ、そんなこと許されるとおもっているのですか!?」
クレーネが威勢よく叫ぶが、その声は明らかに恐怖で震えているのがわかった。
そこらへんは年相応の小娘という感じだ。
が、リネアにやったことがえげつなさすぎて許す気は皆無。
「許される? 誰に許しをこうの? どんなに貴方達をボコボコにしても、傷を治してしまうから証拠も残らないもの。誰も私の罪は問えない」
「そんなの貴方が治したと言えばいいだけじゃない!!」
「言えるの?」
「え?」
私の言葉にきょとんとするクレーネ。
本当にこの子はお馬鹿さんらしい。かわいい。
「だって、私が一瞬で回復できる魔法を使うと知られたら、私の聖女の中の序列は豊穣の力を使えるカミラの次。聖女の序列は二番手になる。下手をすれば回復の力だけで一番手になれるわね?つまり12人いる聖女のうち、聖女の序列、最下位はあなたになるの。ここまでは理解できるかしら?」
怯えてるクレーネの目をじっと見つめる。
「皇妃様が北部に送りたいのは無能な聖女。けがを一瞬で治せるなんて優秀な聖女を送ってしまったら、北部の領主が喜んでしまうのは貴方でもわかるでしょう?つまり北部送り第一候補は私ではなく貴方になるのよ?」
私の囁きにクレーネの顔が青ざめ皇妃は無能な聖女を北部に送りたいという噂は神殿にいる皆知っている。この少女は第一皇子派の伯爵家の令嬢だ。皇妃の命令には逆らえない。しかもクレーネの親は実子よりも家紋を優先するタイプの毒親。リネアの代わりに第二皇子と婚約などしたら、クレーネも切り捨て、皇妃に恩を売ることを選ぶだろう。
「そ、それは」
「貴方がいま私より優位なのは実家の財力だけ。神殿で大事なのは聖女としての力で、私が一瞬で大けがを治すほどの治癒力をもっていると知れば、神殿は貴方の訴えなど棄却して、私の方を重宝するわ。それは神殿にいる貴方が一番よく知っているでしょう?」
私の言葉にクレーネがぐっと唇をかんだ。そう、この陰湿女がリネアに暴力を振るっているのも、自分が聖女の中で一番力が弱く軽んじられているストレスもあるのだろう。
貴族としてチヤホヤされていた特権がここでは無意味ではないが前ほどの威厳はない。従者や位の低い神官に金をばらまいて、チヤホヤされるくらいが限界で、聖女の中で序列が低いのは変えられない。自尊心の高そうなこの女にとってはさぞ屈辱的だったろう。
「私はどちらでも困らないのよ? 貴方にいいつけられても、黙っていられても、私にはメリットしかない。好きな方を選んで♡」
私の言葉にクレーネが膝から崩れ落ちる。
その顔は屈辱と恐怖でゆがめられており、聖女様のイメージとは程遠い。
今まで自分が虐げていたはずが虐げられる立場になったのを認めなければいけないという葛藤と、認めたくないというプライドがせめぎあっている。
きっと睨んでくるクリーレ。
ああ、最高♡
これよ。これ。
自分より立場が上だと思い込んでいた者達を徹底的に叩き潰して、自尊心をも叩き折る。それでもまだ心が折れてなくてなんとか抵抗しようとするときのこの表情。これが本当にたまらない。ここから逆らえなくなるまで徹底的に叩き落とすまでの過程が一番楽しい。完璧に折れてしまった後は従順すぎてつまらないもの。じっくりとじっくりと調教してあげる♡
そんなことを考えていると、従者Dが棒をもって殴りかかって来た。
クレーネが先ほど指で何かジェスチャーしていたのが、殴りかかれという意味だったのだろう。
(ああ、この子本当に可愛い♡ 調教しがいがある♡)
私はその従者を容赦なくぶん殴るのだった。
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