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第6話 リネア視点

「はい!います!見えていますか!?」


 私は気づいてくれたことが嬉しくて手を振った。

 飛び降りて自殺した後――。

 なぜか私は体から離れ、魂だけになって空中を飛んでいた。


 必死に体に戻ろうとするけれど、戻れない状態に泣きそうになる。

 私の体は別の誰かが入って体を動かしているみたいで、私はどうしたらいいかわからなかった。


 いろいろな人に話しかけてみたけれど、みな私の存在そのものを認知してくれない。


 時々アレス大神官様と目があった気がするけれど、あちらは私の存在に何となく感づいてはいるけれど、姿までは見えないみたいで、すぐ目をそらされてしまった。

 どうしていいのかわからなくて、私の身体の周りをうろうろするしかできなかった。でもやっと気づいてもらえたのが嬉しくて必死にアピールするけれど……


「……なんてね、いるわけないか」


 私の身体に入った人がそう言って、再びベッドに倒れ込んだ。


(気づいてくれたわけじゃなかったんだ……)


 一瞬喜んでしまった自分が恥ずかしくなって私も少し離れた椅子に座った。

 座るといっても、椅子の感触もない、状態に悲しくなる。


(私どうなるんだろう……幽霊は悪霊になるって聞いた事がある。私も悪霊になるのかな……)


 そんなことを考えて涙ぐんでしまう。


(……それに、この人は誰なんだろう?)


 侍女に罪を着せるために毒のパンを食べた時はびっくりした。

 今でも思い出すと心臓がバクバクしてしまう。


(あんなことをするなんて悪い人なのかな? 北部の人達に酷い事をしたらどうしよう)


 そう考えて、悲しくなる。北部の人が困らないように命を断ったはずだったのに、その結果が何も実らなかったどころか、この人の行動によっては自分が行くより酷い結果になるかもしれない。


(結局、私はいつもこうなんだ……)


 無能で役立たず、いるだけで迷惑。いつも虐められていて、好きな人にも愛してもらえない。


 そんなことを考えていると――こんこんっと扉がノックされ、「よろしいでしょうか」と、新しい侍女の人がひょっこり現れる。


 小柄な女性で黒髪の神官見習い。私の身体の侍女をやってくれることになったララさんだ。

 確かアレス様のおつきの一人だったと思う。


「どうしたの?」


 私の身体にいる誰かがきくと、侍女のララさんは「聖女クレーネ様がリネア様をお茶にお誘いしたいとおっしゃっていました」と答えた。


「気分転換にと、誘ってくれたみたいです」と、笑う。その笑顔は純粋で決して悪気はないのだろう。


 けれど、ララさんは知らない。クレーネ様は私を嫌っていて、暴力をふるってくる。それもやることがかなり陰湿だ。私の中に入っただれかが酷い目にあってしまう。


(行ったらダメ!とめないと!!)


 私が思って立ち上がった瞬間。


「わかりました。いますぐ行くとお伝えください」


 もう一人の私が優しく微笑んだ。

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