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第9話 力づくで聞くまでです(出来るとはいってない)

※レティア視点※


 さてと――。


 私はリネアと会話を終えて、鏡を置いた。

 リネアと会話できたのはよかったけれど、彼女は何も知らなかった。

 まぁ彼女の記憶を全て引き継いでるっぽいので、この記憶が嘘じゃないと仮定すると想定内ではあるのだけれど…。

 私は魔法の効果がきれて普通の鏡に戻ってしまった鏡を手に取る。


(この身体いちいち魔石で魔力を補充しなきゃだから面倒ね)


 私の天才的頭脳で魔力の燃費を極力抑えている。そのため魔力が弱くても身体強化能力の魔法などは使えるが、やはりこの身体で高度な魔法を使うには魔力を補わないと無理で、魔石が必要になってしまう。

 金と魔石はクレーネから巻き上げはしたが、やりたいことを考えると正直魔石が足りない。

(定期的にクレーネから巻き上げるにしても一令嬢がお小遣いにもらえる金なんて限度がある。もっと確実に金を稼ぐ方法をみつけないと)

 そう、私が相手にしなければいけないのはクレーネとかいう雑魚ではない。

 クレーネにそうするように指示したカミラと、別件で気に喰わない糞皇子アンヘラだ。


 豊穣の力で崇め祀られているカミラや時期皇帝の皇子アンヘルに対抗するのは割と骨を折る作業だろう。


 リネアの記憶から推測するに、ここまで神殿内で憎まれているのはカミラが神殿の人たちに悪評をばらまいたからで間違いない。そして侍女如きが聖女リアナに横暴な事ができるのも、カミラが後ろ盾にあるからだ。


 元の身体に戻るのも大事だがそれより先にカミラを叩き潰す。

 私個人として恨みはないが、とにかく気に入らない。それだけで潰す理由としては十分だ。一貫性のない災厄・歩く理不尽・性悪女と評された事のある私をなめないでほしい。


 自分に悪意を向けてくるものは容赦なく潰し、なんとなく気に入らないものも関係ない人間でも何かと理由をつけて首を突っ込んで潰す。それが私のポリシーだ。



 今の私の目標は、カミラと糞皇子を絶望の底に堕とす事。

 大賢者時代の私は愚かだった。

 若くて周りが見えていなかったため、敵対するものは最初から速攻で叩き潰してしまい、敵を育てるということをしなかった。そのため誰も自分に逆らわなくなってしまってしまったのだ。


 圧倒的強さを見せつけてしまっては誰も逆らわなくなってしまう。

 それは元の身体の私が証明している。

 弱者のふりをしなければアホはよってこない。


 前世の私はそれを見落としていた。


 今度は失敗しない。

 つぼみが花ひらくまでゆっくりじっくり育て上げ綺麗な花を咲かせてみせよう。


 最高の状態でへし折ってやるその日のために。


 二人を陥れる過程を想像して嬉しくてぐへへと笑うと、なぜかリネアに引かれてる気がした。




「おはようございます。調子はどうですか?」


 笑顔で大神官アレスが私に聞いてきた。部屋を移動してからアレスは毎日私の治療にやってくる。今日も治療の時間なのだろう。


「はい。とても調子がいいです」


 答える私。そう、これからどうやってカミラやリアナを振ったアンヘル皇子を、陥れるか計画をたてるのは楽しくて毎日たいくつしない。おかげで常にハッピーでお肌もつやつやだ。


「それはよかった。安心しました」


 そう言って、アレスが私に近寄ると、軽く言葉を交わした後、回復魔法をかけた。

 もう毒は抜けきっているはずなのだが、念のためと治療してく。


 まぁ、それは表向きの理由っぽいが。


「そういえば、クレーネ様とお茶会をしたそうですね」


 治癒魔法をかけながアレスが目線を私にむける。


「はい。とても有意義でした」


「……そうですか」


「言いたい事があるなら言ったらどうですか?」


 私の問いにアレスの動きが止まる。思った通りの反応に私は追い打ちをかけた。


「先日、クレーネの部屋で何があったのか見ていましたよね? 盗撮の魔法の水晶に気づかないとおもいましたか?」


 私が笑いながら聞くと、アレスが私の目をまっすぐ見つめてくる。

 そう――クレーネをぼこぼこにしているとき、リネア(本物)の他にもう一つ気配があった。それも本来神殿にいてはいけない気配だ。


「昨日私とリネアとの会話も聞こうとしたでしょう?」


 私が聞くとアレスは苦笑いして


「ええ、結界を張られて阻まれましたが」


 と、立ち上がった。私を見るその瞳はありありと警戒の色が浮かんでいる。


「この世界は面白いわ」


 私もゆっくりと立ち上がってアレスを見つめ返した。


「なんで魔族が神官なんてやっているのかしら? 理由を聞かせてもらえる?」


 私の問いにアレスは無言になる。

 そう――彼は魔族だ。本来の世界で大賢者として魔族と何度となく戦ってきた私だからこそわかる魔族の気配。ただ、なぜか彼からは魔族だけではなく、神族の気配もわずかに感じられる。私の世界ではなかった存在だ。そもそも本来魔族なら神族の力で守られた神殿の中に長期留まるというのはなかなか難しいはず。


 若い時の私なら魔族を見つけたら「汚物は消毒だ―」と速攻で叩き潰していただろうが、私も子どもじゃない。それをやりすぎて、敵対するものを全て倒してしまい敵がいなくなってしまいつまらなくなったという、悲しい過去がある以上、相手の意見を聞いてあげようじゃないか。


 アレスは魔族の気配を隠すのをやめたようで、殺気を放ちながら


「私も聞かせていただきたいですね。貴方が何者なのか」


 と、目を細めた。


「教えないといったら?」


「力づくで聞くまでです」


 そう言った途端、部屋が闇に包まれた。

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