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エンチャント

少々グロテスクな表現が含まれております。ご注意ください。

すっかり走れるようになった俺はガッツからエンチャントを正式に教わることになった。


ガッツ「いいか!エンチャントってのは段階的に魔力放出、次にそれを留める、そして物の形に添わせる…これはイメージと現実のサイズ感が居る。仕上げに覆った魔力にイメージを伝えて魔法となるんだ!」


言われた通りに自分の剣にやってみる。聞くに、いつも手や足にやっていることと大差ないように感じたが…俺は手の先や掌から魔力が出ないらしい。


1日目は第1の関門である「魔力を手から外に出す」を突破できずに日が暮れた。

2日目ガッツは習熟が遅い奴もいると言う…

3日目ガッツはまだ常識的には問題ではないという…

4日目…

俺は思い出した。

師匠は俺の魔力回路を作り、拡張できた人だ。

そしてあの日、手だけが光っていた…

もし仮に俺の本質や信条を聞いて、事前に対策として俺の手の回路だけを…潰していたら?

師匠は俺が魔力を正確に扱えるようになるまで開けるつもりがなかったとしたら。

師匠の事だ、何かしら細工をしている事は間違い無さそうだ。


ならばと思い

俺はおもむろに手を短剣で刺す。ザクザクザクザクザクザク…まだ足りないだろうか。骨は避けているつもりだし、腱も傷つけてはいない。

師匠の痛みに比べればどうと言うことは無いのだ。

だから躊躇なく刺す。

ドタドタと誰かが駆け寄ってくる

ガッツ「気でも狂ったか!!?」かつてない怒号が俺の脳を震わせる。そして俺の頬を手で包み、真っ直ぐと目を見開き唇を噛み締めていた。

ウィル「魔力回路を作り直そうと思いまして」

ガッツは頭を抱え、急ぎ足で演習場を出て行く

俺はボロボロになった左手を空にかざす。

今日は太陽の光がより一層強いなぁ。

右手はどうやったものか…

俺は足で短剣を挟み、右手を思い切り振り下ろす

何度も何度も刀身が手の肉を梳く。

やがて左手も右手も、骨がむき出しになり、筋肉は全て破壊され尽くしたのだろうか…寸分も動きはしない。

試しに魔力を流そうとするが、骨に纏える程度だ。まだ足りないのだろうか

無心で手を刺す

ドタドタと演習場の扉が開き、アーサーとガッツに…あの人は…見慣れない服と杖を持った人が来た。

ガッツはその光景に俺の手を止め

ガッツ「お前!!まだ!!なんてことを!」

俺の頬は稲妻に打たれような音を立て

視界が揺れ、首がねじれる限界まで捻れた気がする。

そしてガッツは俺の手を取り

見慣れない人へ見せ、

見その人は杖を俺の手にかざし、ブツブツと呪文らしき物を唱え

杖が緑色に光りを放ち、俺の手を包み込む。

師匠のとは違い遅く、痛い。


ガッツ「どうですか?宮廷魔術師殿」

宮廷魔術師「今すぐに手の形だけであれば治せますが…これは酷い…魔術回路を1から組まなくてはなりません…3週間ほど頂ければなんとか…」


ガッツは俺の両手を見て

「ウィル、手が治るまではアーサーの所に行け」いつも張りがある声は、今日はただ淡々と俺に語りかける様だった。


俺は治りたての手に荷物を最低限抱え

アーサーの元へ行くのだった。


ぐちゃぐちゃになった手を治す3週間は忙しいものだった

日も登らない時間にに宮廷魔術師の居る部屋へ向かい

まず回路を治す痛みを伴う治療を半日

痛みが酷く歯を食いしばってしまうため、猿轡をはめて声を我慢し耐え続ける。

宮廷魔術師は俺の声を聞く度に、酷く悲しげな表情をするのだった。

残りの半日はひたすらアーサーや副団長との訓練に勤しんだ。


ある日

宮廷魔術師「つかぬ事をお聞きしますがなぜ、貴方は耐えられるのですか?」

1週間が経った頃だろうか。半日の治療が終わり、中庭に向かおうとした時だった。

「足を引っ張られながら、らちぎられるより痛くないですから」部屋の扉をそっと開ける。俺は止まれない。必ず師匠を助ける。


最後の治療が終わり、中庭で剣をもち集中する。

師匠に貰った手袋をはめる。

ただ、馴染む手袋は師匠を思い出すばかりで…悔しいだけだった。

今はエンチャントを一刻も早く成功させねば。

やがて俺は両手に魔力を流すことに成功する

そして掌からゆっくりと剣に注ぎ込むように、表面を這わせるように惑わせることができた。

剣はほんのりと暖かく光る。

あとはここに純粋な魔力でもって最も硬い防護とカウンターを惑わせる。

これが!エンチャント!

白と黒だった剣は黄金の剣へと姿を変える。

エンチャントが出来たら

俺は1つ試しいことがあった

そこの上に更にカウンターを剣に向くように載せる。これによりカウンターとカウンターで反響しあう。

そしてこれを放つことが出来れば凄まじい攻撃になるに違いない!

誰もやらないのが不思議だった。

が、すぐに答えが分かった。

俺の魔力は加速度的に喰らわれ

どんどん膨れ上がっていくカウンター同士の潰し合いに俺の魔力は10分と持たず倒れた。


目が覚めたのは月が登った頃

芝生が俺を優しく受け止めてくれていた。

うつ伏せだった俺は仰向けになり、空を仰ぐ

あの日もこんな空だった。

何かと師匠を思い出してしまう。気が緩んで居るのだろうか…しっかりしなければっ!

寝ている暇などないのだ。強くならないと!

あいつに勝つんだ!クレイブ待っていろ!!!

俺は立ち上がり

同じことを繰り返す。

「エンチャント」


次に目が覚めたのは日が昇りかけている

王城の建物があるため空の色で判断するのみだが。

「ぐううう」

ああ、お腹空いたなぁ。

俺は猿轡を外し朝ごはんを取りに厨房へ向かう。

ご飯はパンやチーズといった食事が出される。

歩きながら食べてしまいたいが、ここは一応王城だから控えよう。それに俺に剣術を最初に教えてくれた先生が見ていたら雷が降ってきそうだ。


厨房から部屋へ着くとアーサーが待っていた。

アーサー「ウィル君、魔力切れを何度も起こすと死んでしまうよ。限界を見極めて魔法を解除すんだ。この砂時計でね。」俺の飯の乗ったプレートに砂時計を置き、続けて

「あと、人目が気になるだろうから、裏の山を使うといい。」アーサーは俺の横を抜け

「じゃ!互いに頑張ろう」

そう言いどこかへ向かった。

もさもさしたパンに塩分の濃いチーズ。子供の頃を思い出すなぁ。

師匠は今頃何を食べているのかなぁ…

ああ、気を抜くと師匠のことを考えてしまう。

別のことを考えよう。

今後の目標はどうするべきか、とか。

50階層のモンスターが居たということは

50階層を目指すのがとりあえずの目標にしよう。

その為にはクレイブを倒すほどのパワーが必要だ

「ごちそうさまでした」

俺は剣を携え、山を目指す。


裏山はとても静かな所だった、

鳥のさえずりがよく聞こえ、木漏れ日が陽だまりを作り、目に映る風景が1枚の絵のようだった。

俺は切り株に砂時計を置いた。その横にアイテム袋を置く。

この砂時計は魔力残量を可視化してくれるものらしい。

俺は剣を鞘から抜き魔力拡張を始める

「エンチャント」

凄まじい速度で砂が落ちる

半刻程経った頃には砂が指先程度になっている。

本当にアーサーの忠告を聞くならここがヤメ時だろう。だが、それでは時間がかかりすぎるのだ。

だから俺は死を超えてでも強くなる!!

師匠を助けるために!

クレイブの殻は魔力を通さないが、

極端な強い力に弱い。師匠の言った物理はその事を指すのだろう。

だから俺は、このカウンターで膨れ上がった力を利用して剣を振り、やつの殻を割ってやることにした。

ふっと意識が途絶える。ああ、魔力切れか。


何回日が昇っただろうか、

剣だけでは飽き足らず、地面と足にも同じことを施した。

剣を振っては気絶を繰り返す。

繰り返すうちに気づいたのだ。気絶している時間が短くなって居ることに。

気絶し、起き上がっても日の高さも、木漏れ日の方向もあまり変わらないのだ。

まるで瞬きのように、ほんの一瞬だけ意識が飛んでいるような感覚なのだ…


そこからの成長は早かった。

まず、1日中エンチャントをしていても意識が飛ばなくなった。

その証拠に俺は、山中を音を置き去りに駆け巡り続けることが出来るようになっていた。

気絶しているのであれば音が聞こえるから、すぐ分かる。

これがどれほどの物なのか試したい。

まだ50層には程遠いだろうが。


明日は市場に行き、色々と揃えガッツに伝えてから

明後日にダンジョンに行ってみるとしよう。

せめてCランクの上限20階層は突破できるといいな。


俺は山を降りる。

アーサーと王宮の方々に礼を伝えて

宿に戻るとしよう。



ご覧いただきありがとうございました!

次回もお楽しみに

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