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できること。

ご覧いただきありがとうございます。

ドンッ

鈍い音が背中を叩く

俺はどれほど飛ばされたのか

どこかの壁に当たり、俺は止まる。

ここは…ギルドか。師匠…がっ…伝えなきゃ。

まだ再生仕切って居ない足は立つことを許さず

這いつくばって必死に扉をノックする。

あたりは暗く、俺の扉を叩く音だけが辺りに響き、何も返ってこない。誰もいないと知りながら必死に扉を叩く。

早くしなきゃ師匠が…師匠がっ!!!まだ助かるかもしれない。

バキン

ついには手の届く部分の扉を叩き壊してしまう。

壊れたことによりギルド内の警報が鳴る。

その音から10秒程だろうか這いつくばっている俺の頭上から声がする

「強盗かと思ってきたら…お前、ウィルか、どうしたんだ、、」

聞き覚えのある声に安堵さえ求める。ガッツだ。

息を飲み、伝えたい言葉が溢れるがどれの1つとて音になることは無かった。

その様子を見たガッツは俺を抱え

「まずは治療しよう…」静かに全てを察したように

俺の酷い有様を見て、抱えあげ

ギルドの医務室へと運び、

「飲めるか?」柔らかい声音で、俺に味のしない液体を飲ませ

その図体に似つかわず丁寧に俺に、治療魔法が入っているであろう、緑の光を放つ道具を1箇所ずつ充てては

痛みが引いて行く。その光のせいか、強ばっていた体から力が抜ける。


ふと彼の目に止まったのはウィルが握りしめているペンダントだった。


ガッツはペンダント見るなり、ガタンっと椅子を蹴るように駆け出し、部屋を飛び出してゆく。


俺は…何もすることが出来なかった。どうすれば良かったのだろうか。

ギルドの天井は何も答えてはくれないが

もっと早く懐中時計が光っている事を知らせていればこうはならなかったのでは無いか…俺が居なければ師匠は帰ってこれたのでは無いか…

後悔の念が波のように押し寄せ、引き返すことは無く頭の中に積もってゆく。


痛みも引き足の感覚が戻ってきた頃

朝日が差し込み

開けっぱなしの医務室の扉から

アーサーとガッツ、そして受付嬢が順に部屋に入ってくる。

ガッツ「今から聞くことは他言無用だ、2人とも」

アーサーと受付嬢が1人ずつ頷くことを確認し

釘を刺す。

俺の目を真っ直ぐと見つめ

ガッツ「何があった」静かに問いかけた

激しい光のように先程のことが呼び戻される…

夢であって欲しい。

どうか、どうか、悪夢でありますようにと。

ただ分かっていた…そんなに甘い物などない。

彼らの視線が、表情がそれを赦してはくれないのだから。


そんな現実に俺は深く絶望し、ガッツの問に最適な答えが見当たら無いまま俺はペンダントを握る。

手が光を淡く放つ。

ペンダントが光り、見覚えのある景色をガッツ達の前に映し出す。

これは…俺?両足のない俺が映っている…

そして俺はこの先…ああ師匠…師匠!!

苦痛に苛まれている俺が治療を受けている

涙が止まらない。この先の事を知っているから…

見たくない…見たくないっ!!ても動かず、目はその映像から離れることを知らず…視界が覆われる。


受付嬢がそっと手で俺の目を覆ってくれたのだ


ガッツは投影された物を見て呟く

ガッツ「クレイブ何故ここに」と。

映像が終わったのだろうか、視界が開かれる。

アーサーは俺の手を持ち真っ直ぐとこちらに据え

「師匠に最後に言われた言葉は?」

静かに時間が経つ

日は強く差し込み始める。

アーサー「貴方の師匠はただ転ぶような人間ですか?」

更にアーサーは問いかけた

違う!!違うっ!!!師匠は!!師匠は

話すのが苦手で、目付きが悪くて…でも世話焼きで、出来ることを全身全霊でやる人だ。

絞りカスの様な嗄れた声で伝える

「まっ…て…い、る、と…」

ガッツやアーサーは顔を見合わせ

ハハッと笑う。

師匠が…死んだんだぞ…なぜ笑う??

いや、違う。今し方自信が発した言葉を繰り返す

「待って…いるぞ…」

待っている…つまり死ぬ気はない、死なない…

と言うことか。

アーサーは俺の顔を見て

「決まりましたか?」

こんな寝てる暇は無いのだ。ベットから飛び起きたつもりだったが、新品の足は答えてはくれずにドサッと滑り落ちる。膝から下に力が入らない。

それでも俺はアーサーに縋るように足首をつかみ


「俺に出来ることならなんでもやります…だからっ!!師匠を助ける力をくださいッ!!師匠を助ける力が必要なんです!!!」ガラガラの声で精一杯訴える


ガッツは俺の体を起こし、支えながら

「急ぐ必要はない!彼はしぶといことで有名なんだ!聞かせてやろう!お前の師匠がどれほどしぶといかを!」ガッツは医務室から運び出そうとする。

アーサーは俺に目線を合わせ

「私はいつでも君を歓迎する。私の教えが必要になったらいつでも来なさい」そしてアーサーはギルドの外へと消えていった。


ガッツに知らない師匠のことを聞いた。

1年前程にこのギルドに来て、あっという間にSランクに上がったこと。パーティを全員抱えて帰ってきたこと…ある時は両手がないまま帰宅しようとしていたこと。聞けば、道端でよく倒れている人で、同ランクの人達からは単騎の方が彼は強いと評されているらしいこと。

なぜ師匠のことをもっと知ろうとしなかったのだろうか…


運ばれ着いたのは訓練場だ

ガッツは俺を壁にもたれかからせ

「エンチャント」そのへんの剣にガッツは魔力を惑わせる

纏っていた魔力は姿を炎へと変え、燃え盛る剣に変わる。

ガッツ「お前の師匠はなぜこれを、お前に教えなかったと思う?」

何とか上体を起こし

「センスがないからだと思います。」

ガッツ「違うな、お前が大切だったからだ…」ガッツは息を軽く吸い込み

「これはでかい独り言なんだが…溶岩龍を持ってきた帰りだったか、あの日は珍しく憔悴していた。恐らく精霊魔術でも使ったんだろう。そして俺は聞いたんだ、弟子にも精霊魔術は教えるのかって…」

そして空を仰ぎながら、俺に背を向けて

「おまえさんは、目標の為ならどこまでも自分を追い込めるから、命を惜しまないだろう…だから教えることは無い…世界一かっこいい弟子を早死させたいわけが無い。なんて言っててなぁ…俺はウィルが成長する事に掛けるしかないんだが、赦してくれるか?」

言い終えて、改めて震える息を彼は吸う。

「……」

「なあ、ウィルお前は自分を殺さないと約束できるか?」

彼の手元に握られた炎の剣は酷く不安定で揺らいでいる。


「僕は…いや、俺は…正直分かりません。ですが、師匠を助けるまでは死ぬつもりも、負けるつもりもありません…師匠を助けられる冒険者になるんです。」

ガッツはその言葉を背中で受け止め…くるりと俺の方を向きわしゃわしゃとガサツに俺の頭を撫でた。

「じゃあ強くならないとな!!まずは立ってみて歩いて、走れ!話はそこからだ」

ウィル「はい!」

その返事から3日が過ぎ、俺はかつてない速さで走れるようになった。

医師の話では元に戻るのに2ヶ月程度は掛かるそうだが、それでは遅いので

俺は足の側面に魔力で柱を作り固定し、膝の付け根に互いに当たると反発する魔力を置き、

歩く時はこれを一定間隔で発動させ、走る時は反発を強め、止まりたい時は反発を弱めていく手法を使うこととした。



これは

後から聞いた話なのだが、この国のS級の残り2人は

アーサーとガッツなんだそうだ。


次回もお楽しみに

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