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第13話 兄弟の確執

 それからというもの廊下で彼とすれ違う度に睨み付けられたり舌打ちをされる日々が続いた。

 その内になんとなく気づいたが恐らくだが彼が仙太郎くんの言っていたもう一人の同居人だ。

 そうでなければこんな頻繁に家の中ですれ違う訳がない。

 そしてもうひとつ悲しきかな察したのは驚くほど私は彼に嫌われているということだ。

 そりゃ目に見える形で何かをされたわけではないが会うたびのこの態度を見ていれば嫌でもわかる。

 どうしたら彼とちゃんと話を出来るだろうか。

 そんな事ばかりを考えていれば顔に出てしまっていたようで玄関の落ち葉掃きをしていた私を見て通りがかりの仙太郎くんが足を止めた。

「紬様? どうかなされましたか」

「あ、ごめんなさい、なんでもないの」

「左様ですか」

「あ! 待って仙太郎くん、やっぱり少し聞いてもいいかな……?」

 早々に去っていこうとする仙太郎くんを慌てて呼び止める。

「私にお答え出来る範疇でしたら何でもお聞きください」

 そうすれば仙太郎くんは足を止めてこちらを振り返る。

「あの、家の中で男の子に会ったんだけど、仙太郎くんによく似てる子、あの子仙太郎くんのお兄さん?」

「……清太郎に会われたんですね、ええお察しの通りあれは私の愚兄です」

 仙太郎くんは私の質問に顔色ひとつ変えずにそう言った。

「やっぱり、それであの、何故だかわからないんだけど清太郎くん? に嫌われてるみたいで、どうしたら仲良くなれるかなって……」

「ああそれでしたら紬様がお気になさる必要はありません、あいつは紬様が嫌いなのではない、人間が嫌いなんです」

 おずおずと聞けば仙太郎くんは間髪入れずにただ淡々といつものようにそう言いはなった。

「……そうなんだ、で、でも一緒に暮らしている以上少しはお近づきになりたいんだけど……」

 そこまで言ってから仙太郎くんの表情がいつもと少し違うことに気づく。

「……」

「……仙太郎くん?」

 黙り込んでしまった仙太郎くんの名前を恐る恐る呼ぶ。

「以前にも言わせていただきましたがそういうお気遣いは不必要です、私達兄弟は二人だけでずっと生きてきました、あの方がいなくなり鬼神様に拾っていただくまでずっと二人で、鬼神様には拾っていただいた恩もありますが何より人間ではない、神なれば私達と同じ存在、貴女は何ですか? 人間でしょう? 神でもあやかしでもない、人間など小賢しく愚かで、自己中心的な屑しかいない、そんな下等な生き物が我らと馴れ合いたいなど差し出がましいにも程がある…!!」

「仙、太郎くん……」

 初めて、仙太郎くんが声を荒げているところを見た。

 いつもは年不相応なほどかしこまった物言いと丁寧な所作の仙太郎くんが抱えきれなくなった感情を顔に怒りを浮かべ耐えられないといったように吐露する。

 そんな様子が、どこかとても痛ましかった。

「何騒いでんだ五月蝿いぞ愚弟」

「清、太郎……」

 そんな仙太郎くんを止めたのは渦中の清太郎くんだった。

「悪いな、こいつこう見えて短気なんだよ」

「いえ、大丈夫だけど……」

「まぁというわけだからあんまりオレらに関わるんじゃねーぞ、たとえあいつの嫁だとしてもオレ達は特別扱いなんてしない、他の人間と一緒だ、行くぞ仙太郎」

 清太郎くんはそう言うと仙太郎くんを連れて屋敷の中へと早々に入っていってしまった。

 私は一緒に住む以上仙太郎くんとも清太郎くんとも仲良くなれたらと思っていた。

 でもそれは二人にとっては迷惑なことなのだろうか。

 私では計り知れない過去があの二人にはある。

 関わらないことが彼らのためかも知れない。

 それでも私は……

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