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第12話 謎の少年

 旦那様は起こすと少しボーっとした様子で布団から起き上がって頭を少し押さえていたがすぐに立ち上がり席につくと食事を始めた。

「旦那様、体調が優れないようですが大丈夫ですか……?」

「ん、ああ、私はあまり酒に強くなくてな、体調は問題ないから気にしないで大丈夫だ」

「左様ですか……あまり無理はなさらないでくださいね」

「ああ」

 お酒に弱いとは見かけによらず可愛らしい部分があるお方だ。

 だがそれ以上に先ほど旦那様を起こしたときのほうが衝撃を受けた。

 なんと、旦那様は鬼の面を外さずに寝ていたのだ。

 さすがに就寝時は外しているだろうとその素顔を見れると少し期待して起こしにいったのだが残念だ。

「ご馳走さま、今日も旨かった、私は仕事があるから書斎に行くが……」

 旦那様は食器を持って立ち上がると私の隣で立ち止まった。

「……なんでしょうか?」

「簪は、しっかり持っているか?」

「はい、言われた通り寝るときも懐に入れて肌身離さず持っております」

「そうか、ならいい」

 旦那様はそれだけ言うと私の頭を不器用な手付きで撫でるとそのままお勝手に皿を下げて部屋を出ていってしまった。

「っ……」

 いきなりのことに私は頭を両手で押さえて息を飲んだ。

 昨日の事といいあまりにも心臓に悪すぎる。

「か、片付けないとっ!!」

 私は誰に言うでもなく自分に言い聞かせると自分の分の食器を持って頭を振りながら勢いよく立ち上がった。


「さて、掃除しないと」

 朝食の片付けが終われば次はいつも通り掃除だ。

 掃除をしていると本当にこの家は広いのだと実感する。

 やる気を入れてバケツに汲んだ水で雑巾を濡らしていた時だった。

「ねえちょっと、邪魔なんだけど」

「……えっ」

 目の前から仙太郎くんによく似ている声が響いた。

 でも、あまりに言葉遣いが仙太郎くんとはかけはなれていてすっとぼけた声を漏らしながらその声のたほうを向く為に顔を上げる。

「え、あの、誰ですか? 仙太郎くん、じゃないですよね」

 そこに立っていた少年は顔の作りも仙太郎くんによく似ていた。

 だがなんというか、雰囲気が違う。

 目付きとか髪の感じとかも。

 そして仙太郎くんより少し背丈も大きいような気がする。

「はぁ? あのくそ真面目と一緒にされるとか勘弁なんだけど、っていうか邪魔だから退け」

 謎の少年は嫌そうに吐き捨てるとチッと舌打ちをして眉間にシワを寄せた。

「ご、ごめん、どうぞ」

 私は突然のことにしどろもどろになりながら軽く謝るとバケツを持って廊下の端に移動する。

「お前だろ」

「……え?」

「あの馬鹿鬼が娶ったっていう人間の女は、仙がなんて言ってるか知らねーがオレはお前のことなんて認めてない……いや、認めないからな」

 少年は憎々しげに私を睨み付けるとどんどんと足を踏み鳴らしながら早々に去っていってしまった。

「な、なんだったんだろう一対……」

 状況が理解出来ず私はただ呆然と呟くしか出来なかった。

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