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少年が少女と会う作戦

 久しぶりに明日を想像したんだ。相変わらずベッドの上からの景色は変わらないけど、色が変わっている気がしたね。時計校に行こうって声が僕にはかからなかったけど、ラウンドワンに行こうって声が僕にはかかった。

 今日のことを振り返る。明日の為に、僕たちは連絡先を交換した。すると彼女は「また、明日」と言ってすぐにその場を後にする。僕との出会いなんてなかったかのように、彼女は扉を開けて階段を下りて行った。追いかけようかとも思ったけど、おいてかれる方が気分だった。一人になった僕はとことこと、彼女が立っていた場所まで歩いた。目の前には手を伸ばせば上に届きそうなぐらいのフェンスがあって意外と低いなって思った。最後の行った屋上は小学生のころだったと思うから随分、背が伸びたなって悲しくなった。そんな待ち望んだ屋上の感想は、程よく心が落ち着いたよ。来て良かったって素直に思えた。上も見ないで、下も見ずに、ただまっすぐ前だけを見たね。そんな時、携帯が震えたんだ。知ってると思うけど僕の携帯は基本的に震えないから、予想は当たった。


「時計校の屋上からです。なんて呼んだらいいですか?」


 笑ったね。僕たちは時計校の上でマッチしたらしい。渡辺さんだってメッセージだと敬語じゃないか。渡辺さんに「松本で」って返したら、親指を立てたリスが返ってきた。そこで僕たちはお互いの名前を知ったんだ。画面の中にいる小さな渡辺さんは、数字の書かれた的に矢を投げようとしてる後ろ姿だった。写真通りの人だったし、写真よりずっと綺麗だったね。本人を見てから写真を見るなんて、本来なら当たり前のはずなのに、おかしいなって思ったよ。ちぐはぐとはこのことだね。

 時間は零時を過ぎたから、今度は昨日を思い出したんだ。ふらっと立ち寄った屋上で僕たちは出会った。そこは時計校という、止まらない時計のある場所で。幽霊かと思ったら、女の人だった。普通なら連絡先なんて交換しないし、逃げて終わりなんじゃないかな。でも僕は運命だと思ったんだ。彼女があそこに立っていたのは絶対に理由があるし、僕があそこに行ったのにも理由がある。彼女の理由は分からないけど、なんだっていいと思ったね。二人は出会うべくして出会った。だってそういうものだろ。ボーイミーツガールって。浮かれているなって思ったよ。ラウンドワンに本当に行くのかも怪しかった。それでも、僕は嬉しかったんだ。女の子とデート出来るのが、違う。誰かにここから出してもらえたのが、違う。僕にも意味があるんだなって思えたから。

 その日はよく眠れなかったね。悪い意味で。僕の考えた最高のボーイミーツガールってやつを、いつまでも、いつまでも、考えちゃったから。

 朝、ふと起きるとすぐに僕は携帯を確認したさ。「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」ってきてて、昨日の運命が確信に変わった時だったね。ふと起きた時に、一番最初に目に入れるものがこの世で一番大切なんだ。だから僕は、ふと起きるって言葉を良く思わない。

「おはようございます。今日は何時ですか。」


ボーイミーツガール作戦の始まりだ。


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