あなたのご冥福を心より
二十回目の春を迎えたよ。そんな僕は、繁華街に来てたんだ。友達とここで待ち合わせをしてるんだけど、どうやら遅れてくるみたい。参っちゃうな。
あたりを見渡すと、見たことのある人が立ってたんだ。
だから僕は、勇気を出して声をかけてみた。
「もしかして、会ったことありますか」って。
彼女は答えたよ。
「ない」
そんなのありかよ、って思った。
「人違いだったらすみません、でも似てて」
敬語を注意される気がした。
「なにナンパ」
僕にそのつもりは無かったんだけど、傍から見ればそうだった。
「私ね、最近、彼氏と別れたの」
急すぎて、何を返していいのか分からなかった。
でも僕はこれを聞いてしまったら、止まらない時計がある学校を思い出した。
もし僕の予想が正しければ、その彼氏を僕は知ってるのかもしれない。
見たこともないのに、羨ましくて、どこか懐かしい人。
そしたらこの出会いの意味は――とか考えてたら、彼女はまた口を開いた。
「どこに連れて行ってくれるの」
反射的に、口が動いたんだ。
「ラウンドワン」
彼女は知っていたかのように、こう言ったね。
「私、音痴だから」
僕は願った。
この出会いが偶然でありますように。
今度は僕が、つかまえるよ。
これを読んでるってことは、あなたは死んでしまったんでしょうね。残念ながら私はそれを、悲しいとも思わなければ、悔しいとも思いません。バカだなって思うだけです。
あなたはバカな人でした。自分に与えられたものは全て受け入れて、それが本当だと思っていました。そんなこともないのに。
自らバカになっていってる人を私は初めて見ました。そんなあなたと過ごした私は、なんども救われるような気持ちになれました。私は全然ばかじゃないって。
あなたは活動量が足りないだけです。美味しいものを食べて、運動をして、外に出れば、それだけで良かったのです。物思いにふけっていても世界は何も変わりません。
私に本当のバカを教えてくれてありがとう、私に付き合ってくれてありがとう。
あなたと過ごした時間、私は幸せでした。
あなたのご冥福を心よりバカにします。




