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パパの過去が凄かった 〜地と天、大いなる天〜


 パパが珍しく電話をしていた。


「絶対にお断りだ。俺はもうそっちからは足を抜いたんだ」

 と言って、ガチャ切り。


 足を抜いた……? なんか怪しそうな単語が。


「みみ?」

 なんの電話だったの?


 ぽふんっ、と毛玉ケサランパサランになったパパに聞く。

 パパは不機嫌そうな顔だったけど、わたしに頬ずりしながら答えてくれた。


「みみ」

 元マネージャーだ。

「み?」

 マネージャー?

 学生時代、運動部にでも所属していたのだろうか。


「みみみ」

 俺がアイドルだった頃のマネージャーだ。

「みーっ!? みみっ!?」

 アイドル!? パパ、アイドルだったの!?

 なにこの衝撃的な新事実。


 あ、これからパパの回想に入りまーす。






 ***


 もふもふ界屈指のもふもふにして、魔界屈指の美男子だったパパ。実は、三十年ぐらい前に、人間の芸能界に彗星の如く現れた伝説のアイドルでもあったのだ……!



 元々、魔界に住んでいたパパ。長年勤めた仕事をクビになり、思い切って人間界へ。


 当時、まだ人間達は神や天使、悪魔などの実在を知ったばかり。でも少しずつ、人外の存在を受け入れつつあった。


 瑞穂(この世界でいう日本)の繁華街をふらりと歩きながら職探しをしていたパパ。そこに近付く、黒スーツの男。


「君! かっこいいね! 芸能界に興味ない?」

「ゲイノーカイ?」


 パパは押しの強いスカウトマンに負け、コーヒーを奢ってもらう代わりに話を聞くことに。


「名前は?」

「グレイヴェル」

 パパの名前、初出です。


「外国人かな?」

「外国……? 生まれは天界」

「あ、天使!?」

「いや。どちらかと言うと悪魔……」


 そこから話はずれ、天界と魔界の芸能界について、パパが話すことに。


「天界で最も人気の歌姫は、音楽の女神アイエアの娘、歌の女神スース。魔界では、元サキュバスのリリィベルが人気のタレント」

「サキュバス!? 妖艶なイメージだなぁ」


「サキュバス=性的魅力を持つというわけではない。確かにサキュバスの長はグラマラスで妖艶な美女だが、可愛い系やクール系、熟女からロリまで揃ってる」

「マジか。一度お目にかかってみたいな……」


 なんか、更にずれたけど。


「ありがとう! いいインスピレーションを受けたよ! また天界や魔界の話、聞かせてね!」


 スカウトはなぁなぁになって、いいお茶飲み友達になっちゃったけど。






 だがその後も仕事が決まらないパパ……。


 当時の魔界には履歴書や学歴なんて概念はなかったそう。

 というかそもそも、人間社会で「悪魔です」と言って仕事探しをすること自体が、無謀な時代。


 そんな時、パパが住んでいたボロアパートに突撃して来たのは、戦神ダイド。


「仕事がない……」

「マジで? 魔界の白い悪魔も形無しだね」


 魔界の白い悪魔とは、パパの昔の異名。見た目は愛くるしいもふもふ。だがその中身は、上司も部下も問わず仕事しない奴は火炙りの刑に処す、冷酷非道な悪魔の中の悪魔。

 ちなみに、パパはサボって人間の女の子をナンパしていた最高神をタコ殴りにした後、ハゲになる魔法をかけてクビになったらしい。


 というか、ことごとく就活に失敗するの、そのせいなんじゃ……。


「あれ? この名刺なに?」

「あ、それは……」

 ちゃぶ台に突っ伏していたパパ、ダイドさんに名刺の主――例のスカウトマンの話をする。


「あ!! 僕、いいこと思いついちゃった!!」

 顔を輝かせるダイドさんに、パパはものすごーく嫌な予感がした。


「悪魔が人間に混ざって芸能人になって有名になれば、人間が持つ人外への差別意識も少なくなるんじゃないかな?」

 この時代、まだまだ人間と人外の関係性はぎこちない。差別もよくあった。


 ダイドもたまにはいいことを言うな……と思った時が、パパにもありました。


「じゃあ、僕と一緒にアイドルユニットを組もう! グループ名どうする!?」

「は?」






 そんなこんなで、パパはダイドさんと共に、男性アイドルユニット、『グランドスカイ』のヴェルとダイとして、一時期、アイドルをしていたらしい。


 当時、人外の芸能人自体が人間社会では珍しかったこと、天使――実際は神――と悪魔の二人組が(仲悪そうな)イメージと違って意外性があっておもしろかったこと、二人のルックスが人間とは桁違いだったことなどから人気に火が付き、大ブレイク。

 グランドスカイはダイドさんの思惑通り、人間とそれ以外の種族との間にあった隔たりを取り払い、人外の人間社会進出に大いに貢献したのだった。


 だがグランドスカイは人気絶頂の中、突然の解散&引退。活動期間はたったの六年。今では伝説となっている。

 ……らしい!!





 ***


 話を今に戻して。


  パパに電話をかけてきたのは、例のスカウトマンの弟で、パパとダイドさんのアイドル時代のマネージャーさん。


「みみみみ」

 あの伝説のアイドル、グランドスカイの今! って企画をやりたい番組があったらしい。

「みー。みみ」

 いいじゃん。出てあげればよかったのに。

「み。みみみ」

 面倒臭い。あと、可愛い真白が全国放送に出たら、誘拐犯がやって来る。


「みみ……?」

 なんでわたしも出ることになってるの?

「みみみ」

 そりゃ、いつの間にかに俺が子持ちになってたら、娘も出せって言ってくるに決まってるだろ。


「み?」

 そういうもん?

「み」

 そういうもん。


 つまり、芸能人もその家族も大変ってこと?

 でも、テレビに出てたアイドル時代のパパ(と、ついでにダイドさん)……。ちょっと気になるなぁ。


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