クリスマスの裏側
今日は十二月二十五日、クリスマス!
この世界にもクリスマスがあるんだ! と驚いたけど、どうやら聖人の誕生日ではなく、最高神がこの世界にやって来た日らしい。
ただ、由来は違えど、サンタさんはやって来るらしい。テレビでやってた。
まぁ、どうせパパなんだろうけど。でもプレゼントを貰えるだけ嬉しい。わくわく。
パパ手作りのチキンとクリスマスケーキ(どちらも隠し味はおしろい)を食べた後。
「ほら、真白。クリスマスプレゼントだぞ」
と、パパは直接くれた。
もしかして、サンタさんは来ない? もしくは、サンタさんのプレゼントとパパからのプレゼントを別々に渡すパターン?
後者の方がいいなぁ。プレゼントが二つになるから!
プレゼントの中身は、大きなイルカのぬいぐるみ。わたしの四倍の大きさ。
「みみっ!」
パパ、ありがとう!
飛び跳ねるわたし。さっそくイルカさんの上に乗って遊ぶ。わーい。
その後、ご機嫌なまま、わたしはパパと一緒にお風呂に入り、同じベッドでおねんね。すよ……。
「×××××」
「×××××××××」
なんか聞こえる……。
あれ? パパは?
ぱちっと目を開けると、わたしを抱っこしてくれていたはずのパパがいない。
毛布の中から出ると、パパがいた。ベッドから降りて、仁王立ち。
「いいからもうさっさと帰れ。お前に見せるものなんてなにもない」
パパのツンツンした声。パパの向かいに、誰かいる。
「あ」
「み」
その人と目が合った。
「はじめまして〜、お嬢ちゃん〜」
ひらひらとわたしに向かって手を振って来たのは、赤い衣装に身を包んだ――……若いサンタさん?
金髪に金の瞳。この人もかなりのイケメンさん。パパが月なら、こちらは太陽。人懐っこい笑みを浮かべた姿は、すごくモテそう。
「真白が起きた」
パパがサンタさん(仮)を睨んだ。長いから、仮タさんにしよう。
「みみ?」
だぁれ?
「真白ちゃんだっけ? 可愛いねー。まさに、名は体を表すって感じ?」
なんか軽い。
「僕はダイド。君のサンタさんさ」
投げキッスまでしてきた。瞬間、パパに殴られたけど。
「真白だけのサンタさんではないだろ」
「まぁね」
てへぺろ、と舌を出すダイドさん。
白い大きな袋の中から、青いリボンが結ばれた白い包みを取り出す。
「はい、真白ちゃん。メリークリスマス」
「みみっ」
ありがとう!
プレゼントだ! やっぱりサンタさんだったのか。この世界のサンタさんはおじいさんじゃないんだね。テレビのイメージ映像では普通におじいさんだったけど。
「じゃあ僕、次の子にプレゼントを届けないとだから、もう行くね」
ガラッと窓を開けたダイドさん。足をかけてから、こちらを振り向いた。
「また来るね! 真白ちゃん!」
「来るな!」
パパが殴る前に、ダイドさんはひらりと外へ。ここ、二階なのに。
その数秒後、二頭の黄金の馬が引くソリに乗ったダイドさんが、空高く飛んで行った。
…………馬、空飛べるんだ。
***
二十六日の朝。
さっそく、サンタのダイドさんからもらったプレゼントを開けたわたし。
「みみっ」
なにこの丸いの。
謎の丸い道具……? その周りを飛びながら見渡すわたしの横で、パパが箱の片隅にあった紙を開く。説明書だった。
「! お家でプラネタリウムが見られるらしい」
プラネタリウム!? そんな道具があったの?
「プラネタリウム……わかるか? 外じゃなくても星が見えるやつで……」
パパが空中でろくろを回しながら教えてくれる。
実際には知ってるんだけどね。でも、パパはわたしがただの赤ちゃんだと思ってるから……。
その後、パパは別のことも教えてくれた。
「クリスマスに子供が貰えるプレゼントは元々、神々からの祝福だった。最高神が誕生日だからと大盤振る舞いをする感じで」
神様も太っ腹なのね。自分の記念日? なのに。
「だが時代の流れによって、神からの祝福はそれほどいいものなのか? という考えになった。人間達が多くの玩具や便利な道具を発明していったからな。祝福よりも、そついったものをタダで貰った方が嬉しい、と」
そもそも、神からの祝福ってなんだろう。なにかの特殊能力が使える的なやつ? でも、それならその気になれば手に入る物より祝福の方が欲しい気がするから、違うのかな……。
「それから、神々は人間社会から玩具などを仕入れ、タダで子供達に届けることにした。クリスマスの妖精、サンタクロースからの贈り物、と銘打って」
銘打つとか言うな。
「まぁ、一人が一晩で大量のプレゼントを沢山の子供に配れるわけがない。実際には、神々と天界、魔界の政府職員が総出で配っている」
天界は、神と、彼らに仕える天使がいる。
魔界は、悪魔や、神に逆らったりして堕天してしまった堕天使がいる。
あとこの世界には、わたし達が今、人間と共存している人間界と、死後の国である冥界があるらしい。
「昨日来たいけすかないサンタ……奴はあれでも一応、最高神の息子にして戦を司る神、ダイド。あんな感じで、運が良ければ神がプレゼントを置きに来てくれることもある。ついでに、気に入った子供に祝福もかけて」
パパは何故か、わたしの頭上でなにかを払うように手を動かす。
ていうか、神様ぁ!? かなりパパにぞんざいに扱われてたけど!?
あと、なんか軽薄というか……。全然神様って感じがしなかった。むしろ、あの黄金の馬の方が神々しかったような……?