我が家の食事に欠かせないアレ
我が家は、わたしとパパの二人暮らし。つまり、父子家庭。家事もパパがやる。勿論、料理も。
「あっ……」
リビングから見えるキッチンに立つパパが、声を上げた。
「みみっ」
どうしたの?
わたしは、ぴょんぴょん跳んでパパの方へ。
キッチンカウンターに乗ると、ちょうど料理風景が見える。
台には、二つの大きな容器と、白い液体で満たされた哺乳瓶が。
どう見てもわたしのご飯ですね、はい。もうすぐ夕食時なので。
「…………逆にした気がする……」
パパは硬い表情で言った。
「み?」
なにを?
「粉ミルクと隠し味」
パパは二つの容器の蓋を開ける。中身はどちらも白い粉。
「みっ?」
なにこれ。
わたしは台の上に移動すると、容器の前にまわってラベルを見る。
右にあるのは、粉ミルク。
左にあるのは、おしろい。
「みみみっ!?」
おしろいって!? そんな調味料あんの!?
「おしろいを大量に溶かして、中に少量のミルクを入れた気がする……」
「みーっ!」
だから、おしろいってなに!?
どう考えても化粧品だよね? なんで化粧品入れてんの? わたしが生まれてから、ずっと入れてたの!?
「…………まぁいいか。美味いし」
「みみーっ!」
美味いわけあるか!
だが、悲しきかな。パパはいまいちわたしの言葉を理解してくれない。「み」しか言えないわたしも悪いが……。
パパは自分の夕食をオーブンから取り出す。
あ、グラタン? 美味しそう! ……わたしは食べられないけど。
パパはしっかりラベルをチェックした後、おしろいの方にスプーンを突っ込む。そして、焼きたてのグラタンへ、オン。
そこでようやく、わたしは今までのパパの食事を思い出した。
毎日、毎食、白米にも、おかずにも、サラダにも、味噌汁やスープにも、パパは白い粉を大量にかけていた。まるでそれが、ふりかけやマヨネーズ、ケチャップにドレッシングなどと言わんばかりに。
なんだろう、これ。と思っていたけど、他人の嗜好にケチを付けるのはあれだし。そもそも「み」しか言えないから聞けないし。
なのに、まさか、まさかそれが、おしろいだったなんて……!!
その後、わたしはパパの手によって哺乳瓶に入ったミルク……いや、おしろいを溶かした液体を飲ませられた。
「…………みみみ……」
…………意外とイケるな……。
いや、ダメだ! 新しい扉を開いては! これは(多分)化粧品で、食べ物じゃないから!!
…………おしろいって、食べたらお腹痛くなったりしない?
結果、大丈夫でした。何日経っても元気いっぱい。なんなら、パパは毎日、隠し味におしろいをぶっ込んでる。
いいの……かなぁ……?
まぁ、わたしは人間じゃないし。パパも多分人間じゃないだろうし。問題ないよね。そうしておこう。うん!
ところで、おしろいは食べ物ではないので、みんなは口にしないように!