ケサランパサランのランランちゃん
「じゃじゃーん! 見てくださいなぁ」
マッチョパイセンことテビロアさん(本名はテビロス)が我が家に持って来たのは……ケサランパサラン!?
白いふわふわの毛皮。きゅるんとしたおめめ。小さなお口。わたしによく似た(注:この世界のケサランパサランはほぼほぼ同じ顔)可憐なルックス!
十四話目にして、わたしのライバルの登場か!? と身構えてしまった。
「なんだそれ? 真白のぬいぐるみか? 肖像権はどこいった」
ぬいぐるみ?
よく見ると、生きてなかった。ただのぬいぐるみだった。恥ずかしい……。穴はどこ?
「違いますわぁ。この子は今、魔界で大人気のキャラクター、ケサランパサランのランランですわぁ」
「そんなのが流行ってるのか」
パパもわたしも、目から鱗。
「小さな子供から可愛いもの好きの大人まで! なんなら、そういうものには興味がなさそうな魔王城の幹部達にも大人気なんですのよぉ」
「アイツらまで?」
パパは胡乱げな目をして、腕を組む。
「ケサランパサランなんてチビで弱っちい、下等生物以下のゴミだって言ってたのに?」
「そうですね……。それでヴェル閣下にボコボコにされたんですよね」
うぉっ!? 急にテビロアさんの声が低くなった。これは見た目通りのゴリゴリマッチョ、テビロス先輩なんだが。
「取り繕わずにハッキリ言いますと、ヴェル閣下にボコられてからは、ケサランパサラン最凶説が魔王城で流れ、ケサランパサランは大悪魔の中でも特に恐れられる存在になりました」
なにその説。ていうか、過去のパパっていつも誰かをボコってない?
「しかし、そんな中に現れた純粋無垢で可憐なケサランパサラン、ランランちゃんはまるで天使のようにも見え……魔王城幹部間で爆発的なムーブになりました」
パパはそんな経緯を鼻で笑い飛ばした。
「テメェらが喧嘩を売って来たから、親切な俺が買ってやっただけだろう。……というか、俺の方がランランより一万倍可愛い」
一番最後が一番の本音だよね?
パパは意外と(?)かっこいいよりも、可愛いと言われる方が好きみたい。かっこいい芸能人やキャラクターには見向きもしないが、巷で可愛いと人気のアイドル、女優やキャラクターを見ては、「俺の方が可愛い」と文句を言う。
「まぁ、真白は一兆倍可愛いが」
これも、更にその後につく。
「アタシもヴェル閣下の可愛さは異次元だと思いますわぁ」
テビロアさんにヨイショされて、パパはご満悦。
「でも、真白ちゃんのお友達にいいかと思って持って来ましたのぉ。ケサランパサラン自体は稀少ですからぁ、同じ年代の子ってなかなかいませんわよねぇ?」
「確かにな。その上、ほとんどのケサランパサランは短命だし」
そうなの?
「ただの埃や動物の抜け毛だと思われて処分されたり、踏み潰される事件が今も絶えませんものねぇ」
そんなことがあるの……? それにしてはサイズが大きいと思うけど。でも、外に出る時は気を付けよう。
「俺も幼い頃、ダイドの戦車に轢かれかけた。まぁ、ムカついたから戦車の方をゴミにしてやったんだが」
だからなんでそんなに昔のパパは攻撃的だったの?
勿論、轢こうとする方が悪いけど……。でも、悪気のない事故だったはず!
「ちなみに、ランランには、お父さんのランパと、お母さんのランマ、お兄ちゃんのラン兄とお姉ちゃんのラン姉がいますのよぅ」
パパ、無言でランランを受け取った。
家族構成、うちと一緒だもんね。ただ、うちはママとお兄ちゃんとお姉ちゃんが死んでるけど。
「……一人じゃ可哀想だから、今度、パラン達も連れて来いよ」
「パランではなく、ランパですわぁ」
ランランはピンクのリボンを頭につけていた。いいなぁ、可愛いなぁ。
あと、ランランは長いから、ララちゃんって呼ぼ。