おうち探検隊 〜ただしメンバーは一人〜
ひまー。
窓の前で日向ぼっこ中のわたし。暇すぎて、床に突っ伏。
毎度言うが、手も足もないようなものなので、自分一人(一匹?)じゃあ、なにも出来ない。遊べない。世の中のケサランパサランの赤ちゃんは、なにをして暇を潰しているのだろうか。
だがわたしは立ち上がった。
そうだ、お家を探検しよう!
灯台下暗しという言葉を知っているだろうか。まさしくその通りだった。
移動手段はジャンプか、パパの抱っこなわたし。身体の小ささも相まって、行動範囲はものすごく狭い。この家の中すら、全てを把握しているわけではないことに気が付いた。
パパは今、お風呂掃除中。その間にわたしは、家の中を隅から隅まで回ることにした。
まずは一階があるリビング。リビング、ダイニングは一緒で、キッチンと繋がっている。ここだけでもわたしにとっては、公園より大きい。倍どころじゃなく。
なんせ、大人の両手にちょうど乗るサイズなもので。
リビングは毎日いるところ。一日のほとんどの時間をリビングで過ごしているので、探検するほどのことでもない。
あ、ドアは勿論、家も人間サイズ。普通のドアは開けられない。ドアノブには届かないし、そもそも重い。
ペット用の小さな出入り口、あるでしょ。それが各部屋に付いているので、わたしはそれを使用する。
体当たりするだけで開くから、便利。力加減を間違えると、顔面が痛いけど。
廊下に出ることなく入れる隣の部屋は、和室。ここには毎朝入る。仏壇があるから。
三匹の毛玉の遺影がある。病気で亡くなったらしいママとお兄ちゃんと、事故で亡くなったというお姉ちゃん。
ついでに手を合わせ……られないので、目を瞑って挨拶をするだけ。
ちなみに、この和室には他にも、ママ達の遺品がしまってあるらしい。でも、下手に触るとパパが嫌かと思い、すぐに和室を出た。
リビングを経由して廊下に出る。玄関を通り過ぎ、ぴょんぴょん移動。お風呂場からは、シャワーの音が聞こえた。
一階にはもう一つ部屋がある。お客さんが寝泊まりする用のお部屋。使っているのは基本的にダイドさんだけだけど。
でもわたしは、ダイドさんがいる時は入っちゃダメって、パパに言われてる。ダイドさんとは個室で二人きりにならないように、とも。一歳児相手になにかあるわけないのに……。…………多分。
今日は中をチラッと覗き見て、すぐに出た。特に面白みはなさそう。
階段を目の前に、ようやくわたしは気が付いた。
登れない……。
自分の身長と変わらない高さを跳べるか? わたしは跳べない。むり。わたしのジャンプ力も限界がある。
そもそも運動は苦手だから、ジャンプ力もない方なのに。
階段の下で項垂れる(首ってどこ? ってなるけど)。
すると、後ろから大きな手で持ち上げられた。
パパだ!
「二階に行きたいのか?」
「みっ! みみ?」
パパぁ! お風呂掃除終わったの?
パパに抱っこされて、頭を撫でられたら、冒険はもうどうでもよくなってしまった。
今日はもう疲れたし、お休みしよう。冒険は、また今度。
「十時のおやつにするか」
「みーっ!」
するする!
今日のおやつ、なにかな? わくわく。
パパに抱っこされたわたしは、そのままリビングへと戻って行ったのだった。