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さまよう少年
怯えた目の少年。
バイト先の閉店準備で外へ出ると、軒下に座り込んだ人影があった。
あどけない顔立ち。いかにも部屋着とわかる格好。靴も履いていない。
親に反発でもして、家を飛び出して来たのだろう。
「中に入りなよ。寒いだろう」
店長には後から話せばいいだろう。俺は然したる考えもなしに彼を招き入れようとした。
「いえ、大丈夫です」
声変わり間もない掠れた声を残して、少年は薄闇の向こうへ走り去ってしまった。
眼差しが、俺を拒んでいた。
大人が嫌いだった。
私はわかっている、お前はまだ何も知らないんだ。
嘘つき。
幼いがゆえのつたない言葉を、冷たい理屈で打ち負かした。
わかってほしいのは言葉じゃなくて、その奥にある気持ちのほうなのに。
少年は俺だった。彼の目に映っていたのは嫌いな大人だった。
俺にはわかったけれど、多分わかってはいない。
少年は、あれから自分の場所に帰れただろうか。それとも俺のように、未ださまよい続けているのだろうか。