怪物
恋とは呪いのようなもの。
中学に上がり、同じクラスの君と出会った時、僕の人生に光が差した。
初めての感覚だった。自分でもコントロールできない熱い想いが四六時中、身体の中を駆け巡っていた。
君にとっての僕は、たまに言葉を交わすクラスメイトでしかなかったのだろう。平静を装っていた僕だけど、内心は断崖絶壁に吊るされている気分だった。
僕を宙吊りにしている、悪戯な天使の微笑みと引き換えに。
二年目でクラス替えがあった。君とは離れ離れになり、姿を見かけることすら稀になった。それでも君は僕の心の最も深い場所を占領し続けていた。
学年だけでなく校内でも噂の存在らしいと、今さらながらに知った。大学生の恋人がいたとか、今は誰と付き合っているとか。
確かにショックだったけれど、改めて自分に問いかけてみて、君への想いが少しも揺らいでいないことを思い知った。
一方的な想いを募らせたまま、月日だけが過ぎていった。
巣立ちの日、まだ肌寒さの残る初春の昼時。
式が終わり、あとは帰宅するだけになった。
心残りを秘めたままの僕は家族と別れ、あてどなく校舎の周りをうろついていた。
自転車小屋の柱にもたれかかる、笑顔の君を見つけた。隣には噂のお相手が、同じく笑顔で寄り添っていた。
恋とは呪いのようなもの。
眠ったままのお姫様。怪物に変えられた王子様。彼らは「叶った」人たちだ。
叶わなかった恋は、解けることのない呪いのように、今も僕を蝕んでいる。