血を啜れ!
「うみゃ〜」
こちらヴァンパイア、現在上半身だけを棺桶から出し血を啜っております。うみゃすぎ、これすきすき。
7日間(多分)何も飲まず食わずだったのと私がヴァンパイアになったおかげでこの血が本当に美味しい。力はみなぎるし傷は治るし最高!今なら棺桶のひとつやふたつ、ワンパンで壊しちゃうね
さて、なぜ私が半分棺桶に入ってグテ〜っとしているかと言うと、外に出られないからである。
正確にはこの聖堂のお外に出られないのです。
何しろ私ヴァンパイア、試しに外に出ようとしたら太陽Sunの光でこのかわい子ちゃんのお肌が焦げちゃいましたのよ。
まぁーありえないありえない。神はなぜそんな陵辱趣味を持ったのでしょう。
不思議だわー。
かと言って永遠にこの聖堂から出ないのはお断りしたい私は耐性をつけることにしましたー。(あるかわからんけど
さて、もう次で試行回数10回目。もしスキル制の異世界なら世界の声っぽいのが「日光耐性を獲得しました」的なのを言ってくれるはず、、、
私は血に濡れた足でピタピタ音をたてながら入口までやってきた。
上手くいってくれよー、えいっ
私は目をつぶって聖堂のドアの隙間から手を出す、すると...
ジュジュジュ...
「うわぁーいたいいたい...気がする」
一応言っておくが私に痛覚はない。
私はギリギリ骨が見えないくらいになって手を戻した
ううむ、結局何も起きなかった。
この世界はスキル制じゃないってことか?
それとも単純に回数が足りなかったとか。
それから同じように血を啜って焼ける、血を啜って焼けるをに100回くらい繰り返した、が何も起きず...
またしても私は血を啜っていた。
「うみゃ〜」
『スキル暴飲を獲得しました』
「ゔへっ!?ゲホッケホッ」
不意打ちで頭の中に響いた声にむせつつ私は冷静に「なんか色々と遅せぇよ」と突っ込みつつ更に血を啜った。
「スキル制きたー、やったー、うみゃ〜(ジュルジュル)」
私の知る限り異世界転生系の小説ではスキル制の方が強くなれる、何より私は魔法がまだ使えないようなのでスキルがないと詰んじゃうかもしれないのだ。ヤッタネ
え?なんで魔法が使えないって分かるのかって?
そりゃ色々と試したからよ、ファイアボールからかめ○め波まで一通りやったけどついには飛ぶことすら出来なかったわ。
あーあこれは一体なんのための羽なんだか。
「ジュルジュル......ぷはぁ」
さあいっぱい飲んで火傷も治ったし、やる事やりますかー
まずはさっきゲットした暴飲のスキル、これを調べていこう。
「スキル暴飲、発動ー!」
すると、なんということでしょう、喉が乾くじゃありませんか。はぁーつっかえ
「ジュルジュル」
まあ、ある程度予想はしてたけど見方によっちゃデバフだかんねこれ。
「ジュルジュル」
どうやら飲み物を蓄えておくとか飲んでパワーアップとかは無いらしい。仮にも七大罪をカスってるネーミングなんだからもう少し有用でも良くなくって?暴飲さん
「ジュルジュルジュル...ぷはぁ」
...飲むスピードめっちゃ早くなってる。間違いない。そして私やらかしましたorz。棺桶の周り血飲み干しちゃった、てへっ☆
死体の血はほとんどが乾ききっていて期待できそうにない。
「私のご飯これからどうしましょ、この調子じゃあと半日もしないうちに全部呑んじゃうからなー」
そうなのですよ。私、ヴァンパイアだから食事は血なんだけどもう血が足りなくなっちゃってる!主にさっきのスキルのせいで...トホホ。...ん、あれは?
「なんだろうこれ」
血が無くなって棺桶の下の床に露になったのは取っ手のようなものだった。
「早速オープンひょいっとな」
ズビョーン!ガシャン!ドゴーン
すまない名も知らぬ建築士よ、君の建てたものを少しだけ壊してしまったようだ。
「階段?」
隠し扉から現れた階段はずっと深い地下に続いているみたいで私の目じゃ奥まで見えない。でもヴァンパイアの目がいいのかざっと20メートルは見えるけどね。それより深いってよく考えたらすごいなこれ、なんだかワクワクしてくるじゃん!
「早速ぅ〜らっつれごー」
コッコッコッ
...
階段を降りると地下室に着いた、だいたいこの階段は地下25メートルくらいまで続いていたみたいで妙に圧迫感がある。
「何かの部屋?」
鍵はなく部屋の中からうっすらとあかりが漏れているのが分かる。
「おーい誰かいますかー」
返事がない、ただのあき部屋のようだ
「入りますよー、、失礼しまーす」
部屋は9平方メートルくらいの狭さで東西南北どこを見ても本棚になっている。恐らくここは教会勢力の秘密の書斎で危ない本が沢山保管されてるんだろう!わくわく!部屋の中心には小さな机と丸椅子があって天井から下がる飛行石(仮)の光が淡く照らしている。
することも無いのでそこら中にある本でも読むことにした私はこの世界の文字が読めない事を忘れていたらしい。
「...全然読めない.....けど?これはなんとまぁ日本語?!」
本を適当に漁っていた私が見つけたのは日本語で書かれた本だった。題は
「この異世界について、ね」
よくよく本を漁っていくと他にもドイツ語とかロシア語とか、あ、英語もある。
「へーこれを全部1人で」
私の知ってる言語の本の裏表紙には異世界語で同じサインが書かれていた。本の内容はーパラパラーっと、んん?
「今の私には必要ないな」
だって書かれてる内容がこの世界の通貨のレートとか世界情勢とかなんだもん。魔法の使い方とか種族特性とか書いとけよ!
「はーつっかえ」
さ、また何か探しますか。
どれどれー異世界語、異世界語、.......異世界語、ロシア語、異世界語、ロシア語、異世界語、日本語ー英語
「あった!って、え!?隠し扉ー!?」
日本語の本を取ろうとすると本の中心が回転し隠し扉ではなく古びたドレッサーが出てきた。
ドレッサーのひび割れた鏡に映ったのは...
長い銀髪に
白い肌、
血のように赤い真紅と
透き通るようなブルーサファイアのオッドアイ。そして
「ニコッてしてみたりー」
なんだか色気ムンムンな犬歯!
「くっーっ!最高だろ私!限界を知らない可愛さッ」
私を見るだけで世の男共はご飯三杯はいけるんじゃないか?
「今にもかぶりつきたくなる...グヘヘヘ、パクッと」
あまりにも美味しそうだったので思わずかぶりついちゃったり『スキル吸血を獲得しました』へ!?
ジュルジュル
私が意図せずに勝手に血を吸っていく。
てか吸血鬼なのに最初から吸血を持ってなかったとはこれいかに
ジュパッ
ん〜美味しかった!エルフの女性には悪いけど私の血、あなたの血より美味しい!いや〜エルフさんの血も美味しいけどね、ブラッドソムリエの私が見るにエルフさんの血は星5中星5。私のは星6ってとこかな!
『スキル悪食を獲得しました』
悪食?何を言う、私は悪じゃないぞ!むしろ聖女、いや羽もあるし天使!美しさだけで言えば女神まであるね。だからスキル名は女神食い...は、やめておこう、
ふぅ、危ない危ない。
私は口についた血を手で拭うとその手で鏡に映る美しい少女に触れた。
「やはりふつくしい…」
その時、割れた鏡の上に何やら文字が浮かび出した。
何となく文字の配置からステータス的なものが書かれてるんだと思う。そう考えるとここは私の名前でその下が、これ全部スキルかよ!すげー異世界転生様々だな。美少女でこんなにスキル持ってたらもう無敵じゃん。
でも私鑑定とかできないしその前に異世界語分かんないんだよなー。うーんどうしよう
「むむむ」
カッカッカッ
私が鏡の文字を見て唸っているとふと、階段の方から足音が段々と響いてきた。
カッカッカッカッ
足音は段々と早くこちらに近づいてくる。
カッカッカッ...ガチャ
私は少し身構えて
「どちら様...ですか?」
「やっと...やっどぉっ!ック、神よありがとう...ありがッ...と...う」
入ってきた長髪のイケおじは私を見ると駆け寄って抱きつき、泣きじゃくり、そして膝をおって気を失った。
ええ〜〜誰おま