無限の力とエンゲージにゃ
マドカの変身した姿はこちらです(外部サイト)
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マネーファイト。
まるで以前から知っていたかのように、口から飛び出した言葉。
これも、エンドラゴンから影響を受けているからなのかな。
そんな疑問を頭に浮かべた瞬間、デバイスとセットしたガントレットから光が迸る。
白く輝くラメ入りの塗料みたいなものは、左腕を伝ってどんどん身体を包み込んでいき、一瞬にして首元まで達してしまった。
「うぉぉい!! 何が起こってるのにゃ!? 服が消えて真っ白になったにゃす!!」
『いいから黙って見ているガネ。 ゼニャハハ!!』
黙ってなどいられるものか。
今、この瞬間だって、あのカメラに写されているのだぞ。
白一色とはいえ、ボディライン丸見えのヘンタイみたいなこの恰好。
このクソトカゲは、乙女の身体をなんだと思っているんだ……!!
「んにゃ!? ニャんか出て来たにゃ!!」
あのモンスターが現れたの同じように、データのようなものが身体へ集積していく。
なるほど、いわゆる魔法少女のように変身するというわけね。
子供の頃にテレビで見ていたのと同じパターンだ。
これから可愛いフリフリのドレスを着ちゃうんだろうな。
魔法なんかも使えちゃったりして。
流石にそれで喜ぶ歳じゃないけれど、童心に帰れると思うと少し心が躍った。
『何勘違いしてるガネ? お前の思い描くような代物じゃぁ客は付かないガネ! もっともっと儲けを狙うなら過激に素敵に思いきるガネ!! ゼーニャハハハ!!』
ちょっと期待で高揚していた顔が、急に引きつるのを感じる。
このクソトカゲはまた余計なことをしでかすつもりなのか。
「やっぱり、止めにゃ! ストップ、ストォォォォップにゃぁぁぁ!!」
渾身の叫びも虚しく響き、無情にも変身は止まらない。
身体にデータが集まり切ったのか、一際眩く発光して目が眩む。
目を瞑る前に、辛うじて前方を確認できた。
モンスターもこの光で怯み、一時足を止めたようである。
「ど、どうニャったのにゃ……?」
恐る恐ると両目を開いた。
最初に目に入ったのは、思わず頭を庇うように上げていた両腕。
左腕はガントレットのままだ。
だが、右腕にも似たようなガントレットを装着していた。
それだけではない、二の腕から肩、そして胸元へと目を滑らせると、全身タイツのようなピッチリしたスーツを身に着けていたのだ。
招き猫のような柄で誤魔化しているが、あまりにも変態な衣装。
このクソトカゲの趣向は、いくらなんでもエロオヤジ過ぎる。
こんなもの今時は身体を張った芸人だってなかなか着ないだろう。
ましてや、うら若い女子に着せていい物ではない。
「ギニャァァ!! なんなんニャこのエロい恰好は!?」
結局ボディラインが丸見えなのは、先程と何も変わっていないのだ。
咄嗟に両腕で、胸や股を隠して蹲る。
『バッカもん! 何してるガネ!? そんなことじゃ、視聴者は喜ばないことも分からないカネ? 恥ずかしい思いをしようが、稼ぐためなら手段は択ばずと教えたばかりじゃないカネ!!』
「どアホー!! バカはどっちにゃ!! こんな恰好で動けるわけニャいにゃろが!!」
色が違うだけでほぼ裸も同然。
水着の方がずっと健全な見た目だろう。
これで走り回ろうものなら、頭の心配をされるに決まっている。
『1000円の声¥札が投げられました』
『2000円の声¥札が投げられました』
そんなアタシのことも気にせず、頭の中にアナウンスの人の声が何度も連続して響く。
先程まで閑古鳥が鳴いていたのに、急に金が舞い始めたのだ。
『ゼニャハハ!! そうら、ヤツラはオレ様の意見にそうだそうだと賛同しとるガネ!』
「んにゃぁぁ!! エロトカゲにエロ視聴者どもめ、いい加減にしろにゃす!!」
そして金が振り込まれていくと、ピコピコと身体から音が鳴っていることに気が付いた。
左腕の二の腕、それと右脚の太ももの二カ所に目盛りのついたリングが発しているらしい。
「……なんニャこれ?」
どうも、高額な金が動くと増減の幅も大きいようだ。
赤かった目盛りが、今ではほぼ満タンになって青く光っている。
携帯の充電みたいなものだろうか。
『そいつは¥ゲージリングだガネ。 いい感じに金も溜まってきたようだし、戦闘に移るとするカネ。 そら、奴さんはもうその気みたいだガネ』
説明は結局無かったが、戦闘に関わる物なのだろうか。
ふと顔を上げると、脚を止めていたスカンピッグが再び突進してきていた。
今度は鬼気迫る表情である。
「どぉうわ! さっきよりも殺気がヤバェにゃす!?」
100円で駆け寄って来たのだから、数万も抱えている今は格好の餌食というわけだ。
何が声¥札だ。
応援どころか、逆にピンチを招いているではないか。
いくらこのスーツが招き猫の柄をしているからって、こんな不幸を呼ばなくてもいいのに。
目の前に迫る豚の牙。
怖くなって、頭を抱え丸くなる。
「もう避けられニャい…………んにゃ?」
ド派手な衝撃音が鳴り響き、土煙が高らかと舞った。
もう身体はバラバラになったのだろうか、おっかなびっくり目を開くと、驚いて目まで丸くなる。
蹲っていたため、まともに回避行動もとれなかった。
しかし、いざモンスターにぶつかっても、特に痛みを感じなかったのだ。
五体満足、アタシの身体はピンピンしている。
それどころか、ぶつかって来たスカンピッグは弾かれてひっくり返っていた。
『ゼニャハハ!! ドレスの着心地はどうだガネ! これが¥ドレス、金が生み出す無限の力だガネ!!』
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