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稼がニャいと死ぬにゃ

マドカのVR世界でのアバターはこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=126924

「……ハッ!! ここはどこにゃ?」


 記憶が飛んだように、目がチカチカ白く明滅している。

 黒一色の世界にいたからか光が目に優しくない。


 ようやく目が覚めたら、そこは今まで自分が見たことも無い世界が広がっていた。


 目の前一面にはどこまでも広がる草原。


 こんな人の営みを微塵も感じさせない殺風景な場所、どうやって連れて来たというのだろう。

 ヘリで拉致か、あるいはまだ悪夢の中なのか。


 あまりの非現実感に、ポカンと途方に暮れる。

 見るものなんて、揺れる青草しかないのだから仕方ないだろう。


「アタシはまだ夢を見ているのかにゃ?……っていうか、何なんにゃこの喋り方ッ!? バチクソきめーにゃす!!」


 媚びを売るようなわざとらしい猫語尾。

 一度も使ったことなど無いのに、何故か自然と口から出て来る。


 なんだこれは?

 身体を勝手に弄られたのだろうか。


 まだアタシは自分のままなの?

 アタシ……?


 だんだんと頭がハッキリとしてくると、自分の置かれた異常な状況に疑問が出て来る。


 そうだ。

 借金の取り立てで、VR世界に連れていくなどと黒服達は言っていたはずだ。


 ならば、ここはそのVR世界とやらなのだろうか。

 いったい何から何までどうなっているのやら。


 頭から吹き出す疑問符が形になったかのように、頭上から声が掛かる。


『おや。 円稼(マドカ)さん、もうキャラメイクまで済ませていましたか。 理解があるようで大変よろしいですね。 心なしか雰囲気も変化した気がします』


 キャラメイク?

 そんなものした覚えは無い。


 声につられて天を仰ぐ。

 そこにいたのは、黒い球体に一眼カメラと猫耳が付いた、謎の浮遊物体であった。


「なんにゃ!?」


『先程ぶりでしょう、もうお忘れですか?』


 この声、確かアタシに借金の話をした黒服の男のものだ。


 ということは、やはりアレは夢ではなかったのか。

 ならあのトカゲも……?


『このゲームに慣れているようですので、手短に説明いたします。 あなたをこのYen(世界)に送り出したのは、知っての通り現在もっとも大金が飛び交うゲームだからです』


「ふっざけんにゃよ!! 誰がそんニャもんに付き合う……え!? 大金が飛び交うにゃ!?」


 まったくご存じでないが、ここがそんな大金の行き交うゲームだったとは驚きだ。


 正直、運動ばかりやって来たのもあってゲームには疎かった。


『そうです、このカメラを通した配信を行う事で、視聴者から金が送られることがあります。 太い客を掴めればより大きな利益が手に入るでしょう』


「にょほほほ! にゃぁんだ、そんニャことなら借金返済なんて楽勝・楽勝・へのカッパにゃ!!」


 借金の件が夢ではなく現実だと分かった時は、どうなることかと思っていた。


 しかし、どうやらそんな心配もなさそうだ。


『いいえ、これはあくまで一般人の話です。 あなたの借金100億円なんて夢のまた夢、到底この方法では返せません』


「ちょ、おいこらぁ!! ぬか喜びさせてんじゃねぇにゃ!!」


『ご安心ください。 勿論、他に返済の方法があります。 我々が秘密裏に掴んだ情報によると、このゲームのセキュリティに一カ所だけ重大な脆弱性があるらしいとのことです』


 難しい言葉を並べるインテリだ。

 話が全然頭に入ってこない。


「で、そのゼージャクセーがあると何なんにゃ? もったいぶってニャいで、ガッポリ稼げる方法をさっさと教えろにゃす!」


 ともかく金だ。

 金が無ければ借金の返済もままならない。


『外部からは無敵のセキュリティのおかげで、世界トップシェアにまで登りつめたこのゲーム。 しかし、ゲーム内部からなら心臓部にアクセス出来る可能性が見つかったのですよ。 そこからならば、情報・金・()()()まで何でも自由に手に入ってしまうのです』


「人の、命までにゃ……!?」


 ただのゲームの話から突拍子もない所にまで跳んだ。

 急に話題が重くなり、思わずゴクリと息を呑む。


『ええ、今のあなたのように、フルダイブ機器へ接続したまま寝たきりの人はごまんをいますから。 介護では常識ですよ』


「うぉぉい!! 寝たきりってどういうことにゃ! いきなりヤベェ事実が明らかにニャってきてるんにゃが!?」


『言葉通りですよ。 あなたの借金があまりにも膨大なため、失踪されては困りますからね。 フルダイブ機器に接続させてロックしてあるのです。 点滴や身の回りの世話などは、あなたの所持金から支払われているので気を付けてください』


 つまりこの男がいうには、もはや死ぬことも許されない生き地獄に囚われたということだ。


 無為に生きることに甘えれば、一生、それこそお婆さんになろうともこの世界に縛られることとなる。


 恋もこれからの青春真っ只中な女子に対して、この仕打ちはあんまりではないだろうか。


「ギニャァァ!! そんニャもん許されるわけニャいにゃ! 訴えるにゃす! 弁護士を呼べにゃ!!」


『それは借金を返してからご自由に。 この通信が終了した後は24時間365日あなたの行動をカメラで配信しますので、そのお金で生命維持を止められないよう生活してください。 セキュリティの穴を見つけられたら借金はチャラ、あたなも晴れて自由になれますよ。 それでは』


「ちょ、待つにゃ!! まだ何にも分からないんにゃけどぉ!?」


 宙に浮くカメラから、無情にもプツリと通話を切る音が響く。


 大金の前に、まずは生活費を稼がないと現実の自分が死んでしまう。


「ブニャァ!! どうしろって言うのにゃぁぁぁ!!!」

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