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奴隷三号の三郷にゃ

マドカの私服はこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=126924


キヨのアバターはこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=104647


集円竜エンドラゴンの姿はコチラ(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123319

 目に一杯の涙を浮かべ、困り眉毛をこれでもかと引き絞る表情。

 加護欲を刺激される男性も多いに違いない。


 それに首元あたりで切り揃えられた長すぎない黒髪と、アタシにも負けず劣らずの身体つき。

 猫背で丸めているから気が付きにくいが、しっかりと出るところは出ているようだ。


 妙に舌ったらずなところは気になるし、一見するとかなり地味な見た目。

 だが、派手に着飾っているギャルよりも、刺さる男にはより深く刺さるだろう。


 特にこのような隙の多い子を放っておかない、手癖の悪い男に心当たりがある。


「やぁやぁ、お嬢さん! 何かお困りかな? 僕で良ければ相談に乗るよ! これでも結構名の通ったプレイヤーでね……」


 案の定、彼女を見るなり月兎(ゲット)は音速のような速さで駆け寄って行った。

 コイツまったく懲りてないな。


『まぁ、馬鹿は死んでも治らんガネ』


「珍しく、お前の意見に同意にゃ」


「ふごぅ」


 さしもの金に汚いエンドラゴン(クソトカゲ)ですら、月兎の女癖の悪さに引いたらしい。

 アタシもブタと一緒に軽蔑の目をくれてやった。


 もっとも、新たな恋の予感で盲目になっている盛りウサギ野郎にはノーダメージらしい。

 涙目の彼女の手を握り、身を寄せるように二人の世界を作っている。


「キュィっ!? あ、あの実は……以前所属していたギルドを追い出されちゃいまして……キヨはいらない子だったんでひゅ……」


「そんな!? キヨくんのような可愛い子を放り出すなんて信じられない!! 僕が同じギルドにいたなら、断固阻止していたね!! あ、僕の名前は足羽月兎(アスワゲット)です。 気軽にゲットと呼んでくれていいよ」


 この男の暑苦しい厚かましさは相変わらずだが、このまま放っておくと毒牙にかかりそうだ。

 女の子が可哀想だし、スケベ男の首根っこを掴んで引き剥がす。


「なんにゃ? 追い出されたから、今度は自分で立ち上げようってことかにゃ。 なら、その新しいギルで古巣に仕返しでもする気にゃす?」


「キュィィ!? と、とんでもないでひゅ!! キヨはそんな大それたこと考えたこともないでひゅよぅ! 『サルマネー』はとっても良い所でしたもの!」


 弱々しい見た目通り、なんとも意気地の無いやつだ。

 こんな弱腰では、一生舐められて騙されるのがオチだろう。


「はぁ~、お前そんなんじゃこの荒波の世に溺れるにゃよ? だいたい、その猿真似(さるまね)とかいう所も、追い出す時点で碌なところじゃニャさそうにゃ」


「痛た……もう離してくれよ円稼(マドカ)くん。 それに猿真似じゃなくて『サルマネー』、お金のマネーの方ね。 結構大きいギルドだよ。 効率的に稼ぐことが目的で、最近急成長中の勢いのある所だね」


「キュィ……そうなんでひゅぅ。 人数が多くなってきたから、活動していない者は整理すると言われて……キヨはちゃんといつも頑張っていたのに、うぅ……」


「お前影薄そうだからにゃ。 忘れられたんじゃにゃいか?」


「キュィィ!? そ、そんなぁ……!!」


 真相は分からないが、このうだうだと煮え切らない態度からも、我というものが薄そうな少女だ。

 忘れられたというのも、あながち間違ってはいなそうである。


 あるいは、アタシのように騙された被害者という線もある。

 アタシから見ても、かなり利用しやすそうだもの。


「ちょ、ちょっと円稼君! 言い過ぎだよ! こんなに可愛い子を忘れるわけないじゃないか!」


「なら、どうして追い出されたんにゃ」


「そ、それは……」


 恋の病で盲目だった月兎も、これには二の句が引っ込み口をつぐむ。

 そんな情けない男をよそに、キヨと名乗る少女は心当たりを探るように首を傾げた。


「キュィ……キヨはちゃんと上納金も納めていましたし、何が悪かったのでひゅ……?」


「上納金!? ギルドを建てれば、金が貰えるのにゃ!?」


「そんなわけないだろう円稼くん……普通にマナー違反だよ。 運営に怒られるほどではないけど、良い顔はされないはずだ。 あのギルド、そんなことさせていたのか……」


 月兎が呆れたような、あるいは悲しむような複雑な表情を浮かべてたしなめる。

 自称玄人プレイヤーなだけはあり、一応このゲームのモラルが気になるところはあるらしい。


 この偽善ぶった正義感もまた、彼の暑苦しさの一端だろう。

 もしくは、女の子の前で良い恰好したいだけのどちらかだ。


「まぁ、でもにゃぁ……不自然に急成長するところなんて、どこもズルの一つやってるものだろうにゃ。 アタシ達も猿真似して、でっかくガッポリ儲けたいにゃす」


「だめだめ! そんなの僕が許さないよ! ここに連れて来たのは、情報のやり取り……コミュニケーションの醍醐味を楽しんでもらうためだからね!?」


「キュィ……あの、キヨの話はどうなったのでひゅ……?」


「あ、ニャんだっけ? ギルドの立ち上げだったかにゃ?」


 素でこの子の存在を忘れていた。

 やはりどうにも影が薄いな、このキヨという少女。


「そうにゃ! 丁度アタシ達もギルドを組むところだったから、お前も入れてやるにゃす!」


「キュィ! ほ、本当でひゅかぁ!? あの、キヨは三郷浄(サンゴウキヨ)でひゅぅ。 ふつつかものでひゅが、よ、よろしくお願いします!」


「それがいい! 僕も先達のプレイヤーとして、手取り足取り密着指導を……」


「お前はグダグダ言ってニャいで、さっさと申請してこいにゃ!」


 また盛り出した兎野郎の股間を蹴り上げ、鞭を打つ。

 奴隷二号のくせに、アタシへ奉仕する気がまるで無い男だな。


 ともかくこれで、奴隷三号が手に入ったことになる。

 アタシはしめしめと影で笑いながら、股間を押えて走り去る月兎を見送るのであった。

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