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借金どうしようにゃ

マドカの私服はこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=126924


集円竜エンドラゴンの姿はコチラ(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123319

 コロシアムでの一件で、当面の生活費を得られた。

 これで現実のアタシもしばらくは世話してもらえるだろう。


 かといって、いつまでもこのコロシアムに(こも)っていたところで、一億円稼ぐのすら気が遠くなる。

 ましてや借金100億なんて額など、寝言は寝て言えと一蹴されるくらいの戯言。


「やっぱり、黒服の言ってたアレを探すしかニャさそうだにゃぁ……」


 思い出すのは、このYen(世界)に来て最初に説明されたあの言葉。

 今でも強烈に脳裏で反響している。


勝堀円稼(ガッポリマドカ)さん、このゲームのセキュリティに一カ所だけ重大な脆弱性があるらしいのです。 それを見つけられたらアナタの借金はチャラ、晴れて自由の身ですよ』


 ヒントはまったく無いし、手掛かり足掛かりも何も見当たらない。

 身体一つでこの世界へと放り出されて、どうしろというのだ。


「はぁ……それが見つかれば、借金とはおさらばニャのににゃぁ……」


「本当かい!? 君の借金が消えるなら、僕も奴隷なんてしなくて済むじゃないか! 早く探そう! その……何かを!」


 このやたらと暑苦しくて煩い男、足羽月兎(アスワゲット)

 下心丸出しでアタシに喰い付いてきたから、カモにしてやった奴隷二号だ。


 ちなみに奴隷一号はブタ。

 月兎(ゲット)は、モンスターのスカンピッグ以下の男ということである。


「だから、それが何かも分からニャいから苦労してるんにゃろが!!」


『ゼニャハハハ! それで、こんなところで油売っとるのカネ? そんな暇があったら、芸の一つでも売って稼ぐガネ!!』


 アタシの左腕に括り付けられた(エン)トリーデバイスの液晶から、ひょっこりと頭を出して喚く金色トカゲ。

 コイツはアタシのサポートAIらしいけど、正直いらないし疫病神いや貧乏神だ。


 金を喰うので、こうやってアタシに働けと定期的に鞭打って来るのである。

 たいして役にも立たないのに、無駄に食い意地と金汚さを主張してきて鬱陶しい。


 エンドラゴンという仰々しい名前だが、終焉(しゅうえん)という意味ではなく『(えん)』を喰うトカゲという意味だ。

 語感だけで騙されたアタシも悪いが、騙して来たコイツが一番悪い。


 結局、円環の契約とかいうのを結んだせいで、魂レベルで離れられなくなってしまった。


「あの契約が無ければ、こんなクソトカゲさっさと黒焼きにして食べるのににゃぁ……」


『おい! 口を慎むガネ! 誰のおかげで試合に勝てたと思っとるんだガネ!!』


「お前はただブタみたいに金を喰ってただけニャろが!!」


 歯をむき出していがみ合う口喧嘩に嫌気がさしたのか、月兎が宥めるような優しい声色で割って入る。


「まぁまぁまぁ……二人共、終わったことで騒いでも仕方ないだろう? それで、円稼(マドカ)くん。 本当にその探し物に心当たりは無いのかい?」


「さっきも言ったにゃす。 さぁっぱりにゃ」


「そうか、なら一先ずは人手を増やそう。 情報を探すにも多くの目と耳、それと幅広い交流が一番さ」


「にゃ? というと……?」


「もちろん、ギルドを建てるんだよ!」


「なんにゃ、それ?」


 ゲームに疎いアタシには、専門用語を並べられてもさっぱりだ。

 そこは面倒見の良い月兎が、馬鹿でも分かるよう噛み砕いて説明を始める。


「あぁつまり、学校の部活を新設するみたいな感じかな。 同好の士を集めるんだ。 君なら『このゲームの謎を調べる』みたいなね」


「にゃるほど……」


「それに、ギルド同士の繋がりというものがあって、個人間では集まらない情報のやり取りもあったりするんだ。 探し物にはうってつけだろう?」


 確かに、奴隷もこの男一人では広く動くのは難しい。

 もっと沢山の奴隷が集まれば、アタシも楽して借金を返すことだってできるはずだ。


 スケベのくせに、意外と気の利いた提案をするじゃないか。


「それにゃ! そうと決まれば、善は急げにゃす! どこで作れるのにゃ?」


「あぁ、それならこの始まりの街にも受付があるから行こう。 レディ、ナビを頼む」


『了解しました、ゲット。 コロシアムの裏手方面へ進んでください』


 有能な方のサポートAIが月兎の左腕から声を放つ。

 クソトカゲと違ってホログラムはないが、むしろ無駄な主張がなくて羨ましい。


 ともかくコロシアムに併設されたカフェテリアでの一休みもこれでお終い。

 すぐさま立ち上がると、全速力でギルド申請に向かうのであった。






「やっと着いたにゃ! というか、いちいち初心者に優しくニャい街だにゃぁ!! 広すぎにゃす!!」


 コロシアムは大きくて目立つからいいものの、役場みたいな一見目立たない建物を探すのは一苦労だった。


 寝たきり介護のプレイヤーも多いと黒服が言っていたが、夢の中で散歩でもさせるためにこんな広くしたのだろうか。


「一応、美麗で精巧な街づくりはこのゲームの目玉だからね。 カジュアルなプレイヤーは、この没入感に魅了されるんだよ」


「アタシは、借金のために時間がニャいんにゃ! このまどろっこしいシステムは邪魔過ぎるにゃす!」


 雰囲気よりも実利を取る状況なのだ。

 こんなところで脚を引っ張られたくはない。


 そんな憤る語気とは対称的に、弱々しい声が視界の影から微かに響く。


「あ、あの~どなたか、私とギルドを組みませんかぁ~……」


「なんにゃ?」


 遠くの小銭も聞き逃さない猫耳が無ければ、とうてい気が付かなかっただろう。

 何事かと振り返ると、声の通り弱気な雰囲気を全身に纏う少女が立っていた。

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