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勝負のタネ明かしにゃ

マドカの変身した姿はこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123495

https://tw6.jp/gallery/?id=134602


集円竜エンドラゴンの姿はコチラ(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123319

 全くの無名な初心者が突如現れ、玄人相手に大逆転を見事決めた名勝負。


 チュートリアルステージの時点でなにかと話題になっていた円稼(マドカ)の配信から広まり、今では一線級の視聴者数がこの試合へ注目していた。


 その結果、決着のゴングと共に会場が溢れんばかりの『応¥貨(おうえんか)』が豪雨のように降り注ぐ。


「にょほほほ! どうせ外では使えないとはいえ、気持ち良いにゃぁ!! 良きかな良きかな、くるしゅうニャいにゃす!!」


 勝者の特権。

 浴びせられる喝采と称賛を全身で受け止め、脳にドーパミンが充満していく。


 この味を一度でも味わえば、誰しもが酔いしれ忘れられなくなる禁断の果実だ。


「にょーほっほっほ! もっと褒めろにゃ! もっと投げろにゃ! アタシは勝ったのにゃぁ!!」


 敗者のことなどそっちのけ。

 アタシは完全に浮かれて、ふわふわした頭が大逆転の余韻に浸っていた。


 その敗者はと言えば、気を失ったのか未だにマットへ突き刺さっている。


『自動起床プログラムを実行します。 電気ショック開始』


「んぎゃぁ!?」


『おはようございます、ゲット』


 電撃の衝撃で身体を震わせ、ようやく体勢を崩して股間を押えだす。

 とてもプレイボーイを気取っていたとは思えない間抜けな恰好だ。


「う、ぁぁ……レディ、いったいどうなったんだい?」


『顔を上げてくださいゲット。 見えるでしょう、あなたは彼女に負けたのです』


「円稼くん……そうか、僕は負けたのか……」


 月兎(ゲット)は悔しそうに唇を噛み締める。

 そのまま涙を堪えるように顔を伏せ、僅かにその丸めた背中を震わせた。


 勝者の栄光を汚さないように、必死に感情を押し殺す男らしいシーン。

 見る人が見れば、感動するに違いない。


 もっとも、股間を両手で押さえた絵面なので、金玉が痛いようにしか見えないのが残念である。


「お? なんにゃ? そんなにグッバイタマタマしたのが悲しいのかにゃ?」


「君ねぇ!? もうちょっと情緒ある発言をしてくれないかな!?」


『彼女の発言を訂正します。 ゲーム上の行いでプレイヤー本人への影響はありません。 ゲットにはまだ付いています』


「レディ、君まで品性の無い発言をしないでくれよ!?」


 システム上はゲームの安全性を説いただけなのだろうが、タイミング的は最悪。

 しかし、機械的に特定単語へ反応するAIには関係ないのだろう。


 優男、月兎のツッコミは華麗にスルーされていた。

 つくづくサマにならない男である。


「まぁ……勝敗にケチをつける気はないさ、素直におめでとう円稼くん」


「にゃっふっふ。 下後心丸出しの出逢い厨にしては良い心掛けにゃす」


「ググッ……!? 失敬だな! 僕はただ先輩プレイヤーとしてだね……いや、そこはどうでもいいんだよ!! 君にはコインを一枚も渡さなかったはずなのに、どんなトリックを使ったんだい?」


 あの見え見えの厭らしい視線でバレていないと思っていたのか。

 ちょっと本性を言い当てただけで、分かりやすいぐらい慌てている。


 言い訳の途中でこの話題を続けるのは墓穴だと気が付いだろう。

 急に話題の方向転換へと、強引に舵を切る。


「あぁ、それにゃすか。 簡単なことにゃす、コインを手に入れただけにゃ」


「は?」


 全く意味が分からないという月兎のポカンとした顔。

 人を上手く騙せるのは、こんなにもスカッと胸が晴れるものなのか。


 ホクホクと良い気分に浸りながら、タネ明かしをしてやろう。


「まだ分からないにゃ? お前が自動回収とかいうズルをするから、アタシも自動回収をしたまでにゃす。 ほれ、よっこいしょっとにゃ」


 『応¥貨(おうえんか)』を喰い過ぎて、まさにブタのように寝転がるスカンピッグを両手で抱えて見せつけた。


「ふごぅ?」


「この子は……僕がお荷物と言ったペットモンスター?……お腹が少し変だけど。 でも戦闘に参加してないだろう?」


 もうこれ以上食べれないだろうに、腹の虫でも騒いでいるのかお腹の動きが忙しない。

 丸々と太ったその腹の中に、モゾモゾと何か蠢くものがあるらしい。


()()()はそうだにゃ。 ところがにゃ……コショコショ」


 スカンピッグの鼻先をくすぐると、むず痒そうにヒクつかせて大口を広げる。


「ふご、ふ……ふえっくしょ!!」


『ゼニャァァァァ!? ブヘ!?』


 ブタの口からタンでも吐き出すように、リングの上へと涎塗れの何かが転がっていく。

 よく見ればそれは、しばらく顔を見せていなかったエンドラゴン(クソトカゲ)であった。


「これって、確か君のAIのホログラム……そういうことか!?」


「試合の最初。 クソトカゲが金を喰っても、アタシの獲得扱いになってたのにゃ。 そこで閃いたのにゃす、(エン)トリーデバイスから切り離してもイケるんじゃニャかってにゃぁ!」


「ホログラムにそんな使い方があったのか!! しかもテイマーでもないのに、ここまでペットモンスターを使いこなすなんて……!! 君は本当に初心者なのかい!?」


「にょほほほ! 凡夫とは出来が違うのにゃ! いわば、生粋の天才! そしてお前はその天才にこき使われる奴隷にゃす!」


「ちょ、ちょっと!! 奴隷って、なんのこと!?」


「忘れたとは言わせニャいにゃ! 勝者は何でも言うことを聞かせられる、そう決めたはずにゃが?」


「えぇぇぇぇ!?」

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