反撃準備を仕込んでおくにゃ
マドカの変身した姿はこちらです(外部サイト)
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小銭独特の音の出所。
それを注意深く探り当てると、意外にも足元だった。
「ふごぅ?」
そこには不思議そうに首を傾けるスカンピッグの姿。
お荷物とまで称された憐れなお供だ。
先程まで素寒貧の貧相な貯金豚が、今では肥えて丸々と太っている。
『富豪』という鳴き声に相応しいブタっぷりだ。
目立たないところで、落ちている『応¥貨』をネコババして盗み食いしていたのだろう。
そのでっぷりとしたお腹には、相当な枚数のコインが詰まっているのは一目瞭然。
腹に入ってしまえば、重力操作の対象外で引っ張られることもないのか。
まさに金を貯える貯金豚だ。
「そういえば、コイツは金を喰うブタだったにゃ……」
思い返せば、チュートリアルステージでもたらふく喰っていたはず。
そしてコイツから叩き出した金で服を修復したのである。
「にゃはっ!! 閃いたにゃす……!!」
『ゼニャハハ! オレ様も同じこと考えているガネ。 お前もなんだかんだオレ様に影響されているようだガネ』
「お前ほど金に汚くはニャいわい! にゃっふっふ……しかし、コイツは使えるにゃぁ」
「ぶ?」
月兎から見えない様にしゃがみ込んで、両腕で包み込むように抱え込む。
この子は金の卵を産むガチョウならぬ、金を産むブタちゃん。
その頭を優しく、いい子いい子と撫でつけ手懐けておく。
「ふごご!? ふごぅ……?」
この絶体絶命の窮地を打開する切り札は、始めからこちらの手の内にあったのだ!
「よしと、こんニャもんかにゃ」
卑しく歪んだ口元をキュッと結んで直すと、再び弱々しい顔に戻して振り返る。
目前に対峙するは、肌の露出に目を奪われたスケベ男だ。
「おや、どうしたんだい円稼くん。 怖くなって降参するのかな?」
「いんニャ……お前の言う通り、勝負は勝負にゃ。 このまま続けるにゃす」
「うんうん、なるほどね。 なら僕としては非常に本意ではないのだけれど……君にトドメを刺させてもらおうか。 どうなっても責任は持たないからね、うっ……ふぅ!」
手を出さなかったのは、どうせ尻でも見ていたんだろう。
女性に対する免疫が無さ過ぎるせいか、口の周りが鼻血で血まみれになっている。
お前本当にプレイボーイかよ。
だが、これくらいピュアな方がこちらも隙をつけるというもの。
タダで見たツケは後で払ってもらうのだ。
「ただ、その前に……ひとつだけ賭けを提案したいにゃ」
「賭け……? もう勝負は見えているのにかい?」
「だからにゃ! アタシがここから大逆転を決められたら、何でも言う事を聞いてほしいのにゃす」
「ハハハ、ここから本当に逆転できるならね。 それで? 僕がこのまま勝ったら、円稼くんは何してくれるんだい?」
現在、圧倒的に有利な立場にいるのは月兎だ。
弱者の申し出を無下にしては、視聴者ウケも悪かろう。
蹴るにしても、話は聞いてくれるはずだと思っていた。
「アタシに出来ることニャら、何だってしてあげるにゃす……」
「何でもって……何でも!? その、本当に何でもいいのかい!?」
よし、案の定喰い付いてきたね。
あれだけスケベ根性丸出しなのだから、どんな下卑た想像しているかだいたい予想が付く。
クソトカゲ曰く、初心者を狙った出逢い厨らしいからね。
「女に二言はニャいにゃ! この試合を見ている視聴者が証人にゃす!」
「よ、よし! その賭け乗った!!」
『『ワァァァァ!!』』
思わぬ展開に、視聴者達も盛り上がっているらしい。
会場には誰に宛てたでもない、無差別な『応¥貨』が舞い始めた。
「おっとと、なるほどね。 これが狙いか……でも残念だったね!」
「ぶにゃ!?」
月兎が左腕を掲げると、再びコインが彼の腕へと集まっていく。
これではもはや、敵に塩を送ったも同義。
手を伸ばせど、結局アタシの手元にコインは残らなかった。
「ふふ、さっきの賭けの約束……忘れないでくれよ。 もう一度大技だ! キックオフ、レディ!!」
『重力球、生成します』
「また、あのボールだにゃ!!」
一度の命中でガッツリと¥ゲージリングの目盛りが減ってしまった強力な技。
もう一度受ければ、金で肩代わり出来ずに一発KOだろう。
さらにターゲットマーカーを打ち込まれている以上、回避は封じられている。
アレをやり過ごすには、防御技で防ぐ以外に方法がないのは身をもって知っていた。
「頼みのお金も、僕の能力がある限り君に届くことは無い! これで、終わりだァァァァ!!」
無情にも月兎の右脚は大きく振りかぶられ、空間の歪んだ重力球を勢いよく蹴り上げる。
ドジュウと重いノイズを掻き鳴らしたような衝撃音。
一度目よりもかなり力の入ったシュートが放たれ、コロシアムを切り裂くように駆け出していく。
「もうダメにゃぁ!?……ニャぁんてにゃ!」
相手が大技を使うこの瞬間。
それはすなわち、相手の無防備なタイミングでもある。
さきほどのアタシと同じだ。
今度はそれを逆にやり返してやるのだ。
「むしろ待ってましたにゃ! うにゃぁぁぁ!!!」
虎視眈々と隠した爪を研ぎ、反撃の狼煙をついに上げる。
真っ直ぐに向かって来る重力球へと、恐れることなくコチラも走り出すのであった。
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