表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

反撃準備を仕込んでおくにゃ

マドカの変身した姿はこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123495

https://tw6.jp/gallery/?id=134602


集円竜エンドラゴンの姿はコチラ(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123319

 小銭独特の音の出所。

 それを注意深く探り当てると、意外にも足元だった。


「ふごぅ?」


 そこには不思議そうに首を傾けるスカンピッグの姿。

 お荷物とまで称された憐れなお供だ。


 先程まで素寒貧(すかんぴん)の貧相な貯金豚が、今では肥えて丸々と太っている。

 『富豪(ふごう)』という鳴き声に相応しいブタっぷりだ。


 目立たないところで、落ちている『応¥貨(おうえんか)』をネコババして盗み食いしていたのだろう。

 そのでっぷりとしたお腹には、相当な枚数のコインが詰まっているのは一目瞭然。


 腹に入ってしまえば、重力操作の対象外で引っ張られることもないのか。

 まさに金を貯える貯金豚だ。


「そういえば、コイツは金を喰うブタだったにゃ……」


 思い返せば、チュートリアルステージでもたらふく喰っていたはず。

 そしてコイツから叩き出した金で服を修復したのである。


「にゃはっ!! 閃いたにゃす……!!」


『ゼニャハハ! オレ様も同じこと考えているガネ。 お前もなんだかんだオレ様に影響されているようだガネ』


「お前ほど金に汚くはニャいわい! にゃっふっふ……しかし、コイツは使えるにゃぁ」


「ぶ?」


 月兎(ゲット)から見えない様にしゃがみ込んで、両腕で包み込むように抱え込む。


 この子は金の卵を産むガチョウならぬ、金を産むブタちゃん。

 その頭を優しく、いい子いい子と撫でつけ手懐けておく。


「ふごご!? ふごぅ……?」


 この絶体絶命の窮地を打開する切り札は、始めからこちらの手の内にあったのだ!


「よしと、こんニャもんかにゃ」


 卑しく歪んだ口元をキュッと結んで直すと、再び弱々しい顔に戻して振り返る。

 目前に対峙するは、肌の露出に目を奪われたスケベ男だ。


「おや、どうしたんだい円稼(マドカ)くん。 怖くなって降参するのかな?」


「いんニャ……お前の言う通り、勝負は勝負にゃ。 このまま続けるにゃす」


「うんうん、なるほどね。 なら僕としては非常に本意ではないのだけれど……君にトドメを刺させてもらおうか。 どうなっても責任は持たないからね、うっ……ふぅ!」


 手を出さなかったのは、どうせ尻でも見ていたんだろう。

 女性に対する免疫が無さ過ぎるせいか、口の周りが鼻血で血まみれになっている。


 お前本当にプレイボーイかよ。


 だが、これくらいピュアな方がこちらも隙をつけるというもの。

 タダで見たツケは後で払ってもらうのだ。


「ただ、その前に……ひとつだけ賭けを提案したいにゃ」


「賭け……? もう勝負は見えているのにかい?」


「だからにゃ! アタシがここから大逆転を決められたら、何でも言う事を聞いてほしいのにゃす」


「ハハハ、ここから本当に逆転できるならね。 それで? 僕がこのまま勝ったら、円稼くんは何してくれるんだい?」


 現在、圧倒的に有利な立場にいるのは月兎だ。

 弱者の申し出を無下にしては、視聴者ウケも悪かろう。


 蹴るにしても、話は聞いてくれるはずだと思っていた。


「アタシに出来ることニャら、何だってしてあげるにゃす……」


「何でもって……何でも!? その、本当に何でもいいのかい!?」


 よし、案の定喰い付いてきたね。

 あれだけスケベ根性丸出しなのだから、どんな下卑た想像しているかだいたい予想が付く。


 クソトカゲ曰く、初心者を狙った出逢い厨らしいからね。


「女に二言はニャいにゃ! この試合を見ている視聴者が証人にゃす!」


「よ、よし! その賭け乗った!!」


『『ワァァァァ!!』』


 思わぬ展開に、視聴者達も盛り上がっているらしい。

 会場には誰に宛てたでもない、無差別な『応¥貨(おうえんか)』が舞い始めた。


「おっとと、なるほどね。 これが狙いか……でも残念だったね!」


「ぶにゃ!?」


 月兎が左腕を掲げると、再びコインが彼の腕へと集まっていく。

 これではもはや、敵に塩を送ったも同義。


 手を伸ばせど、結局()()()()()()にコインは残らなかった。


「ふふ、さっきの賭けの約束……忘れないでくれよ。 もう一度大技だ! キックオフ、レディ!!」


重力球(グラヴィットボール)、生成します』


「また、あのボールだにゃ!!」


 一度の命中でガッツリと(エン)ゲージリングの目盛りが減ってしまった強力な技。

 もう一度受ければ、金で肩代わり出来ずに一発KOだろう。


 さらにターゲットマーカーを打ち込まれている以上、回避は封じられている。


 アレをやり過ごすには、防御技で防ぐ以外に方法がないのは身をもって知っていた。


「頼みのお金も、僕の能力がある限り君に届くことは無い! これで、終わりだァァァァ!!」


 無情にも月兎の右脚は大きく振りかぶられ、空間の歪んだ重力球を勢いよく蹴り上げる。

 ドジュウと重いノイズを掻き鳴らしたような衝撃音。


 一度目よりもかなり力の入ったシュートが放たれ、コロシアムを切り裂くように駆け出していく。


「もうダメにゃぁ!?……ニャぁんてにゃ!」


 相手が大技を使うこの瞬間。

 それはすなわち、相手の無防備なタイミングでもある。


 さきほどのアタシと同じだ。

 今度はそれを逆にやり返してやるのだ。


「むしろ待ってましたにゃ! うにゃぁぁぁ!!!」


 虎視眈々(こしたんたん)と隠した爪を研ぎ、反撃の狼煙をついに上げる。

 真っ直ぐに向かって来る重力球へと、恐れることなくコチラも走り出すのであった。

評価や感想をいただけると励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ