ターゲットの恐ろしい罠にゃ
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「なんにゃぁ!? 金が自動で吸い込まれていくにゃす! ずっこいにゃ! アタシなんてせこせこ掻き集めたんにゃが!!」
「はは、便利だろう? そうだなぁ、円稼くんは初心者なんだし手の内を明かしておこうか。 僕のジョブは重力兎、重力を操作し兎のように跳ね回る能力なんだ。 そしてこの自動回収も重力操作の恩恵ってわけさ」
「跳ね回る……だからさっきも、あんニャに高くジャンプしてたのかにゃ……!!」
「そういうこと。 華麗でアクロバティックな動きは、視聴者ウケがいいんだよね」
「ぐぬ……」
暗に大技ブンブン丸な初心者プレーを晒した自分が、格好悪いみたいじゃないか。
まぁ実際、『応¥貨』は月兎の元へと集中しているのだが。
だが、金が無ければまともに攻撃も防御もままならない試合ルール。
この状況、もしかしなくても相当ピンチなのでは……?
「いいかい、技を使えるチャンスは有限だ。 どれだけ強くても、当てられなければ意味は無いんだよ。 さぁ今度はコチラの番だ、覚悟してくれ!」
「んにゃ~!! 絶体絶命にゃ!! エンドラゴン! ニャにか手はないのかにゃす!?」
『都合の悪い時だけ頼るんじゃ無いガネ。 まったく……世の中は金、それが無いなら気合いで何とかするしかないガネェ』
「にゃんだとぉぉ!? こうニャったら根性にゃぁ!! ド根性で避けきるしかにゃい!!」
肝心な時に限って、てんで役に立たない金喰いトカゲだ。
防御技に使う金が無い以上、こうなれば自分の身体能力を信じるしかない。
体育の成績だけはそこそこ良かったのだ。
わりと動きに自信はある。
そして幸いなことに、月兎は開幕のように走っては来なかった。
遠距離攻撃なら頑張れば避けられる可能性は高いはず。
「まずは僕の十八番といこうか。 キックオフ、レディ!」
『重力球、生成します』
月兎の掛け声に反応し、彼の足元にサッカーボール大の空気の歪みが生じる。
グワングワンと黒く渦巻き膨らむそれは、まるで小さなブラックホールのようだ。
膨張が納まると、月兎は脚で軽く遊ぶように蹴飛ばしながら宙に浮かす。
しかし蹴る度に放つ音は、軽い空気ではなくまるでノイズの様な不快な雑音。
鳥肌の立つような禍々しさを秘めた、謎の球体だった。
「僕はね、円稼くん。 恋もゴールも百発百中なのさ! 行くよっグラヴィットボール、シュート!!」
「本当にサッカーボールみたいに蹴って来たにゃ!? にょわぁぁぁ!!」
叫びはしたが、これならば避けられる。
冷静に相手の足の振り方を見れば、真っ直ぐ飛んで来るのが丸わかりだ。
咄嗟に右の方へと身体ごと飛び出し、ゴールキーパーのような体勢で滑り込む。
「甘いな円稼くん。 言っただろ? 百発百中だってさ!」
物理法則に則って真っ直ぐに飛んでいたはずの重力球は、不自然な角度で急に曲がりアタシの方へと狙いを定める。
それはまるで、アタシを中心にして吸い寄せられるように。
「んにゃぁぁぁ!!! どうニャってるのにゃぁ!?」
倒れ込んで身を屈めていた状態では、避ける術など残されていなかった。
容赦なく追って来た重力球が、腹部にめり込み身体を持ち上げる。
鉄球クレーン車の振り子で吹き飛ばされたような痛みが、全身を突き抜けた。
「ゲホッ!?」
「初心者の円稼くんには大人げ無いかもしれないけど、こればかりは身体で覚えた方が早いからね」
重力球に吹き飛ばされた小さな身体がリングの透明な壁にぶつかり、ボロ雑巾のように転がり落ちていく。
「ど、どうなってるのにゃ……?」
「ターゲットマーカー、最初に付けただろ? 僕の攻撃は、自動的に全部君へと向かっていくのさ。 これが玄人のコンボ攻撃だよ」
「あの指鉄砲かにゃ……」
あの時は痛くも無い攻撃、だったはずだが。
すいぶんと痛い思いになって帰って来たものだ。
全身の骨がオシャカになったかと覚悟したが、なんとか立つことは出来た。
もっとも、よろよろと生まれたての小鹿のような震える足取りではあるが。
『馬鹿カネ、お前は? その痛みはただのイメージだガネ。 ¥ドレスを着てるうちは、どれだけ喰らっても平気に決まっとるガネェ』
「にゃ? 言われてみれば、全然痛くニャいにゃす……?」
あまりにもこのゲームがリアル過ぎて、激しい思い込みをしていたらしい。
そういえばこのスーツは無駄に強いのであった。
そうしてもう一つ思い出した。
この¥ドレスは金を着る服。
つまりダメージは金で肩代わりしているのだ。
『残高が残り僅かです。 入金してください』
「ギニャァァ!! またスッポンポンにされちゃうにゃぁ!!」
頭の中に、あの悪夢のようなアナウンスが流れ出す。
おまけに腕と脚に着用した¥ゲージリングの目盛りが赤くなり、ほとんどゼロを指している。
無敵の¥ドレスもじわじわと溶けるように穴が開き始め、肌の露出が増えて来た。
「う……ふぅ、また鼻血が……!! 君の事情は分からないけど、これは勝負。 結果的にどうなろうと、決着は着けさせてもらうよ!!」
「嘘にゃぁ!! 絶対どうなるか分かってる目にゃす!!」
月兎の鼻の下が伸びに伸びて、びろびろだ。
このムッツリ野郎、裸に剥く気満々じゃないか!
どうにか金を確保しないと、洒落にならない乙女の危機!!
その時、遠くの小銭の音も聞き逃さない猫耳が、チャリチャリと擦れる金属音を聞き逃さなかった。
「これは、どこにゃ……!?」
ピクリと跳ねた耳の方へと、アタシは瞬時に視線を動かした。
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