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応¥貨の雨あられにゃ

マドカの変身した姿はこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123495

https://tw6.jp/gallery/?id=134602


集円竜エンドラゴンの姿はコチラ(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=123319

 二人の掛け声が重なると、左腕のガントレットから光が迸る。

 そのラメ入り塗料のような白光は、みるみるうちに着ていた洋服を侵食し包み込んでいく。


 まるで溶けてしまったように形を失った服と光は、アタシの身体に沿ってピタリと張り付いた。


 胸の張りから、お尻の丸みまで、身体の隅々までラインがクッキリと見えてしまっている。

 その首元まで全身タイツのような見た目は完全に痴女のソレ。


 とても人前に出ていい姿ではないが、ムシでいうならサナギの状態。

 真の姿へ変身するには仕方がないのだ。


「ブフッ!? くっ……鼻血が……!! ちょ、ちょっと円稼(マドカ)くん!? 君は公衆の面前でなにしてるんだい!? 正気なのか!?」


 対戦相手だというのに、月兎(ゲット)はこちらの心配をしているようだ。

 というか心配のあまり目も離せないらしい。


 しっかりと見てるじゃないか、このムッツリ男!


「素人は黙っとれにゃ! 肌は見せてないからセーフにゃす! 本番はここからにゃぁ!!」


 実際、運営から警告とか来ていないから問題無いはず。


 最悪の場合、エンドラゴン(クソトカゲ)を引き渡せばいい。

 元はと言えばコイツが全部悪いのだ。


「さぁ目ん玉かっぽじって、よく見るのにゃ! これがアタシの本気の勝負服にゃよ!!」


 データの集積が足元から頭へとせり上がっていき、服と塗料の混じった発光が治まっていく。

 さながら3Dプリンターのような構築過程が行われていった。


 最後に一際大きく光ると、チュートリアルステージで見せたあのピッチリスーツの完成だ。


「うっ……ふぅ、姿が変わったのはいいけど、刺激的なのは変わらないんだね。 ちょっと役得、いや目のやり場に困っちゃうなぁ、ははは」


 口ではごちゃごちゃ抜かしているが、月兎のその目はアタシに釘付けだ。

 対戦相手なのだから仕方ないとはいえ、少しはその(いや)らしい目線を隠す努力くらいしろ。


『『オオォォォォ!!』』


 嫌味の一つでも言ってやろうかとしたところ、急にコロシアムが割れんばかりに湧き出す。

 口笛や拍手の音まで鳴っており、入場口の閑散ぶりからは考えられない程の盛り上がりだ。


「な、なんにゃ? 大袈裟すぎニャいかこれ……?」


「まぁ、確かに演出として過剰にしてはあるけど、視聴者が興奮しているのは本当さ。 ほら、アレが証拠だよ」


 月兎が指差した先、観客席の方向の虚空からは突如コインのようなものが飛んで来た。

 それも、狙ったようにアタシの方へばかり。


「あ、ありがとうございます、にゃ……?」


 自分を囲むようにどんどんと投げ込まれるコインに困惑しながらも、とりあえずお礼をしておく。


 以前はアナウンスで振り込まれていたが、これは一体どういうことなのか。

 たしか『声¥札(せいえんさつ)』とかいうやつだったはず。


「ははは。 そんなに遠慮しなくていいんだよ。 ここに入る前に言っただろ? 一番大事なのは『楽しませること』だって」


「そういえば、そんなこと言ってたにゃ」


「それは『応¥貨(おうえんか)』、視聴者達の応援の証さ。 この試合限定で使えるお金ってところかな。 彼らが応援したいと思った方に、それを投げ入れてくれるんだよ。 外へは持ち出せないから、気にせず使ちゃってもいいよ」


「ははぁ、ニャるほど。 にしても、いちいち拾うの面倒なんにゃが……一応貰っておくけどにゃ。 でも外で使えないニャら一体何に使うんにゃす?」


 変身シーンを見せただけでこんなにくれるのか。

 それにしても、チャリチャリと小銭を拾いながら戦うなんて不格好だけどいいのだろうか。


 普段からこういうゲームをしないので分からないが、とりあえず貰えるものは貰っておく。

 腰を落とし、せこせこと両手いっぱいに掻き集めた。


 どうも白昼堂々とネコババしている気分になってくる。

 やましい事なんて何もしていないのに……


「あぁ、それはココに入れてね」


 月兎が左腕をコツコツと指でノックしている。

 堅そうな音を響かせているのは、あのレディと呼ばれたサポートAIが入った携帯端末だ。


「ココって……デバイスにゃす?」


 勝手が分からないが、とりあえず掻き集めた『応¥貨(おうえんか)』を近付けてみる。

 すると、(エン)トリーデバイスの液晶からクソトカゲの頭が飛び出した。


『ムハー! 飯だガネ!! ンガ、ムグ、モガガガー!!』


「ふごぅ! ぶっしゃ、もっが、ぷひ!」


「ちょ、おおぉい!? 食べられてるけど大丈夫にゃす!? にょわー!! ブタ、お前まで食べるんじゃニャいにゃ!!」


 二匹の噛まずに飲み込むような下品な食べ方で、コインの小山はみるみるうちに消えていく。

 スカンピッグとクソトカゲの挟み打ちにより、止めようにも無駄な足掻きであった。


 しかし、一応それでも獲得扱いらしい。

 スーツの左腕と右太ももについている(エン)ゲージリングの目盛りが、グングンと上昇して青く光って満タンにまで達していた。


「上手い、上手い! それと使い道はね、さっき説明した技に使うんだ。 強い技ほど大金が必要になるってことだね。 とはいっても、初心者は強い技を持ってないだろうけど」


「ふむふむ、だいたい分かってきたにゃ!」


「そうかい? よし、それならここからは実践だ。 僕も待った無しで動くから、最後まで着いてきてくれよ!」


「にゃっふっふ……初心者だと思って甘く見てると、痛い目見るにゃ!」


 そう……初心者だという先入観、そこを逆手に取った大技で一発逆転だ!

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