ブタ(ハズレ)を捕まされたにゃ
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「これがサポートAIなのにゃ? 声だけでどこにも姿が見えないんにゃが……?」
足羽月兎の左腕デバイスから声はするものの、一向に姿を現さない。
あの清楚な声なら、さぞや美人が出て来るものかと想像していた。
ところが、まだかまだかと待っていても髪の毛一本見せやしないのだ。
うちのエンドラゴンなんて、呼んでいなくても出しゃばって来るというのにどうしたことか。
「え? いや、物好きな人は立体映像を課金するだろうけど……性能に差は無いし、普通は出てこないよ」
「そうなのにゃ!?」
どうやらアタシの¥トリーデバイスが特別なだけらしい。
カスタマイズなんてした覚えはないが、このアバター同様にクソトカゲが弄ったのかもしれない。
「そこまでカスタムしてあって知らないなんて珍しいね……? もしかして、お店の人に色々やってもらったのかな。 最近このゲーム始める女の子多くて、そういう代行業者がいるって聞くもんね」
「にゃ? え、え~っと、まぁそんなところにゃす。 にゃははは……」
借金を背負わされて無理やりゲームさせられてるなんて、口が裂けても言えるわけない。
このご都合解釈の男の話へテキトウに合わせておこう。
どうせ、その最近増えてる初心者女子を目当てに集まって来た男の一人なのだ。
わざわざ腹の内を見せる義理なんてないのだし。
頼りにならなそうなら、さっさと見切りをつけて他の男に頼ればいい。
「それじゃさっそくだけど、レディ。 コロシアムまでのルートをナビしてほしいんだ。 ついでに、この子とのマッチも予約しておいてよ」
『了解しました、ゲット。 ではマッチングのために、相手のユーザー名を教えてください』
「あっ、そうか! そういえばまだ君の名前を聞いてなかったよね? よければ教えてくれないかな、コロシアムに必要だからさ」
「アタシの名前にゃ?」
正直なところ、捨てる予定の男に個人情報を教えたくはない。
とはいえ稼げる方法を知るために、背に腹は代えられないか。
あまりガードが堅すぎても、カモを取り逃しかねない。
「勝堀円稼にゃす。……これでいいのかにゃ?」
『検索成功しました。 マッチング確認通知が送られたので、承認をお願いします』
レディと呼ばれたAIの言葉通り、アタシの左腕にハメ込まれたデバイスからポコンと通知音が鳴る。
『ポチっとな、ゼニャハハ! 面白いこと始めるみたいだガネ? ガッポリ稼いでオレ様の腹をガッポガッポと満たすガネ!』
「うるせぇにゃ! お前のために稼ぐんじゃニャいわい! あっちのAIを見習って、お前も少しは役に立って見せろにゃ!」
どうもAIというには自我が強すぎる。
勝手に動き回るし、勝手にボタンは押すし……ちょっと押してみたかったのに。
「ふごぅふごぅ!!」
「ほれ見ろにゃ! ブタも同意してるにゃす!」
『なんだガネ!! オレ様よりもスカンピッグの方が役に立っているとでも言うのカネ!?』
いや、実際の所は何言ってるかサッパリ分からないが、こういうのは勢いだ。
同調圧力は数の有利を作った方が勝ちなのである。
アタシ達が内輪揉めで騒いでいると、そんな喧騒をよそに月兎たちは淡々と手続きを進めてくれていた。
『認証が確認されました。 コロシアムにて試合可能な状態です』
「ありがとう、レディ。 それで円稼くん、君のそのブタくんのことなんだけど……テイマー用の装備は確か鞭だったかな。 まだ初期装備だろ、一緒に買いに行こうか」
すっかり彼氏面し始めた月兎は、アタシの腕を取ろうと手を伸ばす。
名前を聞き出したくらいで、距離感バグってないかコイツ。
ところが、クソトカゲが尻尾でそれを払いのけてしまった。
余計なことするなと言いたいところだが、これに関してはグッジョブ!
『ゼニャハハ!! なに勘違いしとるガネ! こいつのジョブはマネーファイター! テイマーなんてつまらない職業じゃないんだガネ!』
「えぇ!? ならなんでモンスターを連れ歩いてるんだい!?」
小さいトカゲの尻尾なんて痛くないはずだが、手をさする月兎。
手は無事でも、彼の心が傷付いたのかもしれない。
しかし、ジョブというのが違うだけで、なにをそんなに驚いているのか。
少々大袈裟すぎるような気がする。
「なんにゃ? ニャにか変だったのかにゃ……?」
「いやだって……お供モンスターって、テイマーのスキルで能力向上させるのが基本の調整になってるものなんだ。 関係ないジョブが連れ歩いていても、完全にお荷物だよ?」
「ふごぉ!?」
『どうだガネ? これでもオレ様より役に立っていると言えるカネ?』
「ドアホ―!! 胸を張るところじゃニャいにゃろが!! 元はと言えば、お前が呼び出したんにゃろ!!」
少しは期待していたが、これで本当にタダメシ喰らいだと証明されてしまった。
なんて残酷な事実。
スカンピッグも驚愕のあまり、鼻の穴がこれでもかと広がり鼻水まで出てしまっている。
こうしてみると、確かにお荷物らしい間抜け面に思えて来た。
あぁ何でこうなった。
せっかくコロシアムで一儲けしようという時に、いきなりハンデを背負ってしまうことになるとは……!!
アタシはやはり、不幸の黒猫なのかもしれない。
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