カモを捕まえたにゃ
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この足羽月兎と名乗る男、下心で近付いてきたというなら使い道はある。
今までの不運な遭遇と違い、関わった所で借金が増えることもない。
女の武器をニンジンとしてぶら下げれば、馬車馬のように働かせることも夢じゃないだろう。
適当に話を合わせながら使い潰して、借金返済の足掛かりとしよう。
そうと決まれば、早速色仕掛けで虜にしてやるのだ。
奴隷をこき使い、楽して優雅な生活をするために!
「にゃは~ん! アタシィ、始めたばかりで、右も左も分からニャいのにゃぁ。 お願いしてもいいですかにゃ?」
色気の出し方がよく分からないが、見よう見まねでしなを作ってみる。
お目々もバチコリと煌めかせ、少女漫画空間を展開して華のトーンまで浮かび上がるイメージだ。
(ゼニャハハ!! 猫かぶりが下手過ぎて、腹で茶が沸くガネ!)
(うるせぇにゃ! 黙って見てろにゃす!)
茶々を入れてくるエンドラゴンを左腕の端末へと押し込み、力づくで無理やり収納する。
こんなやつが見えていては、雰囲気台無しだ。
100億年の恋も冷めるというもの。
「本当かい!? いやぁ、君はツイてるね! 丁度今、僕も時間が空いていてね。 勿論いつもは忙しいんだけど……今日だけは、君にだけは特別に指導してあげようかな!」
拍子抜けするぐらい簡単に釣れてしまった。
こちらだってお世辞にも上手く色気を出せたとは言えないが、向こうもあまり女慣れしてないようだ。
無駄に恩着せがましく、厚かましく、暑苦しいこの男。
案外チョロいのかもしれない。
経験の浅いアタシでも手玉に出来そう。
「にゃふ~ん! 頼りになりますにゃぁ! とりあえず、ガッポリ稼げるオススメな方法とかありますかにゃ?」
相手に気に入られようと、さりげなく距離を詰めて腕を取る。
どうだ、アタシの色気も捨てたもんじゃないだろう。
「ヒュッ!? も、ももも勿論あるとも!」
軽く胸を押しあてると、月兎は鼻の下をこれでもかと伸ばして赤面している。
「ニャんと! ぜひ、ぜひ、お聞かせくださいにゃ~ん!」
「手っ取り早いのは、街の外でモンスターを地道に倒すこと。 これはゲームの基本だね」
「にゃるほど?」
正直、スカンピッグを倒した報酬が激マズだったので、そっちはパスだ。
「あとは、少し難しいけど対人戦のコロシアムとかがあるよ。 リアルの観客がいるから、ファイトマネーが支払われるんだ」
「おぉ、ファイトマネーかにゃ!?」
これだ。
まさにアタシが求めていたモノ。
視聴者のウケも良さそうで、なおかつ金が多く手に入る。
今の自分に打ってつけのコンテンツだ。
「そのぉ、コロシアムについて、もっと詳しく教えて欲しいにゃぁん」
指の腹で月兎の脇腹をくすぐるようになぞっていく。
ほれほれ、さっさと情報を吐き出せ。
当の本人は、こそばゆそうに頬を緩めて更に調子付いていった。
「あはは、いやぁそうだねぇ。 でも、口で説明するよりまずはやって覚えるのが一番だと思うよ? 僕が練習相手になるから、どうかな?」
「えぇ~いいんですかにゃ? じゃぁ胸を借りたいですにゃん!」
よしきた!
これは所謂、接待姫プレイ的なやつのお誘いってことだよね。
女子の特権、チヤホヤされる伝説のアレだ!
友達が男性比率の多いサークルに入ったら、これで凄いことになったと自慢していたのが記憶に新しい。
その手に縁の無いアタシにも、ついに手番が回って来たか。
ちょっと感動する。
「まずは最低限の装備を整え……あれ? 君、ジョブは魔物使いを選んだのかい? まぁ女の子らしくていいと思うけど」
さっきまで胸に視線が釘付けだった月兎だが、今はさらに下へと視線を落としている。
テイマー?
時間のことかな、いやそれはタイマーか。
「なんのことにゃす?」
要領の得ない言葉で混乱し、頭にハテナマークを浮かべている場合ではない。
言葉の真意を確かめようとアタシも足元を見下ろしてみた。
「ふごぅ?」
「ふにゃ?」
この『富豪』という身の丈に合わない鳴き声。
そこには見覚えのあるブタ、スカンピッグの姿があった。
コイツ、あのチュートリアルの草原に置いてきたはずでは……?
『なにとぼけた顔しとるガネ。 オレ様が生み出したんだから、オレ様と一緒に来るに決まっとるじゃないカネ』
「そんな呪いの装備機能、初耳ニャんだけど!? これ以上タダメシ喰らいが増えるのはゴメンにゃ! さっさと消せにゃす!」
『生み出した命を粗末に出来るわけが無いガネ。 せいぜい懸命にメシ代を稼ぐガネ、ゼニャハハ!!』
「こんの役立たずめ、引っ込んでろにゃ!」
『グエッ』
クソトカゲを端末に押し込んだ所でハッとする。
しまった、こんなやり取りを見られては幻滅されてしまう。
恐る恐ると月兎を見上げると、唖然とした感じで口を開けていた。
やはり手遅れだったか。
「なんだ、もうサポートAIのカスタムまでしていたんだね。 もしかして、実は結構ゲーム慣れしてるのかい?」
「んにゃ? ニャんのことですかにゃ……?」
よく分からないが、向こうで勝手に解釈し納得している様子。
良いのか悪いのか曖昧だが、ともかく危機は去ったらしい。
月兎はそのまま何食わぬ顔で左腕を目の前に掲げて、口を開いた。
「ほら、僕のサポーターはこんな感じだよ。 そうだろう、レディ?」
『お呼びですか、ゲット』
アタシと同じように着けた左腕のデバイスから、清楚な女性の声がする。
どやらレディと呼ばれたAIのものらしい。
同じAIとはいえ、うちのクソトカゲとは大違いだ。
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