表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

借金100億円

今回は導入部分となります。

次回からVR世界に突入予定です。


マドカのVR世界でのアバターはこちらです(外部サイト)

https://tw6.jp/gallery/?id=126924


更新告知用画像はコチラ(Twitter)

https://twitter.com/pepsi_tw6/status/1494649846107492357

 ゆめゆめ忘れてはならない。


 面倒臭いからと何も考えないこと。

 話半分に聞き流し、書類にサインをしてしまうこと。


 それらは自分の頭からすっかり抜け落ちた頃に、ふとした拍子でやって来る。


 死神の鎌よりも恐ろしいモノを携えて。






勝堀(ガッポリ)……円稼(マドカ)さんで間違いないですね?」


「はい……?」


 聞き覚えの無い声が自分の名前を呼ぶので振り返ると、黒服の怪しい男がそこにいた。


 頭はベッタリと固めて枝毛の一つも見えず、サングラスで目の色も分からない。

 中肉中背のこれといった特徴らしいものが見当たず、つまらない男であった。


「あの、変な勧誘とかマジで要らないんで……」


「勧誘ではありません。 催促のお話、つまり取り立てですよ」


「はぁ? 取り立て……?」


 取り立てとはフィクションでよく見る、あの借金の取り立てのことを言っているのだろうか。


 自前のクレジットカードすら持っていないというのに、どこから借金するというのだ。


 まったくもって身に覚えがない。

 明らかに詐欺か何かだ。


「ちょっと、何言ってるか分かんない。 あのさぁ、しつこいとケーサツ呼ぶから!」


 今は友達と分かれて帰宅途中だ。

 女一人の所を狙う、いかがわしい輩の予感がビンビンしてくる。


 こういう時は、いつでも通話出来るように番号を押した携帯電話を見せつけ撃退するに限る。


「あまり騒ぎ立てないでください。 どうせ徒労なんですから」


 この男は、警察のことをハッタリか何かだとでも思っているのか。


 小娘だからとナメられるわけにはいかない。

 本当に電話して困らせてやろう。


 そう思い、携帯のロックを外して通話を開く。


「え、なんで……!?」


 緊急連絡の短い番号列、それを押しても反応が無かった。

 こんな短い番号を間違えるわけがない。


 なんど見直しても、やはり合っている。

 それなのに何故。


「残念ですが、その携帯端末は既に使用できません。 円稼(マドカ)さん、あなたの署名した書類により、多額の借金が引き継がれたためです」


「なによそれ! 意味分かんないんだけど! 携帯直せって!! ふざけんな!!」


 悪戯にしたって悪趣味すぎる。

 他人の携帯へ勝手に何か細工するとか、明らかに異常だ。


 それに署名とか書類がどうのこうの言っているが、知らないものは知らないのだから、知ったこっちゃない。


 何よりも、携帯が弄れなくなった怒りが先に来て、思わず黒服の男を叩こうと手を挙げた。


 現代女子から携帯を取るなんて、死ねと言っているようなものなのだから。


「そこまでです」


「痛っ! なんなの、もう!」


 振り上げた手が、誰かに力強く掴まれている。

 かなり本気で止めに来ているようだ。


 首を反らして視線を向けると、自分の後ろにも別の黒服がいた。

 いつの間に近付いていたのだろうか。


 それだけではない、その後ろにはもっと大勢の黒服だらけで道を埋めているではないか。


「ヒィッ!? な、なになのアンタ達!! ちょっと、コレどういうこと!! 誰か助けてよ!!」


「落ち着いてください。 いいですか、もう一度言いますよ。 勝堀(ガッポリ)円稼(マドカ)さん、あなたには膨大な借金が背負わされたのです。 私たちはその取り立てに参っただけですよ」


「なによ、借金って!!」


「コチラのことです」


 そう言うと、最初に現れた黒服がラミネートされた書類を開く。


 汚れたり折れたりしないよう、厳重に保管されたソレはかなり本物っぽく、そして何よりもやたら横長の金額欄が目に付いた。


「いち、じゅう、ひゃく、せん………………おく、じゅう、ひゃく……ひゃくおく!?」


 小学生が考えたみたいな、あまりにもデタラメなゼロの数。

 数えるのだって一苦労だ。


「そうです、もろもろ合わせてしめて『100憶円』。 耳を揃えて、それを返済していただきたいのです」


「馬鹿言わないでよ! なんでそんなもの返さなきゃいけないの!?」


「あなたがコチラの書類にサインしたからですよ」


 黒服が優しく諭すように指をさす。

 そこには、確かに自分のよく見知った自筆のサインが(つづ)られていた。


「知らない知らない!! そんなの知らないってば!! 離してよッ!!」


「知らないでは通りません。 ここに証拠があるのですからね。 それで、どうやって返済するか考えはありますか?」


「わっかんないよ!! もう全部知らないの!! 知らないんだってば!!」


 これは何かの間違いに違いない。

 頭が真っ白になってくる。


 まるで悪夢でも見ているみたいだ。


 現実逃避がしたくて、もはや自分の口からは『分からない』と『知らない』の二つしか出てこない。


「まぁ、そうでしょうね。 コチラも普通に返済できるなどとは、初めから考えていません」


「へ……?」


 この時、一瞬でも救いの可能性を信じた自分は愚かであった。


 実際には、死よりも辛い地獄が待ち受けてるとも知らないのだから。


円稼(マドカ)さん、あなたにはこれからVR世界にて、返済のために働いていただきます」

作者のTwitterはこちらです。

更新情報などを随時載せていきます。

https://twitter.com/pepsi_tw6

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ