一匹の化け猫と僕
不器用だけど、相手のことを心配している。オスの化け猫
そんな、化け猫を心配している。優しい僕
二人の、すれ違い、いろいろあるけれど
でも、相手を思っている。そんな優しい二人の物語です。
君と出会ったのはいつだろうか。
君が僕のそばを風のように駆け抜けるたびに、僕は、この言葉が頭の中でよぎる。
何十年前ものアルバムを開くとそこには君が写っているのに、隣を見れば横でくつろいでいる君がいる。
君は呑気にあくびをしているね。何も考えてなさそうに
そんな君の姿を見るとどこか気持ちが和らぐ。
そんな君は僕の気持ちとは裏腹に僕を見ると否やどこかへ消えて行ってしまう。
僕は嫌われているのかもしれない。
お前と出会ったのは、赤ん坊のころだった。
いつ見ても、赤ん坊と言うものは、もろくて繊細だ。
お前は知らない間にすくすくと成長をしていった。
家族とのアルバム、お前と一緒に写ることも増えてきた。
隣を見ればバタバタとせわしなく動き、挨拶もなしに家を飛び出してしまう。そんなお前がいる。
お前はいつもどこか、忙しそうだ。
いつも何かに追われ、いつもどこか慌てている。
ゆっくり行動できないのだろうか。
人間はもろくて弱い生き物だと知っている。だからこそ心配させるな。
お前を大切に思っているのだから。
ある日を境に君は僕のそばに居座るようになった。
何があったのか、僕にはわからない。
あんなに、僕を見るときに、こわばっていた顔が、わが子を見るような優しい顔に代わっていた。
環境の変化なのか、時代の流れなのか、君はすっかり変わっていってしまった。
僕のことを嫌そうな目で見ていたあの時の君は、どこへ行ってしまったのだろうか。
少しだけ、どこか憎たらしい君に戻って欲しいと思う僕の願いは、図々しいのだろうか。
お前のそばにいるとお前は変な顔をしてくる。
虫の知らせが来たんだ。もう長くはないと。
これでお前らの家系を見ることもなくなるとなると、清々する。
お前が最後なんだ、お前が立派にならねぇと、逝くときいい気分で逝けなくなるだろ、頑張ってくれ。
昔を思い出す。北から南までいろんな所について回った。お前の先祖も沢山見送ってきた。お前に見送られるなんてな。
お前は俺が見てきた中で一番の出来損ないだ。
だからこそ、厳しい目で見てきた、こんな最期になるなんてんな。
嫌になるぜ。
お前が寂しそうな顔をすることに、うすうす、気が付いていた。
お前には頑張って欲しい。ただそれだけを願っているんだ。
逝くときは俺だけで逝く。お前は悲しむな。
君が倒れていると近所の人から連絡が入った。
君は、馬鹿だ、一人で逝ってしまうなんて、僕は君のことを、大切にしていたのに、君は何にも分かっていない。
いや、何も分かっていなかったのは、ぼくなのかもしれない。
思えば、君はいつもと少し違っていた。
近くにはいるのに、体だけは触らせてくれない君が、今日に限って触らせてくれたこと。
いつも、何があっても泣かない君が泣いていたこと。
玄関に一輪の赤いガーベラが置いてあったこと。
すべて君がやらないことだらけだった。
君がいなくなってから花言葉を調べたんだ
前向き、限りなき挑戦てね、君なりの応援だたのかな。
君に心配されないように、僕、頑張るからね。
もう時間がねぇ
俺なりの感謝はこれしか思いつかなかった。
いつも、お前は、俺のことを撫でさせてほしいといつも言っていたよな。
なんで、一回も泣かないのとも言ってきたよな。
あまり動けない体でお前の願い叶えてやったんだ感謝しろよな。
どこぞのばーさんが言ってたんだ、
この、花言葉は応援の花言葉なんだよ、てな。
正直言うとお前が心配だ、最後まで見届けたかった。
だけど、俺にはそんな時間はないんだ。
だから、お前にこの花を置いてく
赤いガーベラを
最期を一人で逝って悪かった。
お前の悲しむ顔を見たくなかったんだ。
すまなかった。
こんだけ苦しみながらお前に尽くしたんだ、有名にならなかったら、
許さないからな。
まぁ、冗談だ、お前のことだ俺は心配なんかしねぇ。
お前らしくぼちぼち頑張れよ。
初めて書いた小説でした
誤字などがあったら、すいません。