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ファイヤランスは超能力  作者: ふぁいやらんす
1/6

貴方は逝ってしまった

俺は火が好きだ。

ロウソクのような小さな灯火、暖炉の薪が燃え盛る姿。

俺は炎がとても好きだ。

不法投棄されたゴミ袋共にぶっかけたガソリンに火を放ち荒れ狂う様。

何故かそこから飛び火して我が身を焼き尽くすかの如く燃え盛るその景色すら美しい。

俺はただ、火に魅入られた犠牲者の一人にすぎないのではないだろうか。


「おおまさしよ、死んでしまうとは何事か…」


いや、俺はただ、火に魅入られただけの…


「そなたは山に不法投棄されたごみを燃やしていたら延焼して逝っただけである」


それもまた、火に魅入られた者の末路としては、よくある話ではないだろうか。

きっとそうであって欲しいそうに違いないむしろ運命力の定めに殉じた者のあるべき姿だ。

誰しもが持って生まれた運命から逃れる事は出来ないのではないだろうか。

俺はそんな悲運に捧げられた犠牲者の一人にすぎないのではないだろうか。


「運命を語るにはしては、しょっぱい最後だのう」


うるさいですよそして誰?

俺は不法投棄ヤロウの犯した過ちが何処かの誰かに裁かれる事を祈ることしかできないただの犠牲者にすぎないのだ。

もはや我が手によって裁く事は永久に失われてしまった悲しい犠牲者の一人に…


「それはもういいのである」


そうですか名も知らぬ光る人。

きっとあの不法投棄ヤロウにはしかるべき末路が訪れる事を祈っておこう。

そして俺は今どうなっているのですかもしやこれがいわゆる黄泉の…


「おおまさしよ、死んでしまうとは何事か…」


あ、これ竜の子問答(たつのこくえすと)でしたか。

それなら次はもっと上手くやります、まずは服装を防火性の高い物にして…


「残念ながら、そなたはこんてぃにゅー出来るような世界の生物ではないのじゃ」


まぁ、そりゃそうですよね知っていました。

ただの一般成人男性極まりない事この上ない。

思い残す事はダダ余りではあるものの、やり残した事はそれ程ない我が人生。

悔いはあるが次の運命はきっともっと楽しいと思うのでどうかひとつニューゲームをば。


「…何やら変に達観しているというか、何やら状況を勘違いしているというのか…」


いや、これあれでしょう?

世間で流行りの転生的な何かでしょう?

こう見えてもそれなりのなろらーである所の我が人生。

出来ればそれなりのチートを頂いて、それなりのなろーを送りたい所存。

多くは望みますまい、ただ、出来うる限りのチートを頂ければ…それだけで十分。


「それだけとは」


そうですね、例えば…無限の黄金、とか。

あるいは…無限の白金(プラチナ)、とか。


「それはただの換金性が高い鉱物である」


ぶっちゃけ無限に金があればそれだけで十分では。

他の異世界を望む人、おれつえーした過ぎだと常に思っている。

金があればそれだけでいいじゃないか。


「それだけというには過ぎた欲望である」


むぅ、ダメか。

黄金だけでいいのに…

それだけで、ごはん食べ放題なのに…

人の金で食う飯は最高である。


「…とにかく、そなたは死ぬべき運命ではなかったはずであるのだ」


やはりか。

そうでなければこの運命力極まりない俺へ与えられる最後にしてはしょぼすぎである。


「…何かしらの外なる影響からそなたが選ばれた、と言えなくもないのう」


なるほど。

炎に殉じたその様は、美しいと言えなくもないが…

やはり俺にはまだやらねばならない事があるのだな、わかる。

まずは不法投棄ヤロウに正しき罰を与えねば。

世界が許しても俺は許さん。


「元の世界に戻るのは無理である」


そうですか、残念です。

ああ、ただただ憎い、憎いヤツを燃やし尽くしたいだけの人生だった。


「…とにかく、影響を及ぼしたと思われる世界への転生が行われる」


いわゆる異世界召喚ですね、わかります。


「…そなたには、あるべきだった残りの人生分を対価としたチカラを授けよう」


無限の黄金で。


「…そのチカラとは、そなたの身に起こった最後の現象に影響を受けるものである」


ふむ。

無限なる炎の輪舞(エンドレスワルツ)で。


「…中二病は心の病、もはや手遅れ…か」


言い方よ。


「つまりは、炎に関するチカラが与えられると考えよ」


紅蓮に燃え盛る永獄(エンドレスセレナーデ)で。

いい感じに燃え上がる風で。


「わからぬ」

「具体的なチカラを求めるがよい」


なんと読解力の儚い…

それでも光る人か。

なんだかすごいアレでいい感じにできないものか。


「…ここままだとそなたには体中の穴という穴から火が噴き出る面白人間パワーが授けられ…


超能力で。


「ふむ?」


いわゆるステキな超能力でお願いします。

何かを浮かしたり飛ばしたり電撃が飛び出したりする凄いアレで。


「超…能力…」


ええ、わかるでしょう?

そんな素敵なサムシングで。


「…ふむ…わかった…ふむ…超…チカラ…」


…本当に?

というか超能力はご存じで?


「ふむ…まぁ…まずは炎のチカラを与えよう」


クワッ

ピカー

俺の体の輪郭が薄ぼんやりと赤く輝きを放ちだした。


…なにやら適当に光らせただけに見えるのだが。

大丈夫?

ただ赤いだけの人で終わったりしない?


「そして…残りの超チカラは、そなたの転生時に発現するであろう」


本当に?

これ、超能力がよく分からないから適当に言ってるだけじゃない?


「…それでは、異なる世界で己が超チカラをもって世界に己を示すがよい」


なにそのふわっとした感じは。

大丈夫?

これ誤字っ転生じゃない?

やっぱり鈍色に輝く紅蓮の大輪(クリムゾンストライク)とかでいいんじゃない?


「…願わくば、中二病から解き放たれ真なる人間となれますように…」


言い方よ。



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