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理不尽狂詩曲の演奏開始(破壊神添え)

境内を進むにつれ、晴れかけていた空がどんより重くなっている、かのように感じられる。

青空はね、雲の隙間に見えるのよ。進行方向にもね。

だがしかし、気配は青空とは程遠い。

青くない空を見上げながら、さらに重くなるような空気を感じながら、黄昏が近づいているような気がするんだ。

あー、これもう帰ってもいいかな?


『さっさと済ませてこいよ』


頭の中で揶揄う様な声が聞こえてきやがった。

コイツだ。ヤツだ。

理不尽の元凶その二。


『うっさいわ。毎度毎度一般人に何やらすんじゃこの破壊神』

頭の中で毒づき、ため息がまた増える。


『クッ、相変わらず面白い反応だな。俺様に対してそんな口調で返すのはおまえくらいだぜ』

ケケケって声が聞こえてきそうな笑い声が脳内に響く。

おまえはいつも楽しそうだな。

私は楽しくないけどな。

大体な、破壊神を名乗るのは低級霊と相場が決まっているのに、何故うちには本物がいるんだよ。

訳がわからないよ。

『本物の俺様だから言うが、今回のは短期決着推奨案件だ』

『マジかー』

『さっき【中】で聞いてきたが、深夜に仕掛けられたがすでにデカくなってるからさっさと済ませてくれって言われた』

『マジか』

『大マジだ。だから俺もここにいる』

…あんみつエンジョイタイムが遠のくのはつらいな…

がっでむ!

『よし、即刻ぶちのめそう』

『おっ、物騒モードか?おまえの物騒モードは久しぶりじゃねえか?』

『私のまったり桜堪能お散歩タイムを邪魔した罪は重い』

悪即断、これすなわち正義なり。

『おー怖っ』

肩をすくめたような仕草を声に込めるな。


「脳内漫才は終わったか」

人の顔見ながら言わないでもらえませんかね、たーさんや。

そもそも破壊神と漫才なんて言うなし。

こっちはうんざりじゃ。

やれやれだぜ。

「破壊神からは『さっさと済ませろ』ですってよ」

アメリカナイズなオーバーアクションで肩をすくめたポーズで返してやるわ。

「だろうな。さっきからさらに増幅してやがる」

ケッ、とはき出すような言い方。

その口調と仕草がオーダーメイドのスーツ姿と調和するのが腹立たしい…

身長差があるので目だけを上に上げて、思わず軽くにらみつけてしまう。

そんな私の様子を軽く一瞥し、小さくため息をつく。

眼鏡を軽く上げてこちらに手を伸ばして、一言。


「早く出せ」


せかすような手招きに対して、返事代わりに私は左手の手のひらをたーさんに向ける。


「霊刀、七支刀(ななつさや)


名を呼ばれた刀が、私の手のひらから柄、本体の順にたーさんの方に進みゆく。

刀が全て顕現し、おもむろにたーさんが柄を握り引く。

私の中から完全に引き出した後、刀を横な気に振るうと軌跡に光が残る。


七支刀。これは実体に宿らない刀の魂。

実用性がない形のため、儀礼でのみ使われたと言われている刀だが、実際には邪を祓う儀式に使われていた。

というのを本人(本刀?)から聞いた。

今回の内容だと七支刀が適任かなと思っている。


私の身体を鞘として収まっている霊刀を使い、たーさんが動く。

これが、オーダーの理由。

私じゃないとできない、たーさんとコンビを組んで行う仕事である。

…できれば休日は返上したくないんだけどなあ…

いつくるかわからないオーダーを待つのはしんどいねん。


『おい、俺にも刀を寄こせ』

脳内に響く破壊神の声。

へえ、仕事するつもりなんだ?

『お前の守護の意味もあるが、【中】の意向もある。ほらさっさと出せよ』

減らず口ばかりが脳内に聞こえるが、文句の応酬ばかりも時間の無駄だ。

はいはいやりますよー出しますよー。

先程同様、左手に意識を置く。

出たがっている剣の気配がある。

左の手のひらを上に向けると、霊剣の名前を呼ばずとも、自ら出現する剣が一振り。

先の七支剣よりも大きな、私の身長くらいの、本当に大きな剣。

剣身には紅蓮の炎をまとっている、うちで一番の攻撃特化な性格。


布津御霊。

ここに顕現。


燃えさかる剣の柄を握り、破壊神もたーさん同様に剣を横なぎに振るった。

こちらは炎の残滓が軌跡に揺れた。

ねえちょっと、これオーバーキルじゃない?

心配になってきた。

やだよ、いくら実体がない刀剣達だからって、戦闘の余波で周辺破壊の一助になるのは。

『まあまかしとけや』

楽しげな破壊神の声がフラグじゃないことを祈る。


「楽しい時間の始まりだ」

たーさんの勝利宣言かのような、開始のコール。

オーダー、処理開始です。

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