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へたれダンマス奮闘す  作者: 南雲司
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お帰りなさいませ

アサミの単独飛行が入る筈でしたが、飛べませんでした。

スキンヘッドのおっさん、でしゃばりすぎ。

[プルート]

 その日、シャオは神樹の森教育隊の隊舎で、ペタンペタンと判子を()す仕事をしていた。概ねメ○ラ判でも差し支えないのだか、根が生真面目なシャオは一通り目を通す事にしていた。

 そのなかには、虎治を一時的に紫の薔薇小隊ワルキューレプラトーンに編入する申請書もあり、まさにその書類を手に取った処で来客があった。虎治に取って幸運だったのは、その来客の顔に眉毛が無かった事である。

 気を取られたシャオは生涯で唯一のメク○判を捺した。


「騎士団副団長のプルートと申します」

 連絡艇に便乗したのだろうか、公式なルートを使って根回しを十分にしなければ、騎士団員が森に入る手段は限られる。勿論、軍府の飛び地であってみれば、治外法権であるので違法と言うことはない。

 プルートは飛竜に壊滅させられた部隊の生き残りだと自己紹介した。分隊を率い遅滞作戦からの帰投中に、あの忌まわしい核爆発があった。馬を飛ばして駆け付けたがとても生存者がいるとは思えず、なんの魔法であるのか追撃があるのかも知れず離脱した。

 それが彼の分隊を救った。留まれば放射能症で全滅していただろう。

「運良くこれだけで済みました」

 頭をつるりと撫でる。


[飛ぶ騎兵]

 副団長は、勿論その話をしに来たのではない。ただの、しかしプルートにとっては重要な、前振りである。

「その時敵の飛空艇に追い回されて、思ったんですよ。もう馬に乗って戦う時代じゃない」シャオは黙って聴いている。

「我が騎士団に航空戦隊の運用をご教授願いたい」

 暫く語った後漸く本題を切り出した。

「それは筋が違う、司令と参謀長に頼むべき」

「お二方にはお願いしましたが、ハイマオ閣下に了承を得よと言われまして」

 現在の空軍は森人の技術や政治的な決定に深く関わっている。シャオを通して森人の意向を伺う必要があると考えたのだろう、騎士団は森人と友好的な関係を結ぶのに失敗している。

「森人由来の技術や技法は渡せない。理由はそちらも良くご存知」

「エルフごときの技術を……」

 シャオはさらりと髪を掻き上げる。このタイミングで耳を見せてどう反応するかでこの男を判断する。

「エルフ…」

「神樹の森でエルフ以外の者がエルフをエルフと呼べば死罪」

「失礼した。失言だ、取り消す」

 冷静な男ではあるようだ。しかし口調の変化は隠しようがない。が、許容範囲だ。


[音の壁]

「今日は、皆さんにご報告があります」紫の薔薇小隊ワルキューレプラトーンのブリーフィングルームにサルー司令が来ていた。

「これは三級機密なので隊外に洩らす事は禁止です」

 三級機密とは民間に流布(るふ)されては都合が悪いかもしれない物だ。ルーム内に緊張が走る。

「水軍で高速度急降下の試験をしていた飛空艇が引き起こしの際、空中分解を起こし、搭乗員二名が殉職されました」

 微かにどよめくがミーティアの一睨みですぐに鎮まる。

「分析の結果、音速近い速度が出ていたそうです。急激に恐ろしく強い抵抗が発生したのが原因と目されています」

「皆さんも過速には十分に注意してください」

 サルーがわざわざ出向いたのは、自分の肝いりで発足したプラトーンの様子を見に来たのもあるが、へたれダンマスである虎治の面構えがどう変化したかに興味があったからでもある。

 残念、司令官殿、シャオの判子はつい今しがた捺されたばかりなのだよ。

 まあ、足を伸ばして見事な空中姿勢で降下訓練をこなす虎治を見ることが出来たので成果はあった。

「男子三日だな」


[休暇]

 少し遡る。初の休暇でダンジョンに帰った三人の[嫁達]の事だ。構成の都合と言うか、書くの忘れてました、ご免なさい。(メタ)

 三人は、プラトーンの制服からダンジョンの制服、ダボティーとパンツ、に着替え、転移門を潜った。ズラリと並んだ妹達が出迎えた。その事には驚きはしない。コアから新人が増えたと聴いていたからである。驚いたのは…。

「お帰りなさいませ、お姉さま方」

 練習を積んだ事が窺える揃った声で、お揃いのメイド服を着ていたのだ。

「なに?それ、ずるい」

 生地は少し前に召喚に成功したシーツを裁断したもので、白一色ではあるが、紛れもないメイド服、フリフリが生地のお陰で少しごわごわしているが、女の子なら一度は着てみたいと思うあのメイド服なのだ。

「ちよっ、すこ」

 新たに設えられた裁縫室で、工作人形がものすごい速度で何かを縫っていた。

「ミシンより速くね?」

 作業の早さより、運針の速さに圧倒される三人。

「これ商売に、なんじゃね?」ダンジョンの未来は明るい。

 ちなみに、虎治は気合いが入っていなかった時期でもあり、補習でまだ帰宅していない。


[付き合い方]

 交渉の相手がエルフとあっては、纏まらぬかとプルートは半ば諦め掛けていた。すると、水軍頼みになるのだが、これと言った伝手(つて)もない。

 ところが、エルフ=森人由来の技術を諦めると告げると、エルフの女は新たに図面を起こす必要があると、要望を訊いてきた。

「戦闘用なら、鷲型をベースに発動機と火砲を強化した物になる。また、森人由来のコンパクト化と隠蔽が使えない。機体は大きめになるが宜しいか」

 一個中隊程の戦力は必要と、森ではない方の空軍府で数十名の練習生も受け入れて貰える事にもなった。帰り際、深々と頭を下げてその場を辞した。

「人族に偏見のないエルフいや、森人もいるのだな」

 これからはエルフ=森人とのつきあい方を考えなけれはならないと、副団長は肝に命じた。


次回はきっと飛ぶ。虎治?誰?

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