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へたれダンマス奮闘す  作者: 南雲司
3/18

槍と鉄砲

魔石を手に入れます

[きょうどう]

「はっ、ではそのようにお願いするであります」

 中尉は遠話を切ると、虎治に話し掛けた。

「この近くを周回中のエル…森人の分隊が協力をしてくれるそうです」

 今、エルフって言いそうになったよね。

「この先に空き地があるのでそこにモンスターを追い込むそうです」

「?」

「森人と話してたの?」

「元イバーラク人ですので、結婚して森人になった」へー。


 空き地に着いて、まだ暫く時間がありそうと言うことで、兵隊の配置の仕方とか突撃のタイミングとか色々教えて貰った虎治は首を傾げている。なんだか良く分からないのだ。

「兵曹、手本を見せて差し上げろ」

「教導せよと言う事でありますか?」

「ん?…いっそその方が良いか、命令、ダンジョンマスター殿を教導せよ」

「マツシン二等兵曹、ダンジョンマスター殿を教導致します!」

「お前らも手伝え、状況!ダンジョンマスターへの教導」

 それから、分けの分からなさは加速した。足の開き方から敬礼の手の角度、文字通り手取り足取り直された。

 号令の掛け方がおぼろに分かったような気になった頃森人から連絡が入った。

「もうすぐ来るそうです、指揮権をお渡しください。今回マスターは見学です」

 人形達に兵曹に従うように言うと、意外なことに、兵曹に向かい敬礼らしき事をした。俺より賢いんじゃね?虎治は少し凹んだ。


[モンスター]

 五頭の猪が飛び出してきた。ファングボア、モンスターだ。

 兵曹の指示で左右の四頭が射殺され、

 突進してきた残りの一頭を四つ足人形二体で止めた。

 いや止めきれず弾き飛ばされた。

 その後方にはやはり二体の四つ足。

 今度は止めた。


 人形達の得物は石器の槍だ。

 取り囲んでブスブスと刺す。

 十本程突き立った処でボアは倒れた。


「どうでした?」

「鉄砲が欲しい」

 兵曹の指揮がなければ例え一頭であったとしても、二十体の人形で倒せたかどうか微妙なのだが、虎治はその事に気付いていない。

(まだ、子供だしな)

 中尉は嘆息しつつ、撤収命令を出した。

「あ、それ、俺の仕事」

「残念ながら、マスター殿には指揮能力が不足しております。まず我々の行動を観察して全体の流れを掴む事に留意してください」


 五頭のボアはその場では解体せず血抜きと内臓の掻き出しだけをして、ゴブリンの村に運ばれた。運搬に使われたのは即席の橇で斬り倒した細木を二本づつ組にして横木を何本か渡す。その上にボアを載せ、片側を持ち上げる。その斜めになった状態で曳くのだが、意外に使える。生木であることがポイントだそうだ。


[魔石]

「えー、一個で良いよ」

 魔石は虎治にとって大した高級品だ。自分の眷族である人形達が倒した物ならまだしも、共和国兵が一撃で倒した物まで貰うのは気が引ける。欲しいのは工作人形用の一個だけなのだ。

「今回は此方の都合でお手伝いしただけですから、これはマスター殿の物です」

 中尉は意外に思っていた。ちゃんと働きに応じた分配の考慮が出来るではないか。リーダーとしての資質は無い事も無いかもしれない。

「じゃ、これお礼」

 寄越された五個のうち二個を戻して寄越す。三個でないのは浮いた四個の半分と言う事なのだろう。


[指揮官訓練]

 即席橇の上には解体されたボア一頭分の部材と、要らないならと貰った、数頭分の骨材が載っている。曳いているのは勿論人形。虎治はホクホクだ。これは大戦果だ。

「かまえ!…って!」

 杖代わりの棒切れを振り回して、兵曹の指揮を真似している。壺に嵌まったようだ。帰る足取りも軽い。


「ふむ」コアは独り言(ひとりご)ちる。

「森のダンジョンマスターに頼んで鍛えて貰うのも有りですね」

 何体かの人形とリンクを繋いでモニターしていたのだが、意外に有益な情報が得られた。


 シャオにとってのマスター虎治は女の敵的な何かだ。[敵]と言いきらないのはまだ子供であるからで、数年後成人した暁には、はっきりと[敵]認定する事になるだろう。

 眷族とは言え女性をモノ扱いする男はロクなものじゃない。とは言え、イバーラクの一般的な男尊女卑からして、さほどの距離があるわけでもなく、ダンジョンとして、組織として対立する程の物でもない事は承知している。

 個人的に友誼を結びたいとは思わないだけだ。


 その虎治を預かって欲しいと歪なコアから申し入れがあった。

「指揮官訓練?」

「はい、先日ゴブリン村駐留の士官様方に極簡単な指導をして頂きましたが、事の他有効に思えました。この際、本格的な御指導を御願いできないかと」

「問題がいくつかある。歪なダンジョンは暴走しやすい。何日も虎治を引き離せないだろう。それと[嫁]達と何日も会わずに居られると、此方が身の危険を感じる」

「それについても、最初二三日で一旦お返し頂いて、徐々に日数を増やしダンジョンの[親離れ]も目論んでいます」

 [嫁]達については言及しない。禁止したところで、勝手に召喚してイチャイチャよろしくやるに決まっているからだ。

 その図はシャオにも見えていた。


「拒否する。就寝及びそれについて付随する行動はそちらのダンジョンにて行う事。これは絶対」

 兵舎内でイチャコラされては兵達が不憫すぎる。


 結局、朝八時から午後三時までの通い教練が決まった。

「期間はどうする?」

「兵学も叩き込んで頂きますので三年程は必要かと」

 どこから聞いたのか、この教練には森人の若人も参加し、神樹の森兵学校の魁となった。

 


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