偽りの姫君
エピローグの筈だったんですけどね。
書いてるうちに膨らんで、なんか違うものになりました。
あれ?
[祭壇の少女]
工作艦は城の土台である小島へ着陸した。ヴァルハラと森人空軍は万が一に備えて上空で待機中である。シャオ達は祭壇のある広間へと通された。
「北校の制服じゃん」
祭壇の少女に虎治が反応した。
「キタコーとは?」シャオ。
「俺が入る筈だった高校」
アサミ達は何も言わないが、頭を振っている。地元では有名な進学校らしい。虎治の頭で入れるとは思えないと言う意思表示だろう。
ダンジヨンマスターと思えた風竜は、コアや神樹と同じプロシージャで、この少女がマスターだったと言う。百年生き、百年前に自刃した。
「何故自殺を」
「知ラぬ」
「これ何か書いてある」
虎治が日記代わりにしていたと思わしい生徒手帳を見付けた。
「なにこれ?漢字の練習?」
中程までは普通に日記で、ダンジョンの運営に関する物が主であった。
しかし、それ以降には同じ単語がズラズラと並んでいる。
最後の辺りでは余白にまで細かい文字でびっしりと書き込んである。
シャオは病的な物を感じた。
「何て書いてある」
勿論日本語は読めない。
「寂しいって」
[勇者]
このダンジョンの眷族には風竜しかいない。プロシージャが風竜として具現化しその強さへの誇りから他の種族の眷族を拒否したのだ。
「ならば、マスターを殺したのは貴方」
風竜は応えない。
人は一人では生きて行けない、寂しさで死んでしまうのだ。
そうシャオは言う。
「…やはりそうナのか」
「我はどうすレば良い。このまマでは和子様まで死んデしまう」
「まず貴方は消えるべき、新しいプロシージャが必要」
虎治が望んだからコアはコアになった。
神樹も森人が望んだからそうなったのだろう。
ではこの娘は竜を望んだのか。シャオにはそうは思えない。
「貴方は貴方の来た処へ帰るべき」
澱み、そう、結節点にしがみついた澱みが具現化したのだ。
シャオは既にそれを経験している。
「勇者」
[御呼びで御座いますか]
半ば神となった勇者にとって時空を移動するのは差程の事ではない。ただ人の記憶は時間を越える事は出来ない。核となって勇者は二百年を遡り城のダンジョンに取り付いた。それが悲劇の始まりだったのだ。
風竜=勇者が消えた後祭壇の少女も消えた。勇者の罪悪感の証としての存在だったようだ。
「サスケラ」
「はい」
「この場にいるものの中からダンジョンマスターを決めなければならない」
「私は虎治と婚約している」
「問題ない、ダンジョン同士の婚姻はダンジョンを強化するだろう」
「ただし、虎治の眷族になってはいけない。マスターはあくまでも独歩である必要がある」
「えー、子供出来ちゃうよ」虎治
「城のダンジョンは虎治のダンジョンより成熟している。同様な事は可能だ」
シャオはコアを呼んだ。
「ここへ来て、コア」光が現れて、黒い球体に変わる。
「デュプリケイトが欲しい。まっさらの奴」
「畏まりました」
「これはプロシージャの器、殿下の望む魂が入る」
そう簡単な仕組みではないがシャオは説明を省く。マスターとなればどうせ直ぐに知れる事なのだ。
サスケラは考える。これはイバーラク王国の再興とも言えるものだ。自分はとても器ではないと、首長の座を叔父に譲ったがその叔父も君主となることは控えた。それが故の共和国でもある。
しかし、ダンジョンとなるとどうであろう。虎治のコアの様な補佐が付くのであれば、私でも出来るかもしれない。継ぐことを拒み王国の滅亡の因と為ったことの後ろめたさは固い凝りと為っていた。
「分かった、ダンジョンマスターと成ろう」
受け取ったコアそっくりのデュプリケイトが光を発した。
「お呼びで御座いますか、お嬢様」
メイド服を着た美少女が優雅なカーテシーをした。
[種]
ゴーレムダンジョンと城のダンジョン、二つのダンジョンを保護下に置いた事で共和国の発言権は、王国時代も含め、此れ迄にない程大きくなった。
ただ、空軍のみの功績である事が、共和国内部に少なからぬ、不和の種を撒く事になった。
サルーを担いで新たな王国を立ち上げんとする勢力、有り余る力を削ぐ為に空軍を分割するべきとする勢力、陰でこそこそ空軍の悪口を言って回る勢力、中には強大な軍事力を以て中原を制覇すべしと、巷間で説いて回る者も出たが、いつの世にもいる跳ね上がりと見なされていた。
しかし、雑草の種は少し眼を離している間に、芽吹き蔓延る。
[オセロゲーム]
アサミは自問する。
虎治はアサミにとってなんなのだろうか。
アサミは虎治にとって、ただの眷族に過ぎないのだろうか。
「またまけたー」
虎治はオセロでアサミに勝った事はない。
が、閨に入れば必ず挑戦してくる。そして何度目かの敗けを有耶無耶にするように事に及ぶのだ。
だが、今回はそうはさせない。
アサミは襲い掛かった。
分割された、アーカイブの中の閨で、百人の虎治がそれぞれに嫁達の相手をしているだろう。
だが、いまこの虎治はアサミだけの物なのだ。
[マリー ザ ママ]
マリーがまた変な物を拾ってきた。羽の付いた蜥蜴である。
「翼竜の子供か?元有った所に捨ててきなさい」
当然ながら、空軍元帥を拝命したばかりの、サルー・モイ・チュダイ空軍大将閣下の命令は無視され、マリーはトコトコと犬小屋に入っていった。
飼うつもりらしい。
[偽りの姫ギミ?]
「エル…森人の美少女が来たの?」
命を救って貰ったお礼らしい。
勇んで、応接間にゆく。
軍装凛々しい若者が立ち上がって挙手の礼をした。
「男じゃん!」
虎治の悲痛な叫びが、ダンジョンに響いた。
幾つかの伏線は、次のお話のためにとってあります。
誤字脱字よろしくです。




