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へたれダンマス奮闘す  作者: 南雲司
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囚われの姫君

まあ、こんな感じです

[長]

 巨大な門扉を開け放した広間の中で、風竜のおさは微睡みから覚めた。違和感を感じたからである。暫く周囲を探ってみたが判然としない。いや、外が騒がしい。またあの小蠅共が来たか。

 だから言ったのだ。先日得意気に小蠅を一匹退治したと報告したものがいた。肩口が抉れ出血していた。小蠅を構うなと叱責したが、その報復だろう。

 しかし、違和感の正体はそれとは違う。もっと腹の底に何かが忍び寄るような…。けだし、出ない事には何も分からないだろう。

 巨大な風竜は祭壇の上に横たわる、まるで生きているかのような百年前と寸毫も変わらぬ姿の少女に敬礼する様に頭を下げると、外に飛び出した。


[レスキュー]

 虎治はコアの指導に依って新たに紐付けした気室に丸太気球を取り込む事が出来た。得意になっていると、それくらい出来ないとダンジョンマスターとは言えない、と言われた。

「ちぇー、もっと誉めてくれてもいいじゃん」

「それより、さっさと引き起こさないと墜落しますよ」

 即席の紐付けは脆い。ほんの少しの手元の狂いで簡単に千切れてしまう。虎治は慎重に引き起こした。

 少し慎重すぎたかもしれない。梢が交わせない。下生えを掠めながら、木々の間を縫うように飛ぶ。

 急な回避でも紐は切れる。先読みに先読みを重ね次第に高度を上げ漸く梢を交わした。

「ふー死ぬかと思った」


[戦闘]

「見付かった?」

 ミーティアとマリコが下がってアサミの輪番になっていた。そのアサミの前に風竜が五頭おりてきた。あの大型もいる。

 風竜の長は勘が当たった事を知った。眼には何も可笑しな物は見えない。だが確かに何かがいる。ブレスは至近でしか効かない。魔素の乱れで霧散してしまう。眷族達を散開させて咆哮を放った。

 隠蔽やぶり!死角を突くために回り込もうとしていた列機がみつかった。

 近場の二頭が襲い掛かる。

 逃げ場は下しかない。

 上は城の土台で塞がっている。

 すぐさま外翼をパージして降下する列機、

 角度が浅い、反撃する気だ。

 その反撃のポイント、

 上昇反転する為のポイントに大型が向かっている。

 ヤバイ、回避できない。

 アサミは大型の頭を志向してボルトを放った。


[貧乏なダンジョン]

「えー、もどれないのー?」

「無理をしたので、真空結界が消耗してます」

「魔石ないの?」

 割りと大きめの魔石があれば、結界の修復はできる。だが…。

「我がダンジョンは貧乏なのです。お忘れですか」

 コアはシャオに連絡を取った。うちの子が熱を出しましたの、お休みさせますわね。

「それは困る。状況は逼迫している」

 結局、アサミの列機は一頭に手傷を負わした後、気室を損傷され離脱した。アサミは大型と一騎討ち中だ。他の四頭は、全員が出撃して対応しているが優勢とは言い難い。虎治カムバーック。


「サルーに連絡を取る」

 空軍府に魔石を用意させるから、そこから昇って来い。


[閉塞]

 撤退するしかないか。シャオの頭を過る。ドワーフ達も行き詰まっている。

「ここにも経路が走ってるんじゃ」

 ドワーフの魔道具は物凄い性能だった。まるで歩いているかのような速度で固い岩盤を掘り進む。だが、どこへ向かって掘っても魔素の経路が邪魔をする。

 極細い物ならその内自動で修復されるから良いが、太めの経路を切るわけにはいかない。かなりの確率で城が落下してしまう。

 この辺りの魔素経路は浮遊のための魔方陣を形成している筈なのだ。


[齟齬?]

 風竜の長は、今まで気付かなかった事に、気付き始めていた。今対峙している者には、懐かしい匂いがする。太古の樹の匂いだ。我らを育み導いたものの匂いだ。なにか重大な間違いがあるのかもしれない。


[大空への落下]

 虎治は思いきって外翼を消した。

 効率的に昇るのなら外翼はあった方が良い。

 だが揚力が減って多少上昇角度が減っても外翼を消して

 フルブーストで飛ばした方が幾分か早く上がれる。

 魔石が持たないのだが空軍司令は余分にもたせてくれた。

 ついでに前方への慣性バイアスも掛ける。

 大空へ落下するぜ。


[尻尾の使い方]

 でかい図体をしている癖にこの蜥蜴は機敏だ。

 少しでも油断をすると列機のように背後を取られ至近からブレスを貰ってしまう。

 恐らく牽制であろうブレスを急旋回で交わした処で、強烈な前Gを食らった。

 肩ベルトが食い込み反動で背中をしたたか打ち付けた。

 鎖骨が折れた?

 いや手は動く、ヒビですんだか。

 尻尾が尾部に巻き付いていた。

 こんな使い方もできたのか。

 これで短い人生終わりかぁ、

 もう一度虎治に抱かれれても良かったかもなぁ。


[訊こう]

「訊コう」

 それは風竜から発せられた、百年は人の言葉を話していなかったかの様な声だった。


ぬしラは和子様を救いニ来たノか」

 一瞬何が起こっているのか分からなかった。

 が竜が言葉を話している事が飲み込めると、腑に落ちた。

「貴方がダンジョンマスターか」

「質問しデいルのは、此方ダ。コタエヨ」

「あたしら…我々は、神樹の要請で幼子を助けに来た」

「ナぜ我ラを襲っタ」

「襲われたからだ、何があろうと我々は神樹の願いを完遂する」

「…」

「タタカイハ終ワりだ、皆に伝えヨ」

 長い咆哮の後、風竜はそう言った。


「アサミを放せー」

 ボルトを乱射しながら飛び込んで来たのは虎治だった。



これで大団円、後はエピローグとなります。

でも、油断しないでください。

テーマをエピローグに凝縮させるのが粋と言う物。

乞う御期待

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