空軍地下を目指す
いよいよクライマックス。
ちゃんと描ききれるかは、作者にも謎。
[模擬戦]
紫の薔薇小隊はここの処人気であちこちの航空隊に招かれるようになっていた。というのも、乗機にしている天馬型の飛行特性が風竜に似ていると目されていたからである。
上昇力は一級、水平速度はそれなり、急降下速度は鈍い。常に上空から降ってくる劣位戦を強いられるのだ。普段に倍する訓練が必要で、ワルキューレは格好の相手と思われた。
「高度五千メートルで侵攻、三千メートルで反行してくる目標を殲滅します」
小隊戦闘ではなく分隊戦闘訓練なので二機編成である。一番機はマリコ、二番機に[嫁]ではない隊員が入っているので、お上品な語り口になっている。
翼が交った瞬間が、開始の合図だ。すぐに背面になり垂直に近い急降下に入る、過速にならない様に、新たに取り付けられたエアブレーキを開く。仮想敵は空軍の鷲型だ。速度が乗る前に補足して撃墜する。
「あちぁー、逃げられた」
列機が慨嘆した。二千では高度差が有りすぎる。こちらが到達する前に、鷲型は急降下から速度に乗り上昇に転じた。こうなれば高さの優位はもうない。後ろに付いていると言う優位だけを頼みに、マリコは一機撃墜判定を出した。残念ながら列機は鷲型得意の上昇反転に食われた。列機がぼやく。
「ナカノルーティン使えば楽勝なのに」
それでは対風竜訓練にならない。
騎士団の方に出向いた分隊は三戦して三勝だそうだ。あっちはまだ初心者だしなあ。
[じ様]
工廠の会議にシャオが現れて、爺様が欲しいと言う。
「なんだ?例の城がらみか?」
「風竜の層が厚くて、上からの侵入は無理」
頷いて答えるシャオ。
「なので、掘る」
「儂一人じゃ無理じゃぞ、坑洞に応援を頼んだ方が良い」
「じ様、紹介お願い」
水軍に被害が出た。水軍ではバイザーを装備していなかった為、太陽方向からの急襲に対応が遅れたのだ。それでも一頭を出血させ、兵器が通用し得るものだと示した。
[成長]
ミーティアは愛弟子達三人と外翼を消した状態での戦技研究をしていた。外翼を消せば速度は上がる反面、揚力が減る為、旋回時の沈み込みが大きく機動力は減る。
自在に付けたり消したり出来れば良いのだが、生憎一度消せば、工廠で調整して貰う必要があった。なので消した状態での戦い方を学ばなければならない。
「うひゃー」
「虎治、逃げ回ってるだけでは勝てんぞ」
初陣を果たした三人は端から見ても明らかに技量が上がっていた。サスケラは浮力を切るのに躊躇しなくなり、もって生まれたセンスが光り出した。虎治がどこへ逃げても、頭を押さえて来るのだ。
その虎治は、一度も被墜判定を貰っていない。どんな不利でもスルリスルリと交わす。講評しているミーティアさえ実戦から帰って以来落とした事がない。一番の成長株かもしれないが、撃墜判定も一つもないのは、相変わらずの虎治であった。
アサミは冷静さが増した。不利でも有利でも一呼吸置いて焦る事がない。実にやり難い相手に育った。ミーティアでも三回に一回は落とされる。
この三人は他の航空隊には出していない。ハンデ無しの模擬ならいざ知らず、対風竜訓練のエネミーとしては強すぎるのだ。後ろを取った時点で勝ちは決まる。まあ、虎治以外は、だが。
[進行]
作戦のためには二隻必要である。注意を上に惹き付けておくのが一隻、これは森人のヴァルハラに、やって貰う。
もう一隻は城の土台の小島の底部にとり付いてひたすら穴を掘る工作艦。これは、強襲艦の一隻を改装して使う。
高高度用の付与は森人に頼んだ。ドワーフ達も穴堀用の魔道具を用意しているところだ。出来次第迎えに行くことになっている。
問題は工作艦の護衛だ。森人の丸太はそれぞれ形も大きさも、性能も違っている。高高度に上がるだけならまだしも、十分な機動を発揮できるのは、実はそんなに多くはない。
母艦としてさほど大きいとは言えないヴァルハラに搭載して余裕がある程なのだ。出来れば安全のため全機陽動に使いたい。
「ミーティア、いける?」
「高度さえクリア出来れば、問題ない」
斯くして、ワルキューレの投入が決まった。
「てかさ、何で俺の知らない間に作戦が進行してるんだ?」
ぼんと手を叩いて。
「言うの忘れてた」
いつもの空軍であった。
[状況開始]
「酸素瓶は真空結界が破れた時の緊急用だ、今のうち使い方を練習しておけ」
「練習し過ぎて空なんすけど」
「ばかったれ、補充しとけ」
ワルキューレは二個小隊乗っている。ここで言う二個小隊とは空中編成の事で一個分隊二機、一個小隊四機である。教育小隊としては五十名なので少し混乱するかもしれない。
第一は一番機ミーティア二番機虎治、三番機にマリコ四番機はキョカと言う少女。
第二は一番機アサミ、三番機がサスケラだ。残りの二人は?ごめん、名前考えてない(メタ)
ヴァルハラが広範囲に魔素を撒き散らし始めた。
工作艦は軽い隠蔽を掛け高度を落とす。
約二千メートル程下から土台の真下に取りつく予定だ。
ヴァルハラがありかなしかの靄に囲まれている。丸
太が発進したようだ。
島の上空に薄い雲が広がる。
いや、あれは風竜の群だ。
本作で盛んに出て来る、上昇反転からの逆落としですが、これはでっち上げの戦法ではなくて、実際にベトナム戦争で鈍重だが速度と上昇力に優れたファントムがミグに食いつかれた時に使った戦法です。一時的な旋回半径が、上昇反転だと無茶苦茶小さくなるんですね。
但し、速度が乗ってない時や、遅い戦闘機でやろうとすると、上昇時の背中狙われます。ただの的。




