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へたれダンマス奮闘す  作者: 南雲司
13/18

天空(そら)へ

短いですが収まりの良いところで

[コア]

「だめです」

 次の休暇に元王国太子、実はお姫様を泊まり掛けで招待したいとコアに言ったら、言下に切り捨てられた。

「えー、なんでさ」

 貞操が云々と言う概念はコアにはない。いや、有るには有るのだが、只の概念であって適用されるべき規範とは考えていない。

 しかし…。

「妊娠の可能性を排除出来ません」

 サスケラは激しい航空機動をもっぱらとする航空練習生だ。機動中に万が一流産でもしたらまず助からない。その事自体には、コアは頓着していない。だが、当然虎治の責任は問われる。軽くても放校だろう。シャオが揉み消すのはあり得ない。

 コアの[へたれダンマス改造計画]に重大な支障を来たす。


「じゃ、添い寝するだけにするから」

 男の発言で最も信用できない物の一つだ。

「最低でも眷族化の必要が有ります」

 眷族であるなら、一時的にアーカイブに押し込めて受精卵を摘出することが出来る。同じ練習生である嫁達とのあれやこれやにコアが口を挟まないのはそれがあるからだ。

「えー、ダタイしちゃってたの?」

「堕胎とは違いますね、いつでも戻せるように保全してありますから」

 なんならアーカイブの中で成長させる事も出来る。

「わかった、眷族になってくれるか訊いてくる」

 虎治は芯から能天気だ。コアは当然断られると予想した。


[准将]

 酸素瓶の用意なら然程さほど手間は掛からない。以前高高度試験をした時のノウハウが残っている。だが戦闘に使うとなると、大量に確保する必要がある。一回の戦闘の為には百回の訓練が必要だからだ。

「取り敢えず、高高度試験の再開だな」

 工廠長の、ケナイ・モヤ・ラーガ准将は、そう宣言した。今の機体は、以前とは浮力の強度の次元がまるで違っている。当時でさえやっとではあるが八千に届いたのだ。今なら一万あるいは一万二千行けるかもしれない。

 酸素瓶は当然として、防寒服や気密室の開発が必要になるかも知れない。

 顔がにやけてますよ、准将。


[新装備]

「兎に角、上空警戒をげんにしてね」

 サルーは航空隊を集めて訓示している。現状、風竜は空軍より高い所に占位している。それしか手はない。

「それから、こんな物が開発されました」

 一見安物の兜に見える。バイザーが付いていて跳ね上げる形式の様だ。しかしバイザーに付き物のスリットがない。

「分かりますか?これセルロイドに色着けただけなのよね」

 おもむろに被ってバイザーを下ろし太陽を見上げる。

「でも眩しくない」


[サスケラ]

「妊娠せずに済むのだな」

 直球で語り掛けてきた虎治にサスケラは直球で訊き返す。

「わかった、眷族になろう。但し、私は元王族だ、相応しい地位を用意して貰わねばならない」

 政治の面倒なところで、仮にこれが一夫一婦の婚姻ならなにも問題はなかった。だが虎治の処に眷族として嫁の一員と成ると為ると、元王族を奴隷化したのだと見なされかねない、いや見なされる。

 そしてこの事は周りに波及する。即ち、空軍はダンジョンに王族を売ったのだと…。まだ安定しきったとは言い難いこの時期、国の乱れは必至となる。

 虎治はコアに相談すると言った。


[風竜]

 森の向こう側、元イェードゥ領を統治していたのは、トキワ王国であった。連合諸国の中でも小国で、小国であるが故に森人と蜜月にあるイバーラクと実質国境を接するようなここを宛がわれていた。

 そこに風竜が現れた。係留気球を襲い、腹が満たされぬと悟ると、大量に降り注ぐ弩のボルトを意にも介せず家畜を拐って飛び去った。

 家畜がいなければ、人が拐われたろうと噂された。


 森人の強襲母艦が竣工したのはその月の事である。


[強行偵察]

「風の都はおそらく天空にあるかと」

 コアからの待ちに待った重大情報にシャオは歓喜した。

「森と岩は、そこにいけばわかる?」

「恐らく」

「分かった、感謝する」

 大分繋がってきた。伝説となった天空の城、それがこの辺りに漂流してきているのだろう。突然現れた風竜もそこから来たのかもしれない。


 そして、神樹の言う[幼子]はそこにいる。


 森人空軍はその優秀な隠蔽魔法によって人知れず出撃した。

「タゲリニライカナイ(父祖よ照覧あれ)」

 目標は天空、

 遥かなる高みへ



さ○ばーち○ゅうよー

失礼ミッドナイトハイです

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