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へたれダンマス奮闘す  作者: 南雲司
11/18

雲下の死闘

サブタイトル思い付かないで暫く唸ってました。

[死線]

 この世界で死線を掻い潜った回数の最も多い者は、恐らく虎治である。死に戻りなのだから、掻い潜り損ねたとも言うのだが、自然と危機に対する反応速度は上がる。もうそれは達人の域と言っても良い程だ。

 果たしてコアは何回虎治の首を跳ねたのであろうか。


「ひー」

 咄嗟に浮力を切り、九十度のロール、上げ舵一杯、ついでに揚力方向への慣性バイアスも最大にする。際どいと見られたタイミングで有ったのに、交わしてみれば余裕の回避であった。

 風竜は勢いのまま数十メートル降下する。


「虎治、そのまま頭を押さえろ」

 ミーティアは内心舌を巻いている。今の機動は自分でも出来たか怪しい。ギリギリの回避になった筈だ。

「第二分隊、上方警戒、出来るだけ高度を確保。この蜥蜴は第一に任せろ」


[撃墜]

 虎治は背面で下にいる風竜を観察する。覆い被せられた時は天空一杯の巨大さに見えたのに、こうして見下ろしてみると大した大きさではない。

 五頭いると言う小型なのだろう。

 背面は長く続けると肩ベルトが食い込んで痛い。

 一旦姿勢を戻して風竜の頭にボルトを指向する。

 風竜は首を(もた)げ、背中越しにブレスを吐こうと(あぎと)を開いた。

 その開いた口と虎治の射線が一致した。

 ボルトは口の中に飛び込み、首を失った竜は墜ちていった。

「教官、頭押さえたっす」意味が違う。


[撤退]

 アサミは上空の雲の隙間から、残念な物を見付けた。

「雲上、竜種、多数!」

「くそっ、撤退だ。全速急降下、地表ギリギリで離脱する」

 しかし、雲を突き破って風竜が降ってきた。

 一、二、三、六頭いる!まだ雲上にいる気配もある。

 生きて帰れるか怪しくなってきた。

 太子の機動が鈍い。

 捕まるぞ!

「サスケラ!浮力を切れ!」

 気室の浮力はある意味絶対的な物だ。これがある限り墜落する事はない。初心者であれば浮力を切る事に本能的な抵抗を感じるだろう。

 と、掛け上がって行く物が一機。

「虎治、あのバカ」

 今は一機でも生き延びるのが大事だ。

 最低でも一機報告を持ち帰らなければならない。

「ひたすら逃げろ!これは命令だ!」

 あの二人にしてやれる事はもう何も無い。


[フラッター]

 アサミに周りを気にする余裕はなかった。

 追い縋る風竜は他の物より二回りも三回りも大きく見えた。

 これが大型だろう。

 浮力を切って、ブースト最大、慣性バイアスも地表方向に向けてあるのに、距離が詰まって来ている。


 と、突然激しい振動を感じた。

 翼型の気室を見ると、境界面に施された森人迷彩模様が波打っている。

 [過速]だ。

 司令の語った水軍での空中分解の事が頭を過る。

 ここで引き起こせばヤバい。

 後になればもっとヤバくなる。

 いっそ翼を消してしまおうか。

 それで慣性バイアスを最大にすれば、

 だめだ、速度が出過ぎている。

 地表に激突するだろう。


 なので、外翼部分だけを消した。

 余ったリソースを境界面の強化に充てる。

 初めての試みだが波打ちが収まり、振動も消えた。

 振り返ると距離が開いていた。


 あれ?制動掛けてる?

 慌てて引き起こす。

 何本かの木々の梢を千切り、

 アサミの天馬は離脱に成功した。


[虎治]

 虎治は調子に乗っていた。

 最初の風竜を回避一番、後背を取って一撃で撃墜したのだ。

 年が年だし[俺Tueee]感に冒されていても不思議はない。

 機首を風竜の頭に向けると、絶対の自信を持つボルトを放った。

「あれ?」普通に外れた。

 しかし、無意味と言う分けではなく、

 風竜の機動を変えた事でサスケラの当面の危機は去った。


 小型の風竜は急降下速度が鈍い、もう追い付けないだろう。

 その代わり、邪魔をしてくれた小蝿に戦意が向いた。

「ひえー」

 先ほど迄は、獲物を捕る積もりであったのが、

 ただただ殺す事に決めたようで、ブレスを放ってくる。

 虎治の回避能力はこの一戦で五倍程上がるかも知れない。

 生き延びればだが。


[サスケラ]

 サスケラは女になっていた。

 臣下が命懸けで護れば、王族はその死を無駄にせぬ様に

 ひたすら逃げる。

 それがそれぞれの使命と言うものだ。


 虎治は臣下ではなく、サスケラも既に王族ではない。

 しかし、一人の男が命懸けで護ったのだ。

 ならば、一人の女として命懸けで逃げよう。

 そして、初恋の男サルーに似たあの男を待とう、

 今度はきっと、閨を共にするために。


 サスケラの天馬は梢を掠め疾走する。


[長]

 風竜の長は、上昇しながら考えていた。

 この小蝿共は手強い。

 あっさりと捕まえられる筈だったのに、あっさりと三匹を逃がした。

 残る一匹もまるで捕らえられる気配がない。

 まるで遊んでいるかのようにくるくると娘達を翻弄している。


 そして、隙があれば最初の娘の様に屠られてしまうだろう。

 これは手を出してはいけない獲物だ。

 大型の風竜が咆哮を放つと、全ての竜が雲上へと消えた。


「あれ?」

 暫くしてやっと風竜がいなくなったのに気が付いた虎治は帰投する事にした。ボルトは射ち尽くし、機銃弾も空だ。

「あれって、やっぱりまぐれだったんだな」

 最初の撃墜で離脱してしまっていれば、慢心から成長が止まっていたかも知れない。

 無謀な命令違反は虎治にとって吉となったようだ。


誤字脱字報告宜しくです。

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