出会い 4
『お前だな。黒魔術解除』その言葉に翠玲葉がビクリと体を揺らすとすっと目を細め、足元に転がっている男に近づいた。そして慣れた様子で彼の口元に顔を近づけた後、そっと首筋に顎を乗せでじっとしていた。
「ええ。でも・・・」どうしてわかったのか、そう言い終わる前に翠玲葉はさっと顔を歪めた。そしてそっと自身の耳に触れた。
『匂い』
「にお、い・・・?」
『お前の匂い。人間と知らない匂い。おそらくエルフの匂い。今。魔力を持つ種族の匂い。お前だけ』
「そう、ですか・・・」翠玲葉は困惑しながらそういうしかなかったが、相手はこれからが本番とばかりに目を鋭く細めた。
『こいつとお前。関係は』
「え、えっと・・・。先程大通りで、妙な旗を勧められました。一方的に断ってここに来たので、てっきり怒って追ってきたのかと思ったのです。ですが黒魔術がかかっていることに気が付き、そのままにはしておけず解除の術を行使したのですが・・・・。失敗、したようですね」
翠玲葉が座り込みそっと男の顔に手を当てると、彼は生きている人間とは思えないほど冷たかった。それに動揺しながらも手を口元と首筋に移動させたが、言う通りほとんど脈拍も呼吸も感じられなかった。元々専門ではない上に今の状態なので不安はあったのだが、ここまで男の体に影響が出るとは思っていなかった。自分の状況を忘れて身の丈に合わないことをしてしまったと深く後悔していると、すぐに小さく息を吐いたのが聞こえた。
『失敗じゃない』
「ですが・・・」
『うるさい』そう翠玲葉の言葉を一蹴すると、もう一切反論を許さないというようにきつく睨みつけた。
『こいつ。いつ。目覚ます。分かるか。分かるなら教えろ』
「え。あ、はい。・・・・・少し待ってください」翠玲葉は言われるがままに男の胸に手を当てゆっくりと目を閉じた。そしてその様子にすっと目を細めると、見張るように注意深く翠玲葉の手元を覗き込んだ。
「・・・・・2〜3日。もしかしたらそれ以上、一週間ほどかかるかもしれません」
『・・・・・仕方ない』そう告げ終わると大きく息を吐いた。それを見て翠玲葉はまた謝ろうとしたが、それよりも前に余計なことは言うなとばかりに睨まれた。
「それにしても詳しいですね。違うとは思いますが、まさかあなたも・・・」
『魔力は無い。だが何度も見た。ここでは時々ある』
「みんなー、おまたせーーー。きたよ!」