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「約・束・通・り・一・人・で・来・た・よ。だ・か・ら・出・て・き・て。お・願・い・。君・と・話・が・し・た・い・んだ」その声と共に一人でに枝が揺れると、そこには不安げな表情を浮かべた白藤の妖精が浮かんでいた。

「・・・本当に来てくれたの?」彼女は暗い声色で問いかけると、マックスは大きく両手を広げ何処か虚ろな目で微笑んだ。

「そ・う・だ。よ。見・た・ら・わ・か・る・で・しょ。ボ・ク・だ・け・だ。よ。そ・れ・よ・り・久・し・ぶ・り・だ・ね。元・気・だ・た?」その様子は傍から見れば異様であったが、誰もそれを指摘することはなかった。今日は清々しい快青のはずなのに、そこだけじめっとした空気が漂っていた。

「本当に、本当なのね?ワタシのために、来てくれたのよね?」

「そ・う・だ・よ。長・い・間・待・た・せ・て・ご・め・ん・ね。・あ・の・あ・と・す・ぐ、店・が・大・変・だ・た・ん・だ。で・も・君・を・忘・れ・た・こ・と・は・な・か・た・よ。ボ・ク・も・ず・と・逢・い・た・か・た・よ」

「・・・実は、少し疑ってたの。ずっと様子がおかしかったから。でもワタシが間違っていたわ。ごめんなさい」彼女はすぐにぱっと顔を綻ばせると、楽しそうに声を上げて踊るようにマックスの周囲をくるくると回り始めた。

「やっと逢えた。あの日からずっと待ってたのよ!こんなに嬉しいことはないわ!」

「だ・か・ら・ミ・リ・を・返・し・て」その瞬間、彼女はぴたりと動きを止めた。そしてゆっくりと振り返った表情は深く絶望しているように凍りつき、不穏な空気を察したように再び枝が揺れた。

「あなた。これでもう満足でしょう。彼と話せたのだから。だから開放して。彼の言う通りにして」

「お・願・い。ミ・リ・を・返・し・て」

「・・・どうして。どうしてアナタまでそんな事を言うの。今、あれは関係ないでしょう」

「関・係・な・く・な・い・よ。だ・て・ボ・ク・た・ち・は・ミ・リ・を・助・け・・・・!」そう口走った途端、マックスを内容する紫の海が凪いだ。それと共にぼんやりしていた意識が浮かび上がり、住居の残骸のがバタンと倒れた。そしてすぐにそこから黒い影が飛び出し、藤の妖精が白藤の妖精の前に立ちふさがった。しかしマックスは自らの状況を理解する間もなく、首筋の鋭い痛みに今度は完全に意識を手放した。

「違う。そうじゃないの!」

「何でアナタまで邪魔をするの!離して」

「離さない。絶対!」

「・・・・・・・レーハちゃん、なにするの?くるしいよ!」

「『なにするの?』ではない!彼女を刺激しないようにと言っただろう」

「なんでそんなにおこってるの?ボク、いわれたとおりセリフをよんだだけだよ。レーハちゃんだってさ、カルコスのがイチバンって」

「もう良い!」翠玲葉が乱暴に会話を打った切ると、朱牙が無表情のまま彼を担ぎ上げそっと右手を口元に近づけた。

「こちら朱牙。カルコス、作戦1失敗。作戦2用意。・・・・・・・分かってる。予断を許さない」

 報告中、藤の妖精がとうとう振り払われた。それに気づいて朱牙はすぐに助走をつけて幹を蹴り飛び上がったが一瞬間に合わず、白藤の妖精は更に高く浮かび上がると全員を睨みつけた。

「あ、ダメ!『待って、行かないで』

 その瞬間、辺りから音が消えた。大きな波に飲み込まれ全てを忘れてただ漂っているような、何処か虚ろな眼差しを浮かべその場にいた者たちは全て立ち尽くしていた。しかし翠玲葉はその揺れが不快で、すぐに沖を探して顔を上げ波に逆らって進み出した。そしてもうこれしかない、と大きく声を上げた。

「騙して申し訳ありません。ですがアナタと話すには、マックスさんにマットさんのフリをしてもらう方法がなかったのです」

「・・・・・・・え?ええ!?いちゃった!ゼッタイにダメっていったのに!」翠玲葉の言葉にまずはシオン、残りも順に我に返り一斉に翠玲葉に顔を向けた。朱牙とだけは目が合わなかったが見ているものが同じだ、と改め白藤の妖精に向かってエメラルドグリーンの瞳を開いた。

「よく聞いてください。本物のマットさんは、もう亡くなっているのです」

「何を言っているの?彼はマットよ。どう見たってマットにしか見えないわ。すっかり別人のようになってしまったけれど、でもきっと・・・」

「いい加減に認めろ!お前だって本当は気づいているのだろう。見た目が似ていても、二人の違いは時間の経過だけでは説明しきれないことを。彼はマックス、マットのひ孫でミリの弟だ!」最後は勢い任せで言い切るとそこに浮かぶ彼女は意外に静かで、顔を伏せて黙り込む様子は美しく何処か不気味だった。

「・・・・・・・・・・そうだとしても。ワタシは、彼から聴きたい」 

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