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「マックスさんは、今はどうしていますか」

「まだ客間で怯えとる。この世の終わりのような顔をしとるよ。あの若造に説得など任せられんぞ」

「ですが彼が行かなければ、おそらく彼女は姿を見せてはくれませんよ。そうなったらミリさんは」

「すぐに辛気臭い顔をするな!そんな顔したところで、暗くなるだけで何も解決せん」

「命は心配ない。人質は生かさなきゃ意味ない」

「シュガ、お主もお主じゃ。間違ったことは言っとらんが、もうちょい柔らかい言い方はできんのか?」

「カルコス、ダメだよ。そういういいかたしちゃ。シュガはいつもそうなんだから」

「フォローになっとらん。お主はいつも一言多い。黙っとれ!」

「・・・どっちもどっち」

「ん?お主、今何か言ったか?」

「いいえ。何も言っていませんよ」翠玲葉が何事もなかったなのようにすまして答えると、朱牙が疲れたように小さくため息をついた。

「・・・まあ、良いか。問題はドリアードをどう説得するかじゃ」

「やっぱりきっちゃう?それとも、もやすの?」

「馬鹿なことを言うな!すぐ短絡的に考えおって、お主はまったく懲りとらんな!これ以上ドリアードを傷つけるな」

 あの少女は、白藤のドリアードである。それが昨日翠玲葉達が出した結論である。

 ドリアードとは樹木に宿る妖精である。彼らは常に宿り木の側で樹木と周囲の自然を守り続けるため、豊穣をもたらす存在として現在も自然愛好家達はドリアード探しに明け暮れる者も多い。しかし一度宿ると樹木と一心同体となり、樹木が傷ついたり枯れたりすればドリアードも同じ運命を辿るという。そのために皆宿り木探しは慎重で用心深く、更には姿を見せることも稀で気に入った相手にしか見えないと言われている。

「じゃあ、どうしたらいいの?おしえてよカルコス。だってその子、ナマエわかんないんだもん。だから『オネガイ』できないんだよ。ねえ、どうするの?どうしたらいいの?」

「うるさい!今考えとるんじゃから邪魔するな。お主こそ、少しは自分で考えろ!」

「そんなにおこんなくていいじゃん。・・・カルコスってさ、ボクにいちばんビシイよね。ほかのみんなにもキビシイけど、ボクにはすごーくキビシイんだよね。マダムもそうだしシュガも・・・・・。あれ、シュガどうしたの?なんかコワイよ。シュガがこうやってだまってるのはフツウだけど、そんなかおしないほうがいいよ。いつもおこってなくてもおこってるみたいなんだから。シュガがニラむとこわくてみんななーんにもいえない、ってマダムたちにおこられたばっかりでしょう?」

「シオン、余計な茶々を入れるな!話が進まんじゃろう!シュガ、お主も何か考えがあるならはっきり言え」再びカルコスの怒号が響くと、不快そうに顔をしかめたまま朱牙はゆっくり口を開いた。

「おそらくあの藤は、あのドリアードの宿り木じゃない。宿り木とドリアードは匂いも同じになる。だが2つは違った。それに木が痛みを感じてもドリアードに異常はなかった。花の色も違った」

「え!えーー!そんなことありえるの!?」

「私にも枝は彼女が操っているのではなく、枝自身の意思で動いているように見えました」

「・・・そうだとしたら、どうやって自らの宿り木以外の樹木を操ったのだ?ドリアードには、普通そこまでのことはできんぞ」

「現状では不明。だが何か方法があった。今はそう考えるしかない」

「ボク、もうわかんない!だからオシマイ!このはなしはもうしちゃダメ!」

「何度言えば分かるんじゃ!使える時間は限られとるじゃぞ」

「でも、まだ6にちもあるんだよ。あせんなくていいじゃん」

「そんなことを言っとるから、いつも報告書が遅れるんじゃよ。だいたいお主はな、何故最後まで黙って話を聴かんのじゃ。いつもいつも余計なことをペラペラ喋りおって、苛々してかなわん!」

「ひどい!ボク、おもったことをいっただけだもん。ジャマなんてしてないもん」

「開き直るな!」

「・・・結局、あの木を調べ直すしかないのでしょうか」二人の声を遠くに聞きながら翠玲葉がぼそりと呟くと、朱牙は何か考え込むようにそっと視線を伏せた。そして暫し黙り込んだのち、ある一点を見つめながら口を開いた。

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