魔女の最高傑作 6
「すみません。手当り次第に探してたら、片付けどころじゃなくて・・・」
「本当に最高傑作がどのような魔法具か、何も分からないのですか」
「過去に作った魔法具のどれかのはずですが、多すぎてどれか分からないんです」翠玲葉は部屋に散らかった本を拾い上げると、今度こそ手掛かりがあることを祈ってページをめくった。
「・・・そう言えば貴方の師匠は、何故魔法具を作るようになったのですか」
「え?えっと、それは・・・」
「ボクしってる!リズさまがたのんでんでしょう?」
「確かに120年ほど前、リズ様が訪ねて来られました」
「マダムがよくいってるよ。みんなムリだっていったのに、リズさまはぜんぜんあきらめなかって」
「・・・そんなこともありましたね。リズ様は何度追い返しても懲りずに頼み込んできて、結局師匠の方が折れたんです。それから・・・・・って、どうしたんですか!」そのとき翠玲葉の表情は凍りついて反応がなく、青年はすっかり視線を泳がせながら慌てたがシオンは変わらず暫し不思議そうに二人を眺めていた。そして突然何か思いついたように満面の笑みを浮かべた。
「もしかして、リズさまのこともしらないの!?」翠玲葉が突然のことに返答できずに黙り込んでいると、それを肯定と取ったらしいシオンは喜んで更に笑顔を強めて目を輝かせた。
「だったらボクがおしえてあげる!あのねリズさまっているのはね、すっごいひとなんだよ。ジャスミン荘をつくって、街のためにいろんなことをしたんだ!」
「・・・・・そうですね」翠玲葉をすっかりうんざりし投げやりに言い捨てて視線を本に戻すと、それを見かねた青年は慌てた様子で口を開いた。
「こ、このシリーズ懐かしいなー。前は師匠のお気に入りだったんだけど、こんなところにあったんだなあ」
「それ、ほんと?こんなにぼろぼろなのに?」
「以前は本当によく読んでましたよ。でも師匠は好奇心旺盛な反面冷めやすくて、完結してからはどうでも良くなったみたいで・・・。確かいろんな人間出てきて面白いって、言ってましたよ」
「ふーん・・・。ってあれ?でも魔女ってニンゲンきらいでしょう?なんでおもしろいの」
「確かに人間そのものにはうんざりしていましたが、彼らが生み出した物は好きでしたよ。誕生祭にも興味があったみたいです」
「だったら、街にくればよかったのにね」
「それは、まあ・・・」青年がまたうろたえ始めると翠玲葉はわざとらしく本を閉じ、エメラルドグリーンの瞳を静かに光らせじっと彼を見つめた。
「本当に師匠を救いたいのなら選べ。全てを明らかにし共に探すか、もしくは口をつぐみ一人で探すか」」すると彼は屋に射抜かれたように固まり、暫し両者の間に風が吹き抜けた。
「おーい。・・・もしかしてねてるの?ボクの声聞こえてる?」
「・・・・・師匠は膨大すぎる魔力を持っていました。それが原因なんです」すっかり我に返った様子の彼は申告な表情のまま淡々と話し始めた。
「どういうこと?魔力がたくさんあっていいじゃん」
「・・・師匠は際限なく魔力が増える特殊体質で、持て余した魔力が暴走することを恐れていました。そしてそれを解決するために、新たな魔術をずっとここで研究してました。その研究中偶然生まれたが『最高傑作』です。開発はうまくいっていて、あと少しで完成するはずだったんです。だからそれさえ完成させられれば全て解決する、だから言う必要は・・・いや、違う。僕は今まで隠してたから言いづらかっただけだ。きっとそうだ!本当にすみませんでした!」
思わぬ告白に翠玲葉は黙り込んでいた。そして手掛かりを求める視線に応えようとしたが、これと言って良い庵は浮かばなかった。とりあえず一度報告のためマダムに連絡を取ってもらおうと渋々シオンを見た。するとシオンは何故か急にピクリと揺れ、自身の右耳につけた小さな紫色のピアスをいじりながら何かブツブツ話していた。どうしたのだろうと翠玲葉が様子を伺っていると、数分後シオンは何事もなかったかのように手を離した。
「シュガとカルコス、すぐにくるって」




