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報告書

これは現場から見つかった吸血鬼の日記である。全文は数百年に渡り特殊な言い回しも多様されているため、今回は事件に関わると思われる部分を抜粋要約し以下に記載することとする。


街に移り住んでから500年、契約を結んでからはや100年。ようやくこの日がやってきた。こうして人間たちと語り合う日を、どれだけ思い描いていたか!来る日も来る日も瓶のみが置かれている玄関に、どれだけ落胆したことか!しかしかの者は終始暗い表情を浮かべ、天塩にかけて育ててきたハーブティーにも手を付けようとしない。詳しく訊いてみれば、彼は恐ろしい災難に見舞われていたのだった。我がやつらを成敗できれば良いのだが、契約によって我は奴らに手を下すことはできない。そうなればできることは一つ。我は我の力を使い、かの者を救いだすとしよう。

 人間のために力を使うなど、千年近く生きてきて始めてのことであった。実に誇らしく、晴れ晴れとした気持ちである。だがしかし、何故か彼の表情がまだ曇っていた。何故かと尋ねても言葉を濁すばかりだった。やはり吸血鬼には理解しきれぬことが人間にあるのだろうか。まあ良い、我には時間だけは膨大にある。時間をかけて近づけば良い。さて、時期はどの様なもてなしをしようか。先日出したハーブは気に召さなかったようだから、次は何をだそうか。

ここから分かることは二点である。

一つ、彼には罪の意識は全くなかった。

二つ、今回の動機に孤独があったということ。


よって今回の一件には、彼らとの密なコミュニケーションを行っていた我々にも非がある、と批判されても異議は挙げられない状況である。しかし今後の改善のため、今回は敢えてこの文章を記載することとした。


現在捕らえられた御者の青年は警備隊の聴取後、首都の司法施設に護送。正式な沙汰が言い渡されるのはまだ先であるが、収監施設にて数ヶ月から数年間の懲役刑が下ると思われる。

ブラックダーク団の構成員は大半が未成年だったため、保護者との連絡後各自更生施設にて福祉活動に当たっている。

彼らを率いていた男は未だ黙秘を貫いており、警備隊の捜査が継続中。組織の全貌解明を期待している。


追記 私が昏睡状態にしてしまい入院していた人間男性は、事件から一週間後に無事に意識を取り戻したと警備隊から連絡が入った。体調には異常は無くすぐに退院可能とのことでほっとしている。また今回の一件で自らの人生を深く反省したようで、退院後は実家に帰り祖父母が港で経営するレストランを手伝うとのことである。

いずれ謝罪も兼ねてそのレストランに行こうと思っている。

以上。


記入者 306号室住民 翠玲葉


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