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開門 5

「うん。じゃあ、あとはよろしくね」シオンはそう軽く答えて黙り込むと、その場には妙な静けさと緊張感だけが残った。それにすっかり当てられてしまったのか、3人のシルキー達はいつの間にか背筋を正して彼女の後ろに整列していた。そして彼女は顔色を変えることなく静かに翠玲葉を見つめた。

「入居にあたり、幾つか伺いたいことがございます。お話頂ける範囲で構いません。しかし正直にお答え頂けると幸いでございます」静かだが有無を言わせぬに威圧感に何処か尋問されているような気持ちになりながらも、翠玲葉は黙って頷いた。

「まず、お名前を確認致します。『翠玲葉』様で間違いございませんか」翠玲葉が黙って頷くと彼女はなにか見定めるようにじっと見つめたあと、再びゆっくりと話し始めた。

「これ以降、我々の領域内では翠玲葉様とお呼び致します。よろしいでしょうか」

「えー。それだと呼びにくいよ。レーハでいいよ。ね?いいよね」問いかけでありながらそれは自分の意見以外が絶対に聞き入れないといった様子が見て止め、このまま彼と争ってもが面倒くさいだけだと思い翠玲葉はやれやれとうなずいた。

「それでは、『レーハ様』とお呼びします。よろしいですか」

「・・・あ、いや。待ってください。『様』はやめてください」彼女は何か考え込むようにしばし黙り込んだ後、表情を変えずにゆっくりと問いかけた。

「・・・かしこまりました。では『レーハさん』はいかがでしょうか?」

「はい。それでお願いします」

「次に体質や性質について伺います。ハーフエルフと伺いましたが、こちらで配慮することがございましたらお申し付けください」

「・・・特には、ありません」

「・・・かしこまりました。住民となった方には、証として魔法具をお渡しすることとなっております。そちらが届き次第正式入居となり、それまでは仮入居扱いとなります」

「魔法具ですか・・・」

「はい。そちらには全種族と意思疎通を可能とする効果、離れた相手と同じ魔法具どうしで通信を可能とする効果が付与されています。また、それ以外の効果を付与させることも可能です。ご希望はございますか」

「例えばどの様なものがあるのですか」

「現在はご自身が一定以上の魔力を放出すると強制的に低下させる効果と、周囲の音声を一時的に記録する効果を付与されている方がおられます」

「何でも言ってください!」

「禁忌に触れない限りは、依頼者の希望は叶えられますよ」

「禁忌・・・」

「レーハさんもご存知かと思いますが、魔術は万能ではございません。不可能な効果もございます」彼女の静かな声を聞きながら、翠玲葉はゆっくりと顔を伏せだまりこんでしまった。あの問いかけは別の効果をつけたいというより、魔術に関わる者としての軽い興味であった。しかし訊くんじゃなかったと心底後悔した。

「レーハさん?どうかされましたか?」

「あの、大丈夫ですか?」

「本当にどうしたんですか!ねえ、大丈夫ですか?!」

「・・・・・・・え。・・・あ。ああ、すみません」しかしその様子にさすがに不審に思ったのか、彼女もわずかに顔を曇らせた。

「大丈夫ですか。ご気分が優れないのならば、お休み頂いても構いません。ここからは後日改めて伺うことも可能です」

「大丈夫です。話を進めてください」

「では、改めて伺います。通信と意思疎通以外の効果を付与しますか」翠玲葉は首を横に振ったのを見ると、彼女は顔色を変えることなくそれまで通りに話を進めた。

「・・・かしこまりました。魔法具は、魔力を付与した石を金属に取り付けた物となります。石の色は識別のためにこちらで選ばせて頂きます。しかし金属部分の形は、お好みの形に変化させることが可能です」

「どんな感じかわかりますか?分からないなら、絵を書きましょうか?」

「それは大丈夫です。実物はもう見ています」そういいながらシュガがつけていた足輪のことを思い出していると、そういえばシオンの手首には何もなかったな。もちろん足にもなにもなかったし首にもなかった。

「どうされましたか」

「あ、いや・・・。そのままで。普通で大丈夫です」

「・・・かしこまりました。最も基本的なバングルになります。そしてこれが、最後の質問になります」

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