出会い 7
「あ!おそかったね、シュガ」
「・・・え!何故、いやどうしてここが分かった!」その瞬間、黒い毛と緑の衣を揺らしながらシュガが両者の間に飛び込んできた。翠玲葉の言葉に振り返ることはなかったため表情を見ることは出来なかったが、またシオンに鋭い視線を向けていることは簡単に予想がついた。
『いい加減にしろ』
「だってさ、きょうはいやなやつにいっぱいあったんだよ。ほんといやだったなあって思ってたら、こんどはすっごいおもしろそうな子にあったんだ。だかさ、いろいろききたくなったんだ」
『開き直るな』
「・・・そんないいかたしないでよ。ちょっとぐらいゆるしてくれてもいいのに。・・・そうだ、こんどみんなであそびにいこうよ!この子のカンゲイカイ!シュガのときはできなかったからパーとおもいっきりやろう。えっと、だからまずは・・・」その瞬間翠玲葉は耳を疑いあっけに取られていると、慌てたように振り返ったシュガと目があった。暫し両者は見つめ合ったあとシュガは視線を戻した。
『待て。何言ってる』
「あのとき、みんなザンネンがってたんだよ。ひさしぶりのだったのに。そういえばボクがプレゼントしたオブジェ、ちゃんとたいせつにしてくれてる?あれおおきかったから、はこぶのたいへんだったんだよ」
『違う。そいつのこと』
「ねえ、シュガ。きいてよ!やっとみつかったよ!魔術がつかえるんだよ!・・・あれ?おどろかないの?」
『知ってる』
「え?なんでおえてくれなかったの!」
『・・・取り込んでた』
「シュガ、ひどいよ!いつもボクがいわないとおこるのに!」シオンが講義の声を上げながら詰め寄ると、それに面倒くさそうにため息をついた。
『関係ない。それより』
「まただ!シュガってさ、いつもそうだよね。依頼とちがうことをきいてもなんにも答えてくれない。きいたらうそはつかないけど、いまはカンケイないとか、よけいなことはかんがえるなってにらむだけだもんね」
『黙れ』
「もう5ねんだよ。いいかげんさ・・・」
『黙れ』その声とともに爆発するように大きく吠え、思わず二人がぴくりと身を振るわせた。そして目を鋭く細めシオンを睨んだ。
『説明しろ。いつ。決まった』
「え?うーんとね。・・・・・いいよね?」それまではともに自分の話をしようとする両者に、先程とあまり変わらない光景だなと完全に他人事として観察していた。どちらが勝つのだろう、と。結果今回はマイペースよりも凄みに軍配が上がり、翠玲葉は自分が中心にいることを思い出させられた。しかしようやく話が戻って進んだというのにすっかり反応が遅れ、口を開く前にシオンがにっこりと笑いかけてきた。
「って、ことだからよろしくね。ボクたちのなかまだよ」
『・・・やはり』翠玲葉が驚き何も言えずにいると、また人間がため息をつくように大きく息を吐いた。シオンは両者を不思議そうに順番に見比べたあと、大げさに首を傾げた。
「だってキミ、ハーフエルフなんでしょう?」
「それは・・・。それだとして、だから何だ!」翠玲葉が大きく声を荒げてるとエメラルドグリーンの瞳が燃えるようにきらりと光り、風もないのに毛先がふわりと揺れたように見えた。その声に大きくビクリを体を揺らし、シオンも驚いたように目を見開き少し固まっていた。しかしすぐに大声を上げて笑い出した。
「キミもそんなコワイかおしないでよ。おこるのはシュガだけでじゅうぶんだよ。あとはマダムとかカルコスとか、リーザもときどき・・・。あ、みんなおこってばっかりだ。なんでだろう?」
「話を変えるな!答えろ。お前も私と同じなら分かるだろう。混血ということは」その瞬間、爆発音が響いた。それがシュガが吠えたのだと気づいて視線を落とすと、研がれた刃のようにすっと目を細め鈍く光らせ獲物に狙いを定めるように二人を静かにしかし鋭く見据えていた。
『いい加減にしろ』翠玲葉はそれに生物としての恐怖を感じて動けなくなり、シオンは怒られた子供のようにしゅんと小さくなった。
「・・・・・ごめん。シュガ」
『黙れ』
「・・・・・うん」その言葉にシオンはこくりと素直にうなずいた。すると彼から目線を外し目を閉じ小さく息を吐くと、ゆっくりと再び目を開いた。そして先程よりは幾分柔らかい、何処か心配するような眼差しで翠玲葉をじっと見上げた。
『・・・お前。入居。するのか』




