エピローグ ~ 女王様のアリア ~
……あれから、10年。
「シヅルさま、素晴らしかったです!」
舞台後の控え室で、私に恭しく紅茶を差し出すのは、マネージャー兼 高級SMクラブ 『辛子浣腸』 のオーナーだ。
白髪多めの短いごま塩頭が素晴らしく哀れみを催すオッサン…… 生粋の、M男である。
「『公開処刑』 に処せられたお客様がたは、喜んで 『また観にきます』 と約束してくれました! ほかの観客の皆様も、ぜひ次は自分を選んでほしい、と……」
「ふーん?」
紅茶を飲みながら、オーナーの足をグリグリと踏みつける。
「誰が、どうしたんですかー?」
「ううっ……もっと……もっと、踏んで……いただけませんでしょうか……っ!?」
「もう一度、無駄吠えでもしてみます? ワンちゃん?」
私が立ち上がると、自動的に四つん這いになる、オーナー。
その服の下のちょっと緩んだ肉体には今、緋色の縄がぎっちり巻き付いているはずだ。
「……汚いブタどもは……ううっ」
お客様を罵ることによる良心の呵責に耐えかねて、オーナーの顔が大きくゆがむ。
……こんなところも、可愛くて可愛くてたまらない。
「くさいヨダレをたらかして 『またシヅル様より縛って踏みつけていただける時がくるのを、待ってます』 と……」
「……ふーん。そうですかー」
御褒美に、四つん這いの背に鞭をあててあげると、小さな悲鳴が上がった。
……うふ。気持ち良さそうー。
「お客様のことを、そんな風に言うなんて、本当に悪い方ですね?」
鞭をふるいつつ、優しく、囁く。
「は、はひ…… おしおきして、いただいて…… とっても、嬉ひいれすうぅぅ! ひぃっ!」
「えへへ…… こんなので盛り上がっちゃうなんてー、ほんと、ヘンタイなんですね、オーナー♡」
SMクラブ経営での成功に飽き足らず、SMショー 『公開処刑』 を手掛け、初演を大成功に導いたこのオーナーは…… とっても素敵な、私だけの飼い犬なのだ。
「もっと、私めをこらしめて、いたらけませんれひょうか……っ!?」
「じゃあー……靴とか、舐めてくれませんー?」
「あ、ありがたき幸せれすぅ……!」
足元にうずくまる、みすぼらしい頭にキュンキュンとハートをときめかせつつ、私は思い出のあの女性に、心の中でそっと、呼び掛けた。
――― 拝啓、お姉様。
シヅルは、今日も、大切な人の心に、ガッチリ首輪をはめています。 ―――
…… その後。SMショー 『公開処刑』 は大成功を収め、私は 『日本を代表する女王様』 と呼ばれるようになるのだが……
それは、また、別の話。
制作:秋の桜子さま(Picrewの「女の子に負けたい男メーカー」で作ったよ!)
読んでくださり、ありがとうございます!
さて、今回のコラボは、実は、前作 『静かなる女王』 が上がった段階では、予定にないものでした。
ところが!
有難いことに、読者様からちらほらと、「続きはいつですか?」 とのお声をいただきまして。
正直な話、砂礫は (前作が名作だっただけに、次って難しいよね……) などと思っておりました(爆)
が、間咲正樹先生ならもしや……、とご相談してみましたら……
砂礫 : 続き、どうしますー? ツンツン。
間咲先生: プロットできました!
砂礫 : はやっ……! しかも面白いし!
というわけで。
本作誕生、と相成ったわけです。
前作でのピュアな恋物語を経て、より深まったふたりの絆を楽しんでいただけたなら、嬉しいです。
感想・ブクマ・応援、誠に感謝です!
そして間咲正樹先生、コラボどうもありがとうございますー!
制作:秋の桜子さま
2020/5/21 秋の桜子さまよりFA・タイトルバナーいただきました!桜子さま、どうもありがとうございます!
♥️前作 『静かなる女王』 も宜しくお願いいたします!
『静かなる女王』
https://ncode.syosetu.com/n5758ge/